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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
四十八章 新生活編

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千十五話 チョコ誕生

 知識のない人間を騙して高額商品を売りつけるのは接客の常套手段だが(隠し事も含む)、相手が人生経験の浅い子供となれば話は別だ。


 逆も然り。


 騙す側に回った子供はもはや子供ではない。


 どこまでが子供かは年齢よりも内容が重要で、その都度世間に判断を仰がなければ実刑に至るケースが限りなくゼロの少年法を笠にやりたい放題になるのだが、世界は民主主義を謳っておきながら変えるつもりはないようなので、こちらでは15歳、向こうでは18歳あるいは20歳までなのだろう。


 こういうところにこそ裁判員制度を導入するべきじゃないか。なんで刑事裁判だけなんだよ。世間の声なんて聞く気ないじゃないか。お偉い先生方が作ったルールに則って、情状酌量の余地があるからと無罪放免にするだけじゃないか。


 再犯したら本人もだが周りの大人やルールも責めろよ。犯罪ゼロを諦めるな。減ったことを喜ぶんじゃなくてまだあることを恥じろ。現行のルールで無理だってんなら改善していけ。いつまで同じこと繰り返すつもりだ。


 まぁ本編に雑談はこの辺りにしておいて――。


 6歳は絶対に子供だし、イヨたんは100%騙される(騙された)側なので、それをおこなった犯人を問い詰めるとしよう。



「言い訳はあるか? なければ強制労働1ヶ月、あっても俺を納得させられなかったら反省していないとみなして強制労働2ヶ月の実刑だ。もちろんこの百貨店も徹底的に調べるからな。本件さえ片付けば許されるなんて甘い考えは捨てることだな」


「当然だニャ。一度黒く染まったものは徹底的に洗浄する必要があるニャ。他は汚れてないなんて考える方がどうかしてるからニャ。総入れ替えも視野に入れるニャ」


 感知精霊術を発動するまでもなく店員の方から駆け寄って来た。イヨたんの証言もあって服を薦めた人物と断定。


 減刑の交渉をするとはどういうことかも伝えて対話スタート。


「納得していただける自信があるのでそれは構いませんけど、その前に1つだけ……店長。わたしは無実です。だからそんな目をしないでください。おもむろに退職届を差し出してこないでください。絶対書きませんからね。いや逆に書きますよ。無実の罪で退職させられたって、この店はクソだって、言いふらします」


 彼等が冗談を言い合う仲でないとしたら、この件が片付いてもゴタゴタは続きそうだが、部下を大事にしない上司の本性が露わになったのは良いことだ。


 それだけでも絡んだ意味があるというもの。


 ……ええ、彼が悪人でなかった時の言い訳ですよ。


「この子が1人でショーケースを興味深そうに見ていたんです。わたしは迷子かと思い、声を掛けました。『誰と来たの? 近くに居るの?』と。

 すると彼女は元気よく『友達!』と言い、同い年の子供2人と保護者が2人居ることを教えてくれました。さらに詳しく話を聞くと、保護者は後から合流する予定で今は店内を見て回っていて、彼女達は自分に似合う服を探す勝負をしているとのこと。よくあることです。

 保護者からも許可を得ているようだったので、わたしはおつかいの一種だと判断し、彼女に協力することにしました」


 ニュアンスは若干違うが許容範囲内だろう。


 問題はここから。


「どのような服が好みか尋ねると、逆に流行のものを聞かれたので、ここは婦人服売り場で子供服は別のところにあることを伝えました。しかし彼女はよくわからないように首を傾げました」


「……おい、お前は服のサイズもわからないほどバカだったのか? それは常識以前の問題だぞ? 冗談でないとしたら眼科か脳外科行け」


「なっ……! バカって言う方がバカなのよ! バーカ、バーカ!」


 客観的に話を聞いても何が悪いのか理解していないらしく、イヨたんはキョトンとした顔のまま棒立ちしていたのでわかりやすく指摘すると、今度は意味のわからない理由でキレた。


「俺は自分の服のサイズくらいわかりますぅー。わからない方が絶対バカですぅー。バーカ、バーカ、バーカ、バーカ」


 倍返しは基本です。


「わたしだってわかるわよ! そこにあったのが全部ピッタリだったから、こども用だと思っただけじゃない! バーカ、バーカ、バーカ、バーカ……あとなんかい言えばいい?」


 バカめ。足し算もロクに出来ない幼女の分際で掛け算に挑戦しようなど片腹痛いわ。そして俺に聞くな。そのチャレンジ精神は買うけどな! 二重の意味で!


 ちなみに正解は8回だ。


「ドワーフ族みたいな小柄な女性向けの売り場だったんだろうけど、そうならないために通路を2つ、エリアを1つ隔ててるし、売り場の雰囲気や色彩も違うだろ。気付けバカ×16」


「あっ、ズルい!」


「ズルくねぇよ。言った回数じゃなくて何回言えばいいのかわからないバカには無縁の作戦だろうが。それを誤魔化すために『忘れちゃった、てへぺろ』感を出したのも腹立たしいし。バレないと思ったかバカめ」


「まぁまぁ……貴方のおっしゃることはもっともですが、迷った可能性もありますし、サイズは同じなので大人っぽい服を好むお子様の中には婦人服を選ぶ方もいらっしゃいます」


 すかさず庇う店員。流石にフォローが上手い。


 嫁にはやらんがな。貴様の魂胆などお見通しよ。精霊術師を舐めるなよ。10歳の頃に同級生の着替えを覗いたことがあるだろ!


 ……え? それはロリコンじゃない? いやいや、その時の思い出を大切にしてるんだからアウトだろ。美化してオカズにしたことも一度や二度じゃないってからかい上手な水精霊が言ってました~。まとめサイトにも書いてました~。


「結局わたしの話を右から左へ流した彼女は、唯一理解出来た数字が大きい方が立派である理論を基に、ショーケースを指さし『あれ、わたしに似合う?』と尋ねてきました。わたしは『大人になったらね』と言いました。

 すると彼女は満面の笑みを浮かべて『わたしはもう大人だから大丈夫』と言い、次の瞬間、ショーケースが切断されて……取り出されて……引っ付いて……居なくなって……」


「あー、ドンマイっス」


 店員から許しを得たと判断した精霊達が、イヨたんに協力してしまったのだろう。まぁアレだ。子供が18禁コーナーに入ってしまったような感じ。


 好奇心を悪と言いたくはないし、親に説明しておけというのも無理があるし、慌てて探した店員も悪くはない。そう誰も悪くないのだ。


 金の価値を知らないクソガキが、綺麗な宝石の付いた服を店員に言われるがまま商品を手に取って、俺のところに持ってきただけの話。


「そ、そうですよね。不幸な事故が重なっただけですよね。誰も悪くありませんよね」


「ええ、もちろんです。だからエルフの力を悪用してる強盗犯に間違われても、全然、まったく、これっぽっちも気にしませんし、根に持ちませんし、あらぬ疑いを掛けられたなんて広めたりもしませんよ」


 押し売りは押し売りとして、俺ってば犯罪者扱いされてたんですよね。そりゃ店員は血眼になって探すし店長も出てきますわ。


「わ、我々にどうしろと……?」


「それはそちらが決めることですよ。誠意は言われて差し出すものではありませんからね。俺はそれに従いますし文句も言いません。あー、財布の中に銀貨20枚しかないなー。ドレスの他に色々買いたかったけど足りないかもしれないなー。ここで時間取られてなかったらもっと安くて良い品選べたのになー……チラッチラ」


「ははーっ!」


 店長(と店員)が土下座した。



「こんな酷い脅迫久しぶりに見たニャ……」


「人聞きの悪いことを言うものではありませんよ。俺は一言も『してほしい』や『しろ』なんて言ってません。彼等がこちらの考えを汲み取ってくれただけです。すべてあちら様の善意です」


 どれだけ不利な条件を突きつけられても平然としているのも根拠の一つだが、派遣とは言えハーフエルフが働いてる時点で、彼等はほぼ白。


 クリーンな企業だと思っていたのに、信用していたのに、向こうはこれっぽっちも信用していないとか、寂しくて涙が出ちゃう。だって男の子だもん♪ ぷんぷん!


「「「二度としないで」」」


 ちょっとした茶目っ気だったのに大不評だった。


 ま、入ってた金が足りなかったのはたぶんそういうことだ。強者には何もかもお見通しだったってわけよ。これが運命。デスティニー。


 これに懲りたら明日からは客のことを信用しやがれ。




「また来ます。絶対来ます。必ず来ます」


「お、お手柔らかに……」


 事件後。改めてイヨたんのドレスを選んだ俺達は、ココとチコに合わせて私服も1着購入し、店長他数名の従業員に見送られて百貨店を後にした。


 エルフらしくて良いと思ったのだが、緑色は嫌だと言うので、ドレスは首や袖まわりにチェックリボンがついた白のワンピース。


 そして私服は、同じデザイナーだが別の品で、黒から明るい茶まで程度の差はあれど3つともチョコレート色。


 首から下だけ見れば三つ子である。


「というわけで今日からお前達はチーム『チョコ』だ!」


 来た時と同じペアで、しかし来た時とは違う格好で白雪達に跨る幼女達に、俺は声高らかに宣言する。


「「「チョコ?」」」


「チコの『チ』に、イヨたんの『ヨ』に、ココの『コ』でチョコ。双子がチココなら3人はチョコだ。

 服もお揃いだし、3人並んだ時の立ち位置は毎回右から順にチコ・イヨたん・ココで、話す順番などもチコからのことが多いし、丁度良いかなって」


 無意識でやっていたらしく、3人はこれまでのおこないを思い返して、ココとチコだけが納得。


 イヨたんが忘れっぽいんじゃない。彼女にはそれ以上に気になることがあったのだ。


「わたし……チョコっぽさゼロ……」


「気にすんな。世界はエルフに茶色を求めてはいない。イヨたん1人なら適応されないしさせない。正直その服でギリギリだ。お前は一生そのままで居ろ」


 ヤンキーは茶髪か金髪でインテリ系なら黒。野球部は五分刈り。幼女はツインテール。ツンデレは縞パン。女騎士は軽装で男は重装。主人公一派なら軽装。


 そういった固定概念を覆すことはロマンであり禁忌だ。



「じゃあ……ほら! これでチョコレート!」


「ブフォッ!?」


 友の悩みを解決するべく、チココは自らの髪と尻尾にイヨたんをからめた。


 ココのクセっ気の強い薄茶の髪の毛がフワリ。チコの茶色の髪の毛がツヤリ。2人の尻尾がクニョリ。まんざらでもない様子の幼女がニッコリ。


 なんだこの幸せ空間は。口や鼻や耳や毛穴から色々噴き出さない方がどうかしている。


(カメラカメラ……ってそんなもの心のファインダーがあれば必要ないな。パシャリと。男の恋愛フォルダは全部分けて保存する! 枚数は無限だ! そして永遠だ! ブヒヒッ)


「鼻血が……大丈夫? 結婚する?」


「是非ッ!!」


 左右の親指と人差し指で四角を作って撮影会をしていると、その他全員が呆れる中、チコだけが心配してくれた。微笑してくれた。結婚を前提に結婚してくれると言ってくれた。


 毎日が記念日だが今日は特別記念日だああああああッ!!


 結婚式の始まりじゃああああああああああああああッッ!!!


「冗談。兄ちゃんは気持ち悪いけど面白い」


 冷たいわ~。ちょっとした本気じゃないか。冗談に見せかけて約束を取り付けようと思っただけだってのに……年の差7つとか普通だよな?

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