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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五十一章 仕事とプライベートの両立

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閑話 エロカルタ

お久しぶりのR-15回!

今作には多数の下ネタが含まれております。苦手な方は飛ばしてください。

当然本編には一切関係ありません。



 深層での修行が終わり、目的のブツを生成することに成功した俺は、かねてより計画していたプロジェクトを実行に移すことにした。


「エロいカルタを作ろう」


「「「は……?」」」


 初めて明かされる内容に、集められた面々はポカンと口を開けて固まる。


「『は?』じゃねえよ。なんのために野郎だけを集めたと思ってるんだ。異性の前では出来ない下ネタトークをするために決まってんだろ」


『いや……魔道具開発するって……』


 一同を代表して、というより俺のことを一番わかっていないワンが、画面の向こう側から戸惑いながら発言する。


 会場となったのオルブライト家の会議室に居るレオ兄も、サイも、ソーマも、ファイも、ワンの隣に映っているスーリも、別画面に居るシュナイダーも、一瞬で理解して受け入れているというのにな。


 父さんとマリクは呼んでいない。


 最適な人物ではあるが何分メンバーがメンバーなので、友人の父親のエロ話や親しくもない年配の下ネタは聞きたくないだろうという俺なりの配慮である。


「手に入れた力を使うなんて一言も言ってないだろ」


『さ、詐欺だ……』


 と言いつつも通話を切らないのは友達の証。そして興味津々な証。


 このワンの行動を同意と受け取った俺は、呆れたように『そんなことだろうと思ったぜ』面をしている他メンバーのためにも、事情および計画の説明に入った。


「他の連中の進捗状況が芳しくなくてな。いち早く終えた俺に出来ることと言ったら、イブ達が技術や知識を身に付けて戻ってくるまでに次の計画の準備をしておくこと! 息抜きだって立派な準備だ!」


『だとしても息抜きに俺達を巻き込むなよ。集めたんならその力を披露しろ。こちとらそれを期待してたんだよ。たぶん使えば使うほど上達するんだろ。なら少しでも磨いておけよ』


「無理無理。俺1人じゃ扱いきれない力だし。彫刻で例えるなら素材となる木を山から持ち帰っただけ。場所も道具も加工方法もな~んも知らんのにどうしろってんだよ。ここから先は色んな力が集まってようやく進むんだよ。

 失敗して再度取りに行くだけならともかく、ヨシュアが吹き飛ぶかもしれないんだぞ? お前責任取れんのか? 好奇心でやってみてくれってン百人が死んだ時、責任取れんのか?」


『貴様が弄んでるその塊を今すぐ頑丈な金庫の中に仕舞えええええええッ!!』


 使えはしないものの計画の要となる物質を見たいだろうと、親切心で持ち込み、そのオーラに感心していたはずのワンが絶叫した。


 遠方に居るワンですらこのリアクションだ。周りに居るレオ兄達は、手榴弾でも見たように慌てて俺から距離を取……らない。


「危険がないとわかってるからルークはここに持ち込んだんだし、何かあってもフィーネ達が何とかしてくれるからね。強者でどうにもならないなら何処へ逃げても同じだよ」


 と、机の上に並べられたティーカップを口に運ぶレオ兄。その手は一切震えていない。冷静そのものだ。流石だ。やはりわかっている。


「やーい、やーい、怖がり屋さ~ん。プププ~。1人で叫んで恥ずかしぃ~」


『俺か!? 俺がおかしいのか!?』


「そうだよ。もう良いな? 納得したな? んじゃあエロカルタづくりについてだけど……その前にカルタの説明だな。全員知らないよな。カルタってのは――」


 画面の向こうで暴れるワン。


 取り押さえて宥めるスーリ。


 その光景を見てホクホクするホモ蛇シュナイダー。


 全員無視させていただく。




「要するに絵合わせだね? 五十音の中で音が同じ、や行の『い』『え』と、わ行の『ゐ』『ゑ』『を』を除いた46文字から始まる言葉を作れば良いんだね?」


「そゆこと。札の作成は俺がやる。皆は内容を考えるだけで良い」


 ザっとした説明にもかかわらず理解したレオ兄が凄いのか、最低限の情報で理解させられる俺が凄いのか、どちらにしても話が早くて助かる。


 未だにカルタというゲームを理解出来ていないヤツも何人かいるが、まぁ実際に作成してみればすぐ理解するだろう。やってもわからなければ子供以下だ。


「なんでこの面白そうなゲームをエロに限定するのかな? 普通に遊具として作れば良くない? 子供の教育に役立ちそうだよ。何ならオリバー用に欲しいよ」


「俺がしたいから」


 男も女もそういうの好きじゃん。隙あらばエロいこと考えてるのになかなか表に出せないじゃん。エロを表に出す切っ掛けを作りたいのだよ、私は。


『たしかに男女問わず読み手をさせるのも楽しいし、必死にエロ単語に目を向けて記憶して札に触れる姿を見るのも楽しいし、知らない言葉を教えるのも楽しいな! 知ってても盛り上がる! サイコーのゲームだぜ!!』


 エロ大王ことスーリも理解した側の人間である。エロは力だ。


「…………そっか」


 そんな俺達の主張を聞いたレオ兄は、後で普通のも作ろうね、と諦めたように言ってエロカルタづくりに賛成した。


 そもそも知育遊戯だって言ってるのに子供にしかやらせないのはおかしいのだ。今回はエロだが、大人向け、ネット民向け、中高生向けの作品を世に広めても良いだろ。アナログゲームで広がる輪もあるはずだ。


「難易度高いなぁ……色んな意味で……」


「そうか? 俺は結構好きだぞ、このノリ」


 他の面々も乗り気になってくれたようなので、早速カルタづくりに取り掛かろう。


 さぁ、恥ずかしがらずにLet's 発言!



「まずは『あ』」


『ルーク殿。その前に拙者から「ん」の札を指定したいでござる』


 五十音順に決めていこうと進行するも、真っ先に手をあげたのはその前提を覆そうとするシュナイダー。


 もちろん止めない。むしろ大歓迎だ。順番には何の意味もない。浮かんだワードを口に出すのは素晴らしいことだ。


 で、プロ作家が自身をもって推すワードはと言うと……、


『んほぉおおぉ』


「これは、ね……」


「ああ。選択肢が少なすぎる」


「続けるとしたら『チ●ポ気持ちいい』だな」


 満場一致で決定。エロに造詣の深いソーマとサイに至っては唸るほどだ。


「え? え? なに? どういうことです? 『んほぉおおぉ』ってエッチな言葉なんですか?」


「さ、さぁ……ただルークの発言で何となく理解出来たね……」


 と思ったら戸惑う者が2名。


 その中でも女性経験があるかないかで若干別れたが、2人とも俺の補足のお陰で辛うじて理解してくれたようなので説明は省かせていただく。もちろん参考資料は贈呈するが。


「(ぼそっ)おいルーク、本当にこいつ等、ここに混じってていいのか? 後で嫁や母親、恋人や親友に殺されないか? 主に俺達が」


「(ぼそっ)母さんもシャルロッテさんもこういうことに割と寛容だから問題ない。アリスもああ見えて結構イケる口だ。シィは知らん。怒るか喜ぶか半々だ。

 でも純粋無垢な少年達の意見も大事だろ。俺達みたいなエロに造詣の深い人間の意見ばっかじゃ成り立たない企画だし。1つでもエロワードを引き出せれば勝ちよ」


 と、こちら側の人間を納得させたところで2ワード目。



「あー……あー……『愛してる』とか?」


「惜しいな。俺は『愛液ドバドバ』に一票入れるぜ」


 ファイの純情な感情にすかさず訂正を入れる。意見は大切だかこれは違う。あまりにもエロくない。テーマからかけ離れている。


「愛液は間違いないが後半部分は意見が分かれそうだな。俺は『ぬちゃぬちゃ』が好きだ」


『トロトロも悪くないのでは?』


 サイとスーリも各々好みの擬音を採用してくれと言い出す。さらに乗って来た連中からアナルや泡姫などの単語も飛び出してくる。


『やれやれ……諸君のエロとはその程度でござるか……』


 そこに吹き込む一陣の風。


 シュナイダーだ。


『愛液などという直接的な言葉を用いるのは子供のすること。拙者達はプレイヤーを楽しませる義務があるでござる。子供が喜ぶうんこ・ちんちんならいざ知らず、そこそこエロい単語で笑えるでござるか? 盛り上がれるでござるか?』


「「「そ、それは……」」」


 言われて気付く。たしかにこれではただの思春期の男子ではないか。辞書でエロ単語を調べて赤線を引いてキャッキャしている中学生男子ではないか。英語のテストで『six』を『sex』と書いてしまったヤツをからかっているようなものではないか。


『わかったら「足こきはルーズソックス着用で」にするでござるよ』


 目から鱗だった。


 エロい。しかも妄想を掻き立てられるエロさだ。語感も素晴らしい。


(これが……プロ……!)



 そこから俺達の姿勢は変わった。エロはエロでもストライクゾーンギリギリ、ボール判定になっても構わないぐらいの気持ちで攻めに攻めた。


「『い』!」


「『イキたいの? アレを言うまでイカせない』はどうだ?」


「あるある。服従の言葉だったり、彼氏や夫への決別だったり、肉欲に溺れていることを認めるための言葉を言わせるシチュエーション。ある過ぎる」


「『お』!」


『おしっこは、出すものじゃなく、かけるもの!』


 好みは分かれるだろうが人にかけるシチュエーションが多いのは事実だ。漏らしてもいい。エロ漫画では我慢している、もしくはさせてる姿を見かける機会が多いだろう。


 サバイバルでは飲み物だし、これは満場一致か?


「いやちょっと待て。『オナニーを、するなら閉めろよ、ドアの鍵』も、物語が始まる定番シチュじゃないか?」


『あー、家族や隣人のお姉さんに見られてってヤツな。たしかに誰もが一度はツッコんだことのある、エロあるあるだな』


「なら僕は、サイの物語が始まるって部分に被せて『り』に『隣人の、欲求不満な、お姉さん』を提案するよ」


『その後の展開が容易に想像出来る!』


「ああ。回覧板や預かっていた郵便物を届けるとそこには薄着or下着姿のお姉さんが。作り過ぎた夕食を持ってきてくれたり、逆に招かれたり、飲み過ぎて家の前でうずくまっていたり、いくらでも物語が展開していくな」


「家族の方にもフォーカスを当てようぜ。俺は血の繋がらない妹で『キスよりも先に処女を奪われる』を提案する」


「「「あるな」」」


『キなら、キモオタは上手い、もあるあるでござる』


「「「あるな」」」


「奪われるで浮かんだんだが『レイプもの、一番最後は目がハート』はどうだ?」


「落ちたな。そしてありだな」


「しかし『レ』でレイプは安易過ぎやしないか? ハイライトが消えている方が好きという意見も多いはずだ。無理矢理は無理矢理で終わるべきだという連中の意見を無視している」


「でもあるあるだろ?」


「「「まぁな」」」


 いつの間にやら年齢や接した時間など関係なく全員がタメ口になっている。当然それを気にする人間は居ない。


 本音で語り合うことで心の垣根がなくなっている。



 時に熱い議論を、時に満場一致で納得しながら次々に文字が埋まっていき、


「完成だ……」


「ああ。これさえプレイすればエロ漫画に登場するすべての言葉を理解出来る、素晴らしいエロカルタだ」


「やったね……やり遂げたね……」


 机の上どころか床にまで散らばったメモ用紙の山の中で、俺達は選び抜かれた46のワードを前に、満面の、そして納得の笑みを浮かべて互いを称え合った。


 心地良い疲労感が俺達を包む。


 この充実感と一体感があればリニアモーターカーなど一瞬で作れたかもしれない。


 そう思わせる何かがそこにはあった。



 ちなみにこのエロカルタ。成人向けの『15禁』と、地球で言うところのR-15の『10禁』の2パターンが発売されることとなる。


 10禁はワードこそエロいが札の絵はネタで、『いっぱい出ちゃった』が歯磨き粉のことだったり、『たまってるんでしょ』が貯金のことだったり、『手でぬいてあげるね』がコルクのことだったり、勘違い要素満載のカルタとなっている。


 どちらも人気商品となった。


 普通のカルタには遠く及ばなかったが、俺達は満足だった。

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