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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
六章 王都セイルーン編
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六十二話 友達を作ろう

 さて、腹も一杯になったし部屋に戻って寝るか。


 うん、良いパーティだったな。


 食事だけを十分に堪能した俺は、満足して休憩することもなく早々と会場を後にする・・・・寸前にユキに引き留められてしまった。


 チッ、パーティに参加したって大義名分が出来たから部屋に引きこもろうと思ってたのに。


「誰とも話してないじゃないですか~。積極的に話しかけないとお友達は作れませんよー!」


「いやだって、みんな楽しそうに自慢話してるし」


 まぁ、流石に部屋に戻るってのは冗談だ。


 ・・・・いや、ホントだよ?


 一応俺だって友達が欲しいから話しかけようと思ったさ。でも子供達は全員が飽きることなく自慢話をしてて、誰1人この空間に不満を持ってない。


 つまり俺が話しかけるタイミングなんて存在しないのだよ。



「話を合わせてるだけかもしれないじゃないですか~。内心ではルークさんと同じ気持ちの人も居ますよ~」


「だって俺には判別できないし」


 話しかける相手を間違えたらパーティ終了まで自慢話が続くわけだろ?


 そんなギャンブルは嫌だ。だったら1人で居る。


「パーティ本番は今日じゃない。俺は明日から頑張る」


 たぶん今日はダメな貴族しか集まってなかったんだ。


 日が悪いから今日はここまでにして会場に馴染む努力をしようじゃないか。


 そして明日も明後日も、いつまでも『明日から頑張る』で良いんじゃないだろうか。だって王都なんて遊びにしか来ないから友達作る意味なくない?


「そんなこと言ってるから友達できないんですよ~。

 明日じゃダメですー! 今日から始めましょうーーっ!」


 ひたすら受け身でウジウジしている俺にユキが怒ってきた。


「いや、やる気はある! でも相手が悪い。明日、明日はやるからっ! 本当だからっ!!」


 だから引きずって行かないで! いやっ! あの輪の中に入りたくない!!


 止めてぇぇーーーー!!!




 俺の手を掴んだユキが無理矢理連れて来たのは、3人の貴族が会話を続けている輪だった。


 ユキに腕力で勝てるわけないよな。


「こんにちは~。オルブライト子爵の者です~。お話しましょう~」


 な、なんてコミュニケーション能力が高くて空気を読まない奴だ。まさか会話をぶった切って乱入するとは・・・・伊達に精霊やってないな。


 いくら盛り上がっていようとも、話しかけられては無視することが出来なかったのか、3人がこちらを振り向いてくれた。


「オルブライト子爵? 失礼、どちらの出身ですか?」

「ワタクシも聞いたことありませんわ。王都ではありませんわね」

「子爵が招かれるとは、どのような功績をお持ちで?」


 あ~、無理。この「お前の自慢話聞かせろよ」って雰囲気が無理。


 別に何もやってませんけど? なんで招待されたか俺が知りたいんですけど?



「ヨシュアの北口を統治している子爵の1つです」


 一応質問されてるみたいだから返答はする。


 聞かれたことに対して無視するってあり得ないよな? なっ?


「ヨシュア・・・・あぁ王都の西にある小さな街か」

「どのような名産があるのですか?」

「功績も無しに領主でもない子爵が呼ばれるとは一体何故?」


 ヨシュアに名産物なんて存在しない。


 強いて言えばロア商会が売り出す色んな商品が名産になりそうだけど、それは未来の話だ。


「自然豊かな土地で現在発展の真っ最中なのですよ。功績はこれと言ってありません」


 嘘をつきたくない俺は事実をありのままに言う。


「はぁ。何故招待されたのですか?」

「田舎者ですわね」

「もしかして招待されているから我々と同等だと思っているのか?」


 俺が当たり障りのない回答をしてるのに、なんでこう見下そうとするかな~。


 もうタメ口になってるし・・・・帰って良いだろ? 俺は頑張ったし、今すぐ帰ろう。




「パーティは楽しんでいるかしら?」



 3バカからの嫌がらせを耐え忍んでいたら、別の子供から声を掛けられた。


 俺達より若干年上の少女、アリシア姉と同い年ぐらいか?


「「「ッ!」」」


「始めまして。オルブライト子爵次男のルーク=オルブライトです」


 とりあえず初対面の相手なので自己紹介をする。


 貴族には挨拶しておけば万事OKみたいだからな。伊達にアクアでパーティ経験してない。ちゃんと貴族の常識ってやつを学んでるんだよ。


 でも3バカは固まってて一切挨拶する気配もない。


(しまった、王都ではルールが違うのかもしれない。情報収集不足だった)


 いきなりミスってしまった。


 でもルールは違っても貴族相手に挨拶するのは流石に失礼ってことはないよな?



 俺の自己紹介を聞いた少女も自己紹介してくれた。


「フフフ。初めまして。

 第2王女のマリー=オラトリオ=セイルーンです」



 まさかの王女様だった。


 貴族じゃなかったよ。


(俺、大丈夫? 普通に自己紹介したけど打ち首とかにならない?)


 思い返せば彼女は「パーティは楽しんでる?」って主催者っぽいこと言ってのに、なんで気づかなかった俺。


 そりゃ3バカも固まるっての。



 いかん、黙ってしまっている。


 彼女が主催者だと言うならば、主催者用の挨拶をし直せばいいのだ。


「こにょ度は・・・・」


(噛んだぁぁぁぁーーーっ!!!

 招待してもらったお礼を言おうと思ったのに噛んだぁぁぁぁーーーーーっっ!!!!)


「ッ! ッフ・・・・ゥフフ、フフフッ!」


 俺の失態を王女様に笑われた。


 肩を震わせながら必死に声を押し殺して笑われた。


 もう家に帰る。ユキ送ってって。


「ちゃんとお礼はしましょうよ~」


 縋るような眼でユキを見ると「やり直せ」ってスパルタな事を言ってきた。いや正しいんだけどさ。


「はい・・・・え~。この度はご招待いただき誠にありがとうございます。大変楽しいパーティです」


 よし、言えたっ! 本心とは真逆の事を言ってるけど、取り合えずお礼は出来た!


 さあ! 帰ろう!!



 王女様はまだ肩を震わせて笑ってるけど、彼女は王女としての応対をしてくれた。


「それは何よりです。あなたがルークさんね」

 

 俺が招待された理由とか聞いても大丈夫かな?


 主催者なら子供と言えど事情を知ってるかもしれない。


「はい。あの俺、あ、いや私は何故招待されたんでしょうか?」


「話しやすい言葉づかいで良いわよ。口うるさい大人達は居ないから」


 すごくありがたいけど、随分とフレンドリーな王女様だな。




 落ち着けたから王女様を観察することにしよう。


 間違いなく美少女なんだけどアリシア姉に近い空気を感じるから普段は活発なんだろう。金髪ロングで翠瞳すいがんのお姉さまだ。

 金の装飾がされた如何にも高級な白いドレスを身につけているぞ。花嫁衣裳だってここまでヒラヒラしていないってぐらい動きにくそうだ。



「観察は終わったかしら?」


 バレていた。


「じろじろ見てごめんなさい」


「いいわよ、王族だから人に見られるのには慣れてるもの。

 あなたを呼んだ理由は人伝に噂を聞いたからよ」


 優しい王女様で良かった。むしろ俺の考察が終わるまで何も言わずに待っててくれたのは助かる。


 初対面の美少女を3秒以上見ないようにしないとトラブルの元だな。


 あと俺は何もやってないのに噂ってなんだ?


「俺、どこにでも居る一般人ですが?」


「一般人はエルフの主をしてないわよ」


「「「エルフ!?」」」


 あ、やっぱり珍しいんですね。3バカ貴族も驚いている。


 ってかフィーネ絡みかよ。



 それからマリーさんは俺を招待した理由をさらに詳しく話してくれた。


「クレアって言えばわかるかしら? ゼクト商会の娘なんだけど」


「聞いた話に出てきましたけど、俺は知り合いじゃないですよ」


 会おうとしたけど会えなかったからな。


「そうなの? 私はクレアと友達なんだけど、人づてに聞いたら彼女がエルフと仲良くなったって大はしゃぎだったらしいのよね。しかもそのエルフの主は妹と同じ5歳の子供だって言うじゃない?

 で、その話を聞いた私とお爺様はあなたに興味を持ったの」


「はぁ・・・・普通の子供でガッカリしました?」


 『THE 平凡』を絵にかいたような子供だからな。


「フフッ。いいえ、あなた面白いわよ。初対面の王族と会話が出来る5歳児は普通ではないんじゃない?」


 ご満足いただけたなら何よりです。


 俺1人なら間違いなくビビって何も喋れなかったけど、今は隣にユキが居るので平常心を保てている。


 ユキの隣って精神安定の魔術でも使っているかのように落ち着くし、絶対無敵なので目の前にいる第2王女様を殴っても無傷で助かる自信がある。


 絶対にやらないけど、絶対に。


「優秀な護衛が居ますから安心しきってるんですよ。じゃなきゃ倒れてますから」


「護衛って隣のメイドさんが?」


「フッフッフ~。優秀な護衛にして有能なメイド、正体不明の美少女ユキちゃんですよーーーーっ!!」


 そう叫んだユキは両手を上げて謎の決めポーズを取る。立ち上がった熊の威嚇みたいなポーズだ。


 今から訂正していい? ただのお調子者だったわ。


「ユキチャンさん?」


「あ、ユキです・・・・初めまして~」


 名前間違えられてやんの、バーカ、バーカ。普通自分に『ちゃん』付けしないんだから自業自得だぞ。




 俺の内心の罵倒とは無関係に王女様はユキにも興味を示した。


「へぇ。そんなに優秀なのね」


「照れますね~。ルークさん普段なんだかんだ私の事バカにしてますけど、本音は優秀だと思ってたんじゃないですか~。このこの~」


 ユキが俺の脇腹、には座らないと届かないので頭を肘で突いてくる。鬱陶しい。


「この様にムードメーカーな存在なので俺も緊張しないで済んでいるんです」


「良いメイドね。ウチのメイド達はどうも堅苦しくて」


 そりゃ王族に仕えるメイドが全員ユキみたいだったら変だろ。



「マリーさんも良い王女様ですね~。仲良くなろうとしてパーティ参加者全員に話しかけてますよね~?」


 ユキが褒めてもらったお礼に王女様の事も褒め出した。


 お前いきなり王女様相手に『さん』付けかよ、凄いな。せめて心の中だけにしとけ。それにしても黙々と食べてると思ったらパーティ会場を観察してたのか。


「ぶっ、無礼だぞ!」

「マリー様、いえ王家への反逆罪ですわ!」

「メイドの分際で! 場をわきまえろっ!」


 思った通り3バカから怒られた。


 流石に初対面で『さん』付けは不味かったな。


「すいません、コイツ本当にバカなんです。メイドとしては未熟なので大目に見てやってください」


「え~。この呼び方ダメなんですか~。私、誰にでも『さん』付けで呼んでるんですけど~」


 なんで俺が謝らないといけないんだよ・・・・。


 たしかにユキは全員『さん』付けで呼んでるけど、さすがに王族は無いわ~。



「まぁまぁ。公式の場じゃなければ大丈夫。あ、大人達の前ではダメよ」


 まさかの王女公認だと!?


 でも話のわかる王女で本当に良かった。俺もマリーさんと呼ぼうか。


「ほんっと助かります。ユキが公式の場に出るなんてあり得ないんで大丈夫です」


 ない、よな? 強力な魔獣を倒したとかで呼び出されたりしないよな?


「もしかして私が公式の場に出たらルークさん驚きます~?」


 ワクワクした様子のユキが恐ろしい質問をしてくる。


 ヤバい。コイツやる気だ。


「そ、ソンナコトナイヨ?」


 いかん、片言になっている。


 バレるな・・・・絶対にバレるな。俺が派手なリアクションを取ることがバレたら絶対に凄い事するヤツだ。


「でもロア商会が有名になればあり得ますよ~?」


「その時はフィーネが出席するからお前は出ない」


 なんのためにフィーネに名を売ってもらったのか。


 それはエルフなら何しても大丈夫な世界なので、ロア商会の代表者として公式の場に出てもらうためだ。



「ロア商会って石鹸や冷蔵庫を作ってる、例の?」

「石鹸っ! あれは素晴らしい商品でしたわ」

「なんだ。名産あるんじゃないか」


 マリーさんと話していたら3バカから俺とロア商会が認められて、評価が急上昇したっぽい。


「その辺の話も明後日詳しく聞きたいわね。妹も出席するから一緒にね。

 また会いましょう」


 そう言ってマリーさんは別の出席者へ挨拶に行ってしまった。



 その後、俺はずっと3バカからロア商会について質問されていた。


 貴族ってヤツは将来性のある人にはすり寄っていくスタイルらしい。




 やっと1日目のパーティが終わって部屋へと戻った俺とユキは、ベッドで横になりながら今日の反省会をしていた。


 今日はマリーさんに会えたのが唯一の収穫かな。


「明日もこのパーティに参加するのか~。俺はもうヘトヘトなんだけど」


「しかも明日は朝からなので、今日の倍以上ありますよ~」


 ・・・・マリーさんに妹さんへのプレゼント渡して帰ったらダメかな?

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