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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
四十九章 新生活編Ⅱ

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閑話 神の宣告

「こうして、子供達に身体能力と知恵と仲間の重要性を教えることに成功したルーク君は、大会の裏の目的である『お兄さんのストレス発散』エ~ンド『仕事の協力者募集』を誰にもバレずに達成したのであった~」


 スポーツ大会の企画・実行、参加者達への連絡および現地での仲介、各種魔道具に使用されている未知の術式の説明、競技への参加、大会終了後の飲み会の音頭取り。


 急遽おこなわれたホームラン競争(バットだけでなく遠投やキックや魔術もやった。つまるところ誰が何が得意かを知るイベント)にも参加させられ、心身ともにヘトヘトになった俺は意識を手放した。


 そして気が付いたら神界に居た。さらに言えば神様にナレーションされていた。


「俺の物語に割り込んで来ないでください。今からしようと思ってんです。後日談から始まる回想。定番のやつです」


「決め手となったのは、酔っ払いの皆さんに『成績が悪いのは飲んでるからだ! お前も飲め!』と、自分達が負ける度に飲酒を強要されたことですね~。

 自らの手で作ったノンアルコールで身を滅ぼすなんて、人類の歴史を見ているようで爆笑しちゃいましたよ~」


「無視すんな。あと滅ぼしてねぇよ。酔っぱらったフリをしたらバレて酔うまで飲まされただけだよ」


 おそらく神様はこの後、「語られちゃったものは仕方ないですよ~。今出来ることをしましょう~」と奪った側とは思えないコメントをするつもりだ。


 口論において相手の意見を受け入れるというのは隙を作るということ。折り合いをつけることを目的としていない現状で隙を見せるのはマズイ。畳みかけられる。


 調子に乗らせてしまう前に、ベロンベロンになった俺を見た幼女達が不思議そうな顔で「ノンアルコールで酔うとは?」と説明を求めてきた時におこなったのと同じ説明をして、真の語り部は誰かハッキリさせてもらおう。


「ふっ、イイでしょう。貴方の実力見せてもらいますよ」


(し、しまった! 後攻有利の状況を作ってしまった! これさえ言っておけば後から自分の好きなように出来る!)


 今更引き返すわけにもいかず、俺は神様の話術に戦慄しながらも説明に入った。



 知っての通り人体は有害な物質を分解する機能を持っているが、アルコールはすぐには分解出来ず、血中に混じって脳へ運ばれたアルコールは脳をマヒさせる。これがいわゆる『酔った状態』だ。


 未熟な体だと、十分な分解機能が備わっておらず脳障害を引き起こしたり、マヒ中の精神状態に不安があったり依存症になりやすいため、飲酒は成人してからと決められている。


 未知の部分が多く他者と比べようのない人体をどのように調べたのか疑問は尽きないが、それはさて置き。


 成分自体が身体に影響を及ぼすアルコールと違い、俺の生み出したノンアルコールは製造過程で籠められた魔力が感覚を狂わせる。炭酸をイメージしてもらえればわかりやすいかもしれない。


 要するに、分解機能など必要なく、障害どころか成長に繋がり、魔力を放出すれば一瞬で酔いを冷ませるものということだ。


 もちろんデメリットも存在する。


 魔力を籠めると少なからず味や栄養面を変えてしまうので本家に勝てなかったり、作り物のような酔い方に好き嫌いがあったり、魔力が使えない子供はただ気持ち悪くなるだけだったり、高価だったり、魔力が脳に届くまで時間が掛かるのでジュースと間違えてしまったり……はアルコールも一緒か。まぁアルコールと違って味覚でわかるようなものではないのでほぼ確実に間違えるけど。飲み物に混ぜるタイプのサプリみたいなものだ。よほど注意していなければまず気付かない。


 それでも合法的に酔っぱらえる飲み物というのは重宝する。


「ふっ、負けましたよ……貴方こそ真の語り部です……」


 神が流血するのは色々マズイのだろう。神様は苦しそうに心臓を抑えて膝をつき、優し気な瞳をこちらに向けてきた。


「神様……」


 その迫真の演技に思わずか細い声が出てしまう。


 どこで勝ち負けが決まったのか、彼女は何故苦しんでいるのか、真の語り部とは一体何なのか、自分の人生なんだから各々が好きにすればよくない?


 そんな素朴な疑問はどこかへ消えていた。


「最後に一つ聞かせてください……倒れるまで全力疾走なんて、ルーク君はいつからそんな子供っぽい熱血漢になったんですか?」


「やるなら最後までやりきれ。なんだその質問。全然関係ないじゃん。そして矛盾してるようで納得してしまう例えやめろ」


 『子供』と『漢』が両立するのはおそらくこれだけだろう。


「わかりきってることをイチイチ聞くのもやめてください。全部最初に言ったでしょ。言わせんな恥ずかしい(マジトーン)ですよ」


「全然全部じゃないですよ~。恥ずかしいなら私が言ってあげます。

 親と貴族の狭間で悩み苦しむレオ君をなんとかしようと思ったんですよね~? 彼の仕事が増えたのはルーク君が世界改革を頑張っちゃったからで、家族との時間を大切にしてもらいたいのに何も出来なくて、一度死にかけたことで誰もが敏感になっているオリバー君のことと合わせてなんとかしようと思ったんですよね~? 領主、貴族、王族、仕事の関係者を集めることで期限や区域を明確化して、急ぐ必要はないって伝えたかったんですよね~? 本当ならすぐにでもトライ&エラーをしたいのに、絶対そっちの方が効率が良いのに、個々で対処出来る範囲で動くことにしたのはそういうわけですよね~? 世界がついて来れるように手を抜いたんですよね~?

 ルーク君はとっくに気付いていることを気付いていないフリをするのが得意ですからね~」


「『聞かせんな恥ずかしい』って言葉はどうしてないんでしょうね……」


「合法だからに決まってるじゃないですか~。嫌なら止めれば良いだけですし~」


 ですよねー。


 しかしこれだけは言わせてくれ。


「人生を楽しむためには非効率なことをするべきだと思います。何でもかんでも報連相して全力で解決に向かうんじゃなくて、あえて手を出さずに周りを育てることも重要だと思います。

 場所だけ用意してあとは当人達に任せる。俺はそれをしただけですよ」


 神様はレオ兄の仕事の協力者募集と言ったが、それをしたのはレオ兄自身だ。


 自分から話に行って、協力を申し出たり出てもらったりして、具体的な話を詰めていった。俺は何もしていない。




「属性ってあるじゃないですか~」


「……火属性とか水属性とかのことですか?」


 この後もスポーツ大会の話が続くと思っていたら神様が意味不明な話題転換をおこなった。振っておいてもらって戻すのもなんなので従っておく。


「いえいえ、私が言っているのは妹属性とかパッツン属性とか……ぶっちゃけるとフェチズムのことです」


「はぁ」


 突然そんな下世な話題を振られても大体の人はこういう反応になるだろう。しかも相手は気心知れた同性ではなく異性(?)の超目上。


 神様は困惑する俺を気に掛けることなく話を続ける。


「あれって実際に妹が居たりすると好きにならないって言うじゃないですか? でもその理屈だと奥さんもそうなりますよね~。もちろん幼少期や思春期が大切ってことはわかってますよ。でもそれ以上に時間が重要なんじゃないかと。

 手の掛かる妹もいずれは立派なOLになったり、才色兼備のお姉さんが陰キャニートになることもあるでしょう。そんな時に突然趣味趣向が変わるのかと言われたらNOじゃないですか。

 しかも性欲の対象にする相手ですよ? 妄想という最強のものですら同じオカズだと飽きるのに、色々面倒臭い生身の人間相手に何年も興奮するなんて、難しいどころか不可能だとは思いませんか?」


「たしかに現実を見る、飽きる、『せい』より『せい』を重要視するという意味では、夫婦も似たようなものですけど……」


「長年一緒に過ごした相手には興奮しない。でも嫁だけは例外。そんな屁理屈が通用するほど世の中は上手く出来ていませんよ。近い遺伝子だと異常が多いなんて法則、私は設定してませんからね? むしろ魔力は高くなるんです。魔獣がそうじゃないですか。神獣ってそうやって生まれるものですからね。

 言い方は悪いですけど『蟲毒』と一緒です。何世代も血と魔力を受け継ぎ、熟成して、ようやく1人の強者が生まれる。

 人だってそうでしょう? オリンピック決勝は黒人ばかりで、モデルはハーフばかりで、医者や政治家や社長は二世三世ばかりじゃないですか」


 最後のは違う。


 しかし言いたいことはわかる。いやわからない。


「つまり何が言いたいんですか?」


 まさかレオ兄とシャルロッテさんの夫婦仲のことを言っているのかと不安になっていると、神様はキリっとした雰囲気から一遍、普段のゆる~い雰囲気で、


「アリシアさんに手を出さないのかな~、と」


「出すかッ!!」


 姉をヒロインに入れるんじゃない。


 妹萌えでも姉萌えでも年下萌えでも年上萌えでもない俺に、幼い時から虐待としか思えない鍛え方をしてくれやがったあの人を性の対象にすることは不可能だ。たぶん全人類が滅んで俺達しか生きていなかったとしても何もしない。


「ほうほう。つまりルーク君は性的な意味ではなく純粋な愛情でアリシアさんやレオ君のために動いたと?」


 なるほど。神様はそこに結び付けたかったわけか。俺をからかいたかったわけか。


 しかしそうは問屋が卸さない。


「別に普通でしょう? 家族を大切にするぐらい。困ってるならなおのことです」


「たしかに普通の家族ならそうですけど、前世の記憶を持ってるルーク君にとっては60歳から同居を始めたようなものじゃないですか~。突然現れた見ず知らずの女性から『この子達は貴方の孫だ』と言われたようなものじゃないですか~」


「地球で生を真っ当してたらそうかもしれませんけど、異世界転生しちゃってますからね。ここまで心機一転って言葉が似合う状況はないですよ」


「ひゅ~♪ お兄ちゃん子、お姉ちゃん子であることを否定しない、弟の鏡~♪」


 ……なんだろう。罠にはまった気分だ。



「あ、それと、神様からワンポイントアドバイス~♪

 そういった想いを精霊術を行使する際に抱くと治癒術になるんですけど、心配していることがバレても良ければ肉体を回復させることも出来ますし、バレないように精神だけを安定させることも出来ますよ~。

 フィーネさんが常日頃から使っているものなので、ルーク君も是非是非お試しあ~れ~」


 …………なるほど。わざわざスポーツ大会なんて開かなくてもレオ兄を元気にする手段はあったけど、それを教えることは自分の秘密をバラすことでもあるので、強者達は黙っていたor黙らされていたと。


 まぁたぶん知ってても大会は開いていただろうし、実際治癒では得ることの出来ない様々なプラスがあったので、今回は不問にしてやろう。


 スポーツ最強! 飲み会最強! 仲間最強!

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