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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六章 王都セイルーン編
123/1657

七十二話 婚約者騒動

総合評価が1000pを超えましたー!

ありがとうございます!


本当なら「あと少しで1000p」とか書こうと思ってたんですけど、一体何があったのか・・・・昨日一気に増えてビックリしました。

今後も頑張ります。

 俺は今、人生最大の危機を迎えていた。


 敵は強大で数も多く、頼りのユキは既に敵の手中に落ちているため味方は誰も残っていない、全滅だ。


 まさに四面楚歌、孤立無援なこの状況。


「クッ。武力には屈しない! 俺は最後まで戦う! 自由をこの手に勝ち取るまでっ!!」


 俺もこの腕輪の結界が無ければ危なかった。




「いいから結界を解いて、婚約者について詳しく話しなさい」


 母さんが恐ろしい顔で睨みつけてくる。


(いやだ。だって絶対怒られるし)



「王女様に気に入られて結婚、つまり王族の仲間入りするってことだよ。わかってるのかい? 権力争いに参入するってことだよ」


 父さんが権力の恐ろしさを語ってくる。


(あの場で断っても権力争い勃発しましたけどね)



「ルークはなんで私より先にユキの魔術を体験してるのっ! 許せないわね! 私ですら見たことない魔術なのよ!?」


 アリシア姉は結界に張り付いて恨めしそうにギャーギャー騒いでる。


(ブラックホールの事か・・・・それ今、重要?)



「婚約? ・・・・女の人と『こづくり』する? ・・・・・・他の女を好きになる? ・・・・許せない・・・・・・絶対ダメ・・・・・・消す」


 ニーナは結界を爪でガリガリして削れないか試しつつ、ボソボソと聞き取れない呪怨をまき散らしている。


(怖い)



「ルーク様。ご自分が何をされたのか理解していますか? 私は教育係として大変遺憾です。初対面の女性を娶ろうとするなど言語道断、不純異性交遊はあれほど危険だとお話ししたはずです。ましてや王族ともなればルーク様にどれほどの悪影響があるか図り知れませんよ。そもそも・・・・」


 フィーネは俺の前に正座してクドクドと説教をし続けている。


 言葉の節々に「王家を滅ぼすべきか」「ルーク様との逃避行生活も」など恐ろしい単語が聞こえるけど、俺は無視するしか出来ない無力な人間だ。



 ユキは食堂を作るために、リリとエルと一緒に現場視察に行っていて不在だった。


(肝心な時に使えないヤツだ。あれほどイブとの婚約について話すときは傍に居ろと言ったのに・・・・)


 今の俺に出来ることは結界内で黙秘することだけだった。




 騒動の切っ掛けは、王都から帰ってきた俺が両親に王城での出来事を一部を除いて報告した事。


 一部ってのは婚約者とか、混浴とか、イチャイチャとか、その辺だ。


「そっか。王女様は魔道具好きとは聞いていたけど、やっぱりルーク特製の魔道リバーシは喜ばれたんだね」


「父さんの用意してくれたプレゼントは台無しになっちゃったけど、何事もなく平穏なパーティだったよ」


 事前にユキから報告を受けていた父さんは、プレゼントを壊した俺達を怒ることもせず無事に帰宅したことに安堵していた。


 やっぱり幼い子供の長旅は強力な護衛が居ても心配になるものらしい。



「あのルークが貴族のパーティで友達を作るなんてね~。いい子たちなんでしょ?」


 母さんは王女様との出会いより友達を作ってきたことを喜んだ。


 友達・・・・かな? まぁ一緒に居て苦痛じゃないし、人柄もわかったから友達か。


「3人揃って賑やかで良い人達ですよ~。

 それにルークさんは王女様とも婚約しましたし、楽しいパーティでした~」



「「婚約?」」



 ユキの一言で空気が凍り付いた。


 いかん、今はまだその時ではない。フォローだフォロー。


「こ、こん・・・・コンニャクって言う料理が王女様の大好物でさ~」


 そう、王都にはコンニャクが大流行だったのだ。ってことで何卒。


「イブさんは肉食だって言ってたじゃないですか~。

 自分の婚約者のことですよ~。忘れたんですか~?」


 ・・・・いや、覚えてるよ。


 イブは野菜嫌いで、俺が料理得意って言ったら「ルーク君が作ったものなら食べる」って言われた事まで詳細に覚えてるよ。


 そもそもコンニャクなんて存在してない。



 しかしまだ諦める時間じゃない。


「主役の第4王女様が魔道具作りの天才でさ!

 パーティでインスピレーションを受けて、今夜『クシャ』って魔道具を作ろうって言ってた気がするな~」


 クシャ・・・・なんだろうな。俺にもわかんないよ。


「しばらくリバーシで遊ぶって言ってましたよ~? 国王のアーロンさんもリバーシ気に入ってましたね~。

 オルブライト家にも挨拶しないといけないって言ってましたから、イブさんと一緒に来るんじゃないですか~。その時にはきっと強くなってますよ~」


 ・・・・・・それも知ってるよ。


 パーティでは姉のマリーさんにリバーシ独り占めにされていたから、当分は自分が独占して遊んで戦術考えて強くなるって張り切ってたよ。


 でも今必要なのは事実じゃない。優しいウソなのだ。だから頼む、大人しくしてろ!


(ユキが大人しく? くっ、無理だっ!)



 俺のフォローがことごとくユキの天然発言によって潰された。


「お前もう黙れよっ!

 違うんだ。俺のプレゼントしたリバーシを気に入った王女様が製造現場を見たいって言ってただけ。社交辞令ってやつだよ。たぶん来ないって」


 苦しい。でも俺は頑張ったと思うんだよ。


「はっはーん。わかりましたよ~。イブさんが来た時に『彼女が俺の婚約者だ』って紹介して驚かせる計画なんですね~。

 イブさんは学校が始まるまでには来るって言ってましたよ~」


 驚かせるもなにも、今俺が一番驚いてるよ。


 なんでイブがヨシュアに来ることになってて、なんで俺抜きで話が進んでるんだよ。



 俺の誤魔化しは天然ユキによって全て台無しにされた。


 もう本当の事を言うしかない。



「ルーク。まず婚約について話しなさい」

「ユキは詳しく知ってるんだよね? 説明を」


 ユキがある事ない事、次から次に話し出す。


「待って・・・・全て白状します」


 たしかに全部本当にあった事ではあるけど、話の前後関係がゴチャゴチャで別の解釈をされそうだった。


 この状態のユキに説明を任せるより、自分で話した方が間違いなくリスクは少ない。


(最初からそうすれば良かったんだ。なんでユキを頼ろうと思ったんだろう、俺)


 結局自分が頑張るしかないのだ! 誰かに頼る人生なんてありえないのだ!


 ユキのお陰で大切なことを学べたよ・・・・。


 お礼に変な味のマヨネーズをプレゼントしようじゃないか。マヨネーズへの冒涜的な行為をしてあげよう。




 ユキへの復讐を考えていた俺が、今から父さん達に婚約者について話そうとした時、部屋にリリがやってきた。


「ユキ~。アタシのお店の調理場の事で相談があるニャ~。エルは先にお店で待ってるニャ」


「そう言えば王都から帰ってきたら調理場を作るって話してましたね~。今すぐ行きますよ~。

 と言うわけでルークさん、後は頑張ってくださいね~」


 それだけ言い残してユキはリリと共に出て行ってしまった。



「ホント、アイツ自由だな・・・・まぁ良いか。

 じゃあ俺が王都に着いたところから「ルーク! ユキの魔術を見たって本当!?」・・・・アリシア姉、どこで聞いたの?」


 今度はアリシア姉が乱入してくる。


 皆タイミング良すぎるだろ。


「ユキが王城で戦闘したって自慢してたわよ?」


(チッ、さっさと店に行けばいいものを。アリシア姉が戦闘話を見過ごすわけないだろ。面倒ごとが増えた)


 居なくなってもトラブルの元になるユキへの好感度が下がる。




「え~と、俺が貴族に絡まれてユキが代表して戦って「ルーク様、婚約とはどう言うことでしょうか?」・・・・フィーネ、次は君か」


 父さん達への説明を一旦置いといて、アリシア姉に事情を説明しようとした俺を次なる刺客が襲う。


 人が増えたので説明する順序を考えようか。


(つまりフィーネは父さん達と同じ疑問を持ってるわけだから、先にうるさそうなアリシア姉に説明してこの場を一旦鎮め、落ち着いたところで大人組へ婚約について話すべきだよな)


 よし! これだ!


「え!? ルーク婚約したの!?」


 戦闘にしか興味のないアリシア姉だけど、流石に弟の婚約話には驚いたようだ。


「いや、その説明をしようとしたらアリシア姉が来たんだよ。だからユキは俺の代わりに戦って「・・・・ルーク。どういう事?」・・・・お前もかニーナ」


 さらにニーナまで登場する。


 どうやら俺が帰宅したことを知った全員が王都の話しを聞こうと探していたらしい。


 ちなみにフィーネとニーナが言うには「ルークさん、婚約~♪ ルークさん、結婚~♪」と歌いながら屋敷から出ていくユキを目撃したらしい。


(アイツ本当にロクなことしないな!)




 そして全員への説明を諦めた俺は結界に引きこもる事にした。


 だって一言毎にリアクションと追及が俺への物理攻撃と精神攻撃となって来るんだもん。無理だよ。


「フィーネ、やりなさい」


「もちろんですエリーナ様。『ブレイク』」


 フィーネが詠唱をすっ飛ばして魔術を使うと、俺を覆っていた結界が消えた。砕かれたとか、魔力を吸収されたとかじゃなくて純粋に無力化された。


 そして無防備になった無力な俺は全員の前に正座させられる。


(なんで俺、5歳児なのにこんな修羅場を経験してるんだろうな~。女性関係の縺れとかじゃないんだぞ? 俺、何もしてないんだぞ?)


 これが『自ら進んでハーレムを作ろうとした』とか『恨まれる行為をした』って言うならわかる。


 でも今回俺は被害者のはずだ。なのになんで皆して俺を責めるような目をする! おかしいじゃないか!!



 そんな事を言える雰囲気でもなく、黙って正座している俺に父さんが静かに語りかけてくる。


「ルーク、まずは婚約について話そうか」


「はい・・・・ユキが王女様へのプレゼントを壊したのが始まりでした」


 俺は全てを白状して聞かれた事にはその度に答えた。


 怒ったり悲しむ人が居れば話を一旦中断して落ち着くまで待ったし、アリシア姉やニーナの体罰は甘んじて受け入れた。


 王城に到着した辺りで、父さんが城の造りや置かれていた調度品を詳しく聞いてきた。たぶんパーティで王城に行った貴族の自慢話に付き合うためだろう。


 だから俺は覚えている限りの全てを話した。アリシア姉に「攻城戦の弱点は!?」と聞かれて「知らない」と答えると「役立たず!」と殴られた。



 パーティ出席中の話では母さんも加わり、食事マナーとパーティマナーについて細かく指導された。フィーネとエルが高速で食事を作り、実際にテーブルマナーを叩きこまれる。なんだよフォークの持ち方って・・・・齧り付いた方が美味しいだろ。


 だからユキよりフィーネが良かったんだ。アイツ何も言わなかったぞ。



 第2王女マリーさん、第4王女イブ、国王アーロン様の登場シーンではさらに厳しい指導が入る。


 両親からは国の頂点に居る人への対応のダメ出しを受け続けた。


 いつしかアリシア姉まで加わり「護衛は!? 護衛は居たの!?」と、俺の脳みそが溶けるほどシェイクしてきたけど、俺は抵抗することなくフラフラになりながら全てを受け入れた。



 ユキが決闘する場面になると当然アリシア姉が詳細を聞いてきて、1人2役の出来もしない演武を延々披露させられて精神がすり減っていった。


 もちろん行動する度に待ったが入り、どういう状況なのか説明する羽目になる。一般人に『プロボクサーの試合を再現しろ』とか言われても無理に決まってるだろ。


 でも鉄拳制裁を受けながらも無様な演武を頑張ったよ。



 イブの部屋での出来事について話すと、ニーナとフィーネがイライラし始めた。


 そんなイライラが最高潮を迎えたのは俺とイブが一緒に入った風呂の話。怖くて2人の顔を見れなかったので地面の方を向きながら話した。と言うか地面しか見ていない。だってずっと土下座してたから。


 そんな土下座中の俺の腕には、ずっとニーナの爪が深く食い込んでいた。でも何も言わず、何もしないフィーネの方が怖かった・・・・本当に怖かった。


 あ、裸のイブを触ろうとした話とかはしてないです。無理です。



 最終日のイベント3連続については模擬戦でアリシア姉、新作魔道具で両親、学校説明会でフィーネが食いついた。


 もちろん俺は演舞し、魔法陣を説明し、王都の学校の制度について詳しく語る。


 でも再現できていない演武にアリシア姉がキレ、駄作しかない魔道具の説明に両親がキレ、イベントの間にあったイブとのイチャイチャ話でニーナとフィーネがキレた。



 もう俺の精神も肉体も限界だった。


(最初から素直に話していれば両親への説明だけで済んだんだ。アリシア姉もニーナもフィーネも居ないから、こんな目に遭う事もなかったんだ・・・・誤魔化そうとして時間をかけた俺が悪かったんだ)


『話が大きくなる前に片付けよう』『早めの謝罪と誠意を見せよう』


 俺はまた1つ大人の階段を登った。




 そして全てを説明し終えてボロボロな俺は、改めて身の潔白を証明するべく発言をする。


「つまりルークが王族になるんじゃなくて、イブちゃんがオルブライト家に入るってことなんだね?」


「はい。俺は王位継承権があるなら絶対に結婚しないって言ってきました」


 権力者にはならない。そのために婚約破棄をチラつかせたし、国王様にだってしっかり確認したんだ。


「そして近々、国王様と一緒にウチに来るのよね?」


「詳しくは聞いてません。挨拶が必要だな、とは言ってました」


 ユキの言ったことが本当か冗談かなんて知るか。


 さすがに事前に連絡ぐらいするだろう。するよな? ドッキリとかいらないからな。



「王様の護衛・・・・ちょ、直属の兵士よね? つ、つつ、強いんでしょうね!?」


「ユキが言うには、試合の審判をした人が強いらしいです。たぶん護衛で来るのはその人だと思います」


 君は本当に戦闘だけだな。弟の結婚相手とか興味ないか?



「今すぐ見ず知らずの女が来て、私のルーク様と結婚するわけではないのですね? 私は王都へ攻め込まなくてもいいのでしょうか?」


「「っ!?」」


「結婚は大きくなってからです。決して武力介入しないでください」


「「ほっ・・・・」」


 フィーネが軽々しく戦争を始めようとしていたので、俺が拒否すると父さん達が安堵していた。


 王都壊滅は免れたようだ。


 フィーネなら出来そうじゃん。


 ユキも「なら私と勝負ですよ~」とか殲滅規模を競いそうじゃん。



 そんなわけで最大の問題事は片付いた。


 と思う。思わなきゃやってられん。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前に躾けと称して娘を殺害した事件を思い出した。 [一言] 面白いんだけど、5歳の弟を殴る姉とそれを止めない周りの大人達。 実際目の前で5歳の子供が正座させられて暴力を振るわれるって…
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