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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
四十九章 新生活編Ⅱ

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千三十三話 ナイトパレード1

『二十話 フィーネ旅に出る』と『二十一話 フィーネ知り合う』を修正しました。


 ヨシュアーランドを120%楽しむための秘策の1つに『宿泊施設の利用』がある。


 何せこの遊園地には、待ち時間ゼロだったとしても1日では回り切れないほど多くのアトラクションがあり、時期・時間帯・人数が制限されているものもあるため、園内に併設・隣接しているホテルに泊まって逃さないようにするのだ。


 近所のホテルではダメだ。


 たしかにそちらの方が安上がりだし、コンビニや商店などへのアクセスもしやすい……というか出来なくなるので、遊園地はヨシュアを楽しむための1つのファクターでしかないという者達はそうするべきだろう。


 しかし『ヨシュアーランドを楽しむ』ただ1点に限って言えば、絶対に園内のホテルを利用するべきである。


 その理由をいくつか紹介していこう。


 1つ目は、隣接する総合レジャー施設の料金も宿泊費に含まれているためどちらも好きな時に利用可能で、ホテル内に専用ルートがあるので出入りの度にゲートをくぐらなくて済むこと。


 並ぶ時は結構並ぶ。


 もちろん利用出来るのは営業時間内だが、朝一の解放はホテル側からなので確実に選んだものに乗れるし、閉まるのは最後なのでギリギリまで楽しめる。宿泊客のために運行するアトラクションも少なからずある。


 ぶっちゃけ試運転だが、裏舞台を見られる貴重な機会であり、誰よりも先に体験出来る試写会的サムシングがヒューマンのハートをガッチリキャッチしている。


 2つ目は、ホテルの食事に園内のメニューがあること。


 流石に特典まではつかないが、『混んでて入れなかった』『お腹いっぱいで食べられなかった』などのガッカリ要因を解消可能な上、ここもヨシュアーランドなのだと実感が湧いてモチベーションを保つことが出来る。


 落ち着けるスペースがある一方、園内を彷彿とさせるスペースもあり、ここにしかないヨシュアーランドも存在するので、120%を目指すのであれば利用するべき……いや、しなければならない。


 3つ目は、普通だが実は一番大きい、ロッカーとして使えること。


 一応園内にも相当数のロッカーが存在するのだが、イチイチ戻らなければならず、容量もそれなりで、寒暖に強いわけではないので食品類は無理。


 その点、ホテルには各部屋に冷蔵庫が設置されており、広さも十分。しかも宿泊客の証明である腕輪を見せればインフォメーションセンターで荷物を預かってくれるし、回収し忘れても閉園後にホテルに届けてくれる。


「もし泊まらなかったら?」


「1週間は連絡無しでも保管しておいてくれる。貴重品の場合は予約を取る時に記載する住所や連絡先に伝言が届くらしい」


「すごい! 至れり尽くせりだね!」


「これは泊まるしかありませんわね!」


「ヨシュアーランドを訪れる際は是非ご宿泊を」


 というCMに使えそうな幼女達とのやり取りはさて置き、


「当然、常に予約で一杯だ。旅行先で金を出し渋るようなヤツはそもそも旅行なんてしないし、近隣住民もそれ狙いで泊まるからな。

 だが今回は、特別に、御厚意で、オープン前のホテルの一室を借りることが出来たので、お前達は遠慮なく好きなものを買うと良い! どれだけ買ってもナイトパレードの時に邪魔にならずに済むぞ!」


「「「おおおぉぉ~~っ」」」


 納得の理由に幼女達から拍手が巻き起こる。




 ここは遊園地でお馴染みのお土産エリア。


 見ているだけで楽しい珍妙奇天烈な店舗が目白押しだが、俺達はその中で貝殻をモチーフに作られた、おそらく海関係の商品が多い店を訪れていた。


 土産屋に入る目的なんて1つしかないし、理由も『今からアトラクションに並んでいたらナイトパレードに間に合わなくなる』という単純明快なものなので、説明は割愛させていただく。


「してるじゃない」


「してませんー。入園して早々に入りたがった幼女達を『それが何か知る前に入ってもつまらないぞ。ソーマが合流してから全員で来よう。思い出話をしながらの方が楽しいぞ』って説得したこととか、今が17時でパレードまで1時間30分しかないこととか、スタート地点がこの近くのこととか、パレード終了と同時に帰る客が多いから土産屋が混雑して買いにくくなることとか、直に見るのも良いけどホテルからの景色も最高で悩んだ末に現地で見るって決めたこととか、ナイトパレードの最中は他がガラガラになるけどどうするって聞いて一蹴されたこととか、誰かが遊園地に飽きたと言い出した時のためにレジャー施設のプランも考えてたこととか、説明してませんー」


「たった今全部したにゃ」


「くっ……だがまだだ! 俺にはまだ『今日来なかった人達へのお土産選び』という最終手段が残されている! 自分達の思い出の品はもちろんのこと、彼等へのお土産を選ぶゲームが始まろうとしている!」


「ココ達の話を聞いてたらわかることだね。説明するまでもないことっていうのはたしかに『してない』と言えるけど、果たしてそれはルークがするべきことなのかな? 『しない方が良い』んじゃないかな?」


 せんせー。ルナマリアさんとトリーさんとソーマさんが僕のことをイジメます。やめてって言ってもやめてくれません。


(イジメられる方に原因がありますね~)


 『方にも』ではなく『方に』と100%責任を押し付けるのは職務放棄したクソ教師のそれだが、神様に言われてしまっては引き下がるしかない。なにせ全知全能だから。逆らうこと自体が間違いだから。


(自分が悪いとは思わないんですね~)


(だって悪くねーし。語りに口を挟んできたあいつ等が悪いし。説明したかどうかなんてどーでも良いし。揚げ足取る方が間違ってるし)


 気分は捻くれ者の中学生。生徒指導室で対面に陣取る教師に反抗するようにソッポを向いて足を組み、ひたすら自分の非を認めない男子だ。


「お姉ちゃん何度も来てるしキーホルダーみたいな定番のものは絶対持ってるよ。持ってるものとか感動が薄くない?」


「じゃあぬいぐるみは? もし持っても双子感が出てカワイイ!」


「たしかに。並べれば可愛さが倍増する。それに持っているとは限らない」


「イヨさん、チコさん、それは逆も然りですわ。選んだ品がもしお2人のお姉様……ユチさんでしたかしら? の趣味でなければアウトではなくて?

 ワタクシもそういった経験があるのでよくわかりますが、ぬいぐるみのように可愛いさ一点突破の品で貰い手の好みからハズレた場合、無駄に家のスペースを占拠する厄介者にしかなりませんわ。しかも相手への気遣いから無下にも出来ず……」


「「「た、たしかに……」」」


 …………もうあっち行っていい? なんか除け者にされてるみたいで悲しいんですけど。メッチャ楽しそうなんですけど。というか行くわ。もう出てくんなよ。今度遊びに行くから。


 俺は催促するために脳内に現れた神様を追い払い、お土産選びに勤しむ幼女達の背後から静かに迫った。


 ってこれだけ聞くと完全に危ないヤツだな。


 俺は無実です。




 ユチの趣味趣向から部屋の間取りまで把握している俺は、以前一緒に遊びに来た時の話を合わせてすることで、悩める幼女達の救世主となった。


 引き攣った笑みを浮かべたり、感謝の言葉を口にすることが出来なかったり、色々と不審な点はあったが、すべてはあまりの神々しさ故だ。


「あー、もうそろそろ始まるなー。ところで貧乳って酷い言葉だよな。なんで『巨』の対義語である『細』じゃなくて『貧』なんだよ。百歩譲って同音の『微』で『微乳』だろ。美乳と紛らせること出来るし」


「流れるように無関係な話に入ったにゃ……」


「実際美乳は小さいことが多いよ。仕方ないことさ。脂肪の塊を美しく保てる方がどうかしてるんだ」


「ソーマさんもそっちに乗るんだにゃ……」


 仕方ないんや。こうでもしないとソワソワしっぱなしの子供達から「まだ? まだ始まらない!?」を連発されてしまう。同じやり取りを繰り返すだけなら良いが「それさっきも聞いた」などと言われた日にはどうしろと?


 どんなものでも開幕直前というのは落ち着くための儀式が必要となる。


 俺達はそれがたまたま乳トークだったというだけの話。


「ごほっ! ごほっ! ゲホァッ!!」


「さぁ次はジェファソンさんの番ですよ。恥ずかしがらずに」


「い、いや、私は……」


 悶絶する俺を他所に話を続ける男連中。


 俺だけ鉄拳制裁を受けた理由は、おそらく視線がルナマリアの乳に向いていたからだろう。「同感だけどアタシの方を見る意味がわからないわね」というセリフと共に、世界を獲れる重く鋭い拳が腹に突き刺さったし。


「いつまでも咳き込んでるフリしてないでさっさとお得意の説明始めなさいよ。あるんでしょ。パレードのウンチク」


 へいへい……。

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