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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
四十八章 新生活編

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千三話 私にエルフの幼女が舞い降りた!

 皆は、大衆の前でパンツを丸出しにしても問題にならない年齢は、いくつまでだと思う?


 場所にもよるだろうし、『赤ちゃんでもダメ!』と他者への信頼と心のゆとりを失った意見もあるだろうが、俺は混浴が許されなくなる10歳より下……7~8歳ぐらいだと思っている。


 お祭りや海水浴、公園、旅行といった世間の目より楽しさを優先したくなるイベントや、楽な姿勢を取って見えてしまうような例外もあるが、それまでは好きなだけはしゃぎ回れば良い。


 それ目的で集まる者も居れば、その心理すらも利用して誘惑する者も居て、さらにそこまでやって手を出さない者でなければ許さないという者や、愛する者を晒して歓喜する者まで居るのだ。


 他人の恋愛タクティクスをどれだけ討論しようと意味はない。悪も正義もない。不快に思えば注意すれば良いし、思わなければ好きにさせれば良い。


 ……話が逸れた。


 つまり何が言いたいかというと、エルフっ子の必殺技『イヨレクイエム』の最終系(?)である『イヨレクイエム・ジ・エンド』から身を守った結果、自然な流れで両足を掴んで逆さ釣りにしてしまい、人混みで溢れる町中で女性が身に付けるパンティとは一線を画す布地たっぷりのモコモコ女児パンツ(綿100%)を丸出しにさせてるって話。


 天使の羽根と見紛うばかりの白パンツだ。


 上記でも話した通り、6歳なら問題ないと思っているので、責められるとしたら下着ではなくエルフ族の特徴である長い耳を晒してしまったこと。


 しかしそれもワザとではない。


 俺達は常に世界の中心に引き寄せられている。引力に逆らうことが出来るのは力と意思を持った存在だけで、どちらも持たない衣類は与えられた役目を放棄するものだ。



「『息苦しい』『格好悪い』『みんなしてない』って、優先順位を間違えてパーカーの紐を締めておかないからそんなことになるんだぞ」


「おろせー! 放せー!」


 落ち着かせようとしている俺の気遣いなどお構いなしに、両手両足をブンブン振り回して暴れるイヨたん。


 やれやれだ……。


 まぁ喜怒哀楽の感情を爆発させてこその子供なわけだし、ここは海よりも大らかな心で許してやろう。そして構ってやろう。


 さて、皆さんは鳥が羽ばたく直前に腕を僅かに下げることでタイミングを外された鳥は飛び立つことが出来なくなる、という話を聞いたことはあるだろうか。


 他にも合気道や関節技など、相手の肉体や感覚を利用して意のままに操る技は無数に存在するが、今俺がやっているのもその1つだ。


 彼女が右足を蹴り出そうとすれば押し、左足で踏ん張ろうとすれば引き、体を捻ればその方向に両足を動かす。


 結果、幼女は俺の手の平の上で踊らされる芋虫と化す。


「むきいいいぃぃ~~っ!!」


「おいおい……レディがパンツ丸出しで暴れるもんじゃないぞ。ほら、お前が暴れるからドンドン食い込んでいって、見えちゃいけないところまで見えそうになってるじゃないか」


「ぎゃああああーー!!」


 もちろん嘘だ。


 生地が薄ければ薄いほど、小さければ小さいほど攻撃力が増す諸刃の剣パンティと違い、幼女パンツは防御力特化。


 下は尻たぶを覆っても余りあるほど、上はへそまで覆うそれは、ブルマーと同じく意図的に食い込ませたとしてもズラさない限りモロ見えになることはない。その安心感たるや生涯履き続ける者まで居るほど。


 なのであれは男性で言うところのジャージに近い存在だと俺は睨んでいる。


「で、イヨたんはこんなところで何してんだ? エルフ族は成人するまで里から出ないんじゃなかったのか?」


「このまま続けるの!?」


「おっ、そうだな、悪い悪い……っし、これで耳が隠れた。もう安心して良いぞ」


 一瞬イヨたんから視線を放し、先程から地面を擦っているフードに向け、精霊術の力で顔の中心部しか見えないほどギュッと締める。


 暴れたりしなければ落ちないはずだ。


「あ、ありがと……でいいの、これ?」


「もちろんだ。世間の目なんて気にするな。大事なのは自分がどう思うかだ。イヨたんがパンツ丸出しで恥ずかしいと思うなら喚けば良いし、見られても構わないと思うなら久しぶりの再会を喜ぼう」


「手、ふるえてるけど?」


 16kgの物を腕と手首の力だけで持ち続けるのは、魔力で強化したとしても中々に厳しかった。むしろ3分もよく頑張ったよ、俺。


 というわけで一旦下ろして……。



「どうしてヨシュアに? 家族と旅行でもしてんのか?」


「ちがうわ! こっちに住むことにしたのよ!」


 顔の面積が半分になってもわかるドヤ顔。


 フードの紐を緩めないのは再戦する予定があるように思えてならないが、次は幼児らしくキッチリ下履きにinしているその上着を引っ張り出して、顔全体を包むように拘束するつもりなので、フードで耳を隠す必要はなくなる。


「……なんか背筋がゾクッとしたんだけど? ルークなんかしようとしてる?」


 そんなわけないだろ。


「へぇ~、つまり異文化交流ってわけだ。俺の知らないところで随分寛容になったんだな。他には誰がいるんだ?」


 俺は無視して話を進める。


 これまで外界へ足を運ぶと言えば、保護者同伴であったり徒歩数km以内であったり、小学生並の規制が掛けられていた。実際は守っていることの方が少ないだろうが、だとしても国境を超えるのはあり得なかった。


 しかし時代は常に変化している。


 ここにはフィーネとルナマリアが居るし、エルフ族も何度も訪れているので、いつからそうなっているのかはわからないが、候補地の1つに選ばれても不思議ではない。


 鎖国していた国が門戸を開いたことは嬉しいし、要因の1つに俺が混じってそうなのでさらに嬉しい。


「え? わたしだけだけど?」


「クララやフリーザ……お前の家族は? 友達は?」


「里」


「まさかここまで1人で来たのか!? 家出とかじゃないだろうな!?」


 どこに居ても地元の位置がわかる能力でも持っているのか、アールヴの里があるであろう方角を指さすイヨたん。


 俺の空間把握能力が弱いのではなく、外国にある町の方角を一瞬で示せる彼女が凄いのだが、そんなことよりも子供特有の無茶苦茶について調べなければ。


「ち、違うわよ! ちゃんと大人達にお願いして、旅の仕方を教えてもらったり住む場所を用意してもらったんだから! しゃかいべんきょーのためにね!」


「……そいや6歳だったな」


 口にしたのが人間なら驚愕するがエルフなら納得も出来る。


 魔力を手に入れて1年だろうと、軍隊を圧倒する力を持っているとか持っていないとか。両方とも全力を出しているのを見たことないから比較出来ん。したくもない。


「そう! そしてわたしはワールドワイドな女になるのよ! 肩の上のカワウソじゃなくてね!」


「…………もしかして『井の中の蛙』って言いたいのか?」


「え? ちがうけど?」


 本人が間違って覚えているのか、エルフ族にそういうことわざが存在するのかは不明だが、話の流れと語感からしておそらく前者だ。


 まず彼女は『井の中』を井戸ではなく胃と解釈し、『蛙』もカエルではなく語感の似ているカワウソと混同した。


 体内に生き物がいることに違和感を抱いた彼女は、体の外で生物が乗りそうな頭か肩に変換し、頭の上だと割と世界を見渡せるので肩の上にして出来上がり。


 Q.E.D.証明終了。


「要するに、社会勉強のためにここまで1人旅をしたし、里にはない学校生活を送る予定だと?」


「うん。とりあえず10歳ぐらいまでね。人間はそこでしょうらいを決めるんでしょ?」


「ああ。基礎学校を卒業する時に進学か就職か選ぶな」


「つまり必要なことは身に付けたってことよね。あとは実践しながらってことよね。わたしなら人間が5年間掛けて身に付ける知識なんて一瞬だけど、学校ってそれ以外のことを教えるところなんでしょ? 時間は人もエルフもびょーどーだものね」


 間違いない。




 拒否するようなこともでないし、拒否したところでどうなるわけでもないので、彼女には人間社会を学んでもらって2つの種族の懸け橋になっていただくとして。


「どこに住むんだ? というかもう住んでるのか?」


 辺りも暗くなってきている。旅やらこっちでの生活について聞くついでに送ってやろうと話を振ると、


「ルナマリアさんのところ」


 つまり農場。


 まぁ妥当なところだ。


「着いたのは今日の昼。色々やって1時間ぐらい前からこの辺りをさんぽしてたらルークにおそわれたの」


「襲い掛かってきたのはお前だろ。俺のは正当防衛だ。てか人間に負けんなよ。そんなんでよく1人旅出来たな」


「そ、そういえば! なんでエルフより上手に精霊を扱えるのよ!?」


 思い出したように俺の力に驚くイヨたん。


「異世界で修行してきた」


「なーにーがーおーきーてーるーのー!!」


 せっせと旅をしていたせいもあって、自分の知らないところであったことを今初めて知った彼女は、除け者にされたかのように憤慨し、地べたを転がり始めた。



 ゴロゴロゴロゴロ――。


「…………」


 ジタバタジタバタ――。


「……………………」


「なぁ~にぃ~がぁ~おぉ~きぃ~てぇ~るぅ~」


「土遁!」


「うわあああッ!? し、沈むゥゥ~!」


 駄々こねローリングから一遍、イヨたんは泥沼と化した地面の中で藻掻き始めた。


 俺は視線を1m下げて冷たく言い放つ。


「涙と大声に力があると思うな。お前が一人前になりたいというなら俺もそのつもりで接する。都合のいい時だけ立場を変えることは許さん」


「今のはツッコミ待ちだったの!」


「大人の女がツッコミ待ちとか口にするんじゃない」


「いみがわからない!?」


 意図してのことだったようなのでこの辺で許してやることにした俺は、彼女に手を差し伸ばし、


「全身ヌメヌメはアウトだ!」


「どういうこと!?」


 再び泥沼に突き落とされたイヨたんは、10秒ほど藻掻いた後、思い出したように精霊術を発動して脱出した。


 汚れもバッチリ落ちている。


 肉体が傷付かなければ問題ないってどこかの偉い人が言ってました。証拠がなければ問題ないってどこかの偉い人が言ってました。本人が言わなければ問題ないってどこかの偉い人が言ってました。


「なに言ってるの?」


「人間界ではこうやって保身しておかないと冗談や戯れでも罪になるんだ」


「こんなに楽しいことなのに?」


「正しいのは多数派の意見で、当事者がどう思ってるかは関係ないの。個人の力じゃどうしようもないから数の力で、ってのが人間の基本理念なの」


「ふ~ん、変なの」

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