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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六章 王都セイルーン編
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閑話 王都強襲3

「ねぇ、レオは高校でも上手くやっているかしら?」


 そんなエリーナの一言から始まった今回の騒動。


 騒ぎの原因はユキだが、彼女は調査して来いと指示されたから言われた通り調査をしただけなのだ。


 ましてや自分では完璧な任務だったと勘違いしているので、今後も調査することがあれば同じことを繰り返すだろう。



 そして忙しいオルブライト一家の代わりに高校見学をしてきたユキは王都での出来事を報告していた。


 独特な評価方法なので説明必須のメモ帳を見ながらユキの話を聞く一同。


 レオの成長が実感できれば問題なかったので一問一答方式で次々と書かれている出来事を確認していく。



「ねぇ・・・・この『努力ハナマル』って何?」


「二重丸だったんですけど、武術の腕が上がっていたのでハナマルに昇格したんです~。今のアリシアさんより強いですよ~」


「くっ! まさかレオに負けるなんて・・・・こんなに努力してるのに!」


 学校生活では常に手加減していたレオを見下していたアリシアだが、隠していた彼の実力を知って驚愕し、地団太を踏んで悔しそうにしている。


 自分の見る目の無さを嘆いているのか、格下だと思っていた兄に負けたのが悔しいのか。はたまたユキに褒められているのが羨ましいのかは彼女にしかわからない。



「この『教師マイナス』は?」


 アランが気になったのは教師陣の評価が低い事だった。


「教える人がダメダメですね~。レオさんの自己鍛錬がなければ高校の評価もマイナスでした~」


「え? 有名な講師の方々だって聞いてたよ?」


 一般的には優秀なのだろうがユキ基準では落第点らしく、授業の様子を詳しく説明するとアランは安堵の表情を浮かべて一言ユキに対して感想を述べた。


「それ人類なら十分優秀って言えるからね」


 アランの心配事は解決されたようだ。




「応援厳禁?」


 エリーナはセイルーン高校では謎の校則でもあるのか、と質問する。


「それですよ~。私は不満で一杯です~。

 ・・・・って事があったんですよ~。酷いですよね~?」


「「「いや、ユキが悪いでしょ」」」


 魔術の授業について語るユキだが、当然誰からも同意は得られなかった。


 未だに応援の意味を勘違いしているユキは納得のいかない顔をするが、誰も相手にはしない。


「・・・・俺とヒカリの授業参観には絶対来るなよ?」


 ルークが恐る恐るといった様子でユキへ忠告する。


 しかしその忠告が受け入れられる可能性は限りなく低いだろう。




「オルブライトのメイドは未熟? ユキ、これは何ですか?」


 自分の評価まで下げられる事を記す謎のメモを見たフィーネが静かな怒気を放ちつつユキに問いかける。


「レオさんのクラスメイトに言われたんです~。私のどこが悪いって言うんですかね~?」


(((それは間違ってない。全部だ、全部)))


 その場にいたフィーネ以外の全員が同じことを思っているが、いくら注意しても聞かないユキに進言する者など最早居ない。


「まさか黙って納得したわけではないでしょうね?」


 ユキの話など全く聞いていないフィーネの怒りがレオのクラスメイトへと向き、「愚か者はちゃんと始末したのか?」と全身から闘気を出しながらさらにユキに問いただす。


「もちろんギャフンと言わせてきましたよ~」


「な、ななな何をしたんだい? ・・・・も、問題起こしてないよね? ね!?」


 直筆の手紙まで持たせてユキを送り出した責任者であるアランが冷や汗を流しながら詳細説明を求めるが、フィーネ達に言われるまでもなくタッグマッチについて語り出すユキ。


「手緩いですね。そういう人物には真の恐怖と言うものを体験させなければ世のためになりませんよ。

 それではメイドとして未熟と言われても仕方がありません」


 その話を聞いたフィーネがメイドとは何たるかを説き始めた。


(((いやユキ、グッジョブ)))


 しかしフィーネ曰く『手緩い行為』にオルブライト一同は安堵する。


 もしもフィーネに任せていたら大惨事になっていただろう。


 最悪の事態は回避できたアランは疲れ果てて深く椅子へと座り込んだが、メモ帳はまだ半分も捲られていない。




「オススメは学生寮屋上?」


「早朝に行ったんですけど、朝日が気持ち良かったです~」


 王都でも比較的高い建物なので、邪魔するものが無くて全身で日光を浴びれたと言う。


 どうでもいいメモだった。


「その後、寝起きドッキリをしたら悲鳴を上げてましたね~」


「それ、ウチではしないでちょうだいね」


 エリーナが注意していなければ、派手なリアクションを求めてドッキリを仕掛けていただろう。




「なぁ、この『ハーレム◎』ってのが気になるんだけど」


「モテモテでしたね~。しかも帰り際には真の実力がバレて、それはそれは女生徒をはべらかしてました~」


 兄のモテっぷりを実際に何度も目撃していたルークが舌打ちをしつつ苦々しい顔をする。


 将来はハーレムだと語るユキ。


「まぁレオは長男として家を継ぐだろうし、お嫁さんが多いのは良いことだと思うよ」


「ダメよ! 一夫多妻なんて骨肉の争いにしかならないわよ!?」


「で、でも子孫繁栄のためには・・・・ね?」


 貴族として子孫繁栄のためにハーレム肯定派のアランと、女同士の醜い争いが目に見えているので断固否定派のエリーナが言い争いを始めた。


 そんな両親をしり目にルークは姉に恋愛の話題を振ってみる。


 もしかしたらお年頃のアリシアにも好きな人の1人でも居るかもしれないと思ったようだ。


「アリシア姉はどっち派? 一途な恋と、皆が幸せなハーレム」


「は? 私は冒険者派に決まってるじゃない」


 少女はまだまだ結婚に興味がないらしい。


 きっと将来は結婚相手の条件として『自分より強い事』と言い出すのだろう。


「ちなみにルークさんは『ハーレム特大ハナマル』ですからね~。最高ランクです~」


「ルーク・・・・ちょっと話があるの」


「いや! ユキの勝手な意見だから! 俺関係ないから!」


 ハーレム否定派のエリーナに連行されてアランと共に説教を受けるルークは完全に被害者だった。




「ねぇ、教師の中で強い人って居なかったの?」


 やはりアリシアの興味は強者だった。


 自分は通う事がないであろう高校にはどのような猛者が居るのか、出会わないからこそ知っておきたかったようだ。


「居ませんね~。バインバインの胸をした生徒に色目を使う女教師と、引退した元冒険者の男性教師しか見てませんけど~。

 あ、食堂のオバチャンは強そうでした~」


 『食堂のオバチャン』は調理場と言う戦場に限っては最強と言えるだろう。


「ならやっぱり私は高校に行かなくてもいいわね。そんな場所に行く暇があったら、冒険者してた方が学ぶ事多いじゃない」


「ちょ、ちょっとアリシア!? は、話し合おうか」


 エリーナとの言い争いに敗北してボロボロのアランは、娘が将来を勝手に決めてしまったことに動揺を隠せないらしく慌ただしく詰め寄って来た。




「・・・・誰も居なくなりましたね」


 アリシアと共に部屋を出て行ったアラン、男共への説教を終えたエリーナは疲れて出て行った、訳も分からず説教を受けてうな垂れたまま起き上がらないルーク。


 この場に残っているのはフィーネとユキだけであった。


「最後まで話したかったです~。まだまだ面白イベントあったんですよ~?」


 ユキの報告会は途中で強制的に終わりを迎えたが、全員がレオの成長を確認できたので彼女の任務は『達成』と言って問題ないはずだ。



「ルークさんが学校に通い始めたら調査します~?」


「その時は私も同行しましょう」


 その時に一波乱起きるのは必然と言えるだろう。


 ルークのスローライフはどこかへ消え去ってしまうだろうが、これが彼の宿命なのだ。


 倒れたままのルークが一瞬ビクンとなったのはそんな未来を察したのかもしれない。

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