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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五章 アクア編
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閑話 後日談

 アランに告白したエリーナは、誰からも反対されることなく順調に交際をスタートした。


 あのパーティからの帰り道でアランが喜びのあまり絶叫し、踊り狂った挙句、コケて膝を怪我したのはマリクだけが知っている秘密だ。


 その数年後、2人はめでたく結婚して3人の子宝にも恵まれた。



 そして現在。

 お土産のワインを飲みながら深夜まで思い出話をしていた3人は眠くなったので解散した。


 寝室でエリーナは、最初にアランと出会った庭での事を思い返して、心の中でお礼を言う。


(あの時アナタに会えて本当に良かった)


 あのパーティがなければ自分はまた違う人生を歩んでいただろう。


 そしてその人生が今より幸せになることはない。


「え? エリーナ何か言った?」


「フフフフ、何でもないわよ! どりゃーーーっ!!」


「うわっ!? どうしたのさ」


 まるで照れ隠しでもするように、やんちゃだった頃を彷彿とさせる口調でアランに襲い掛かるエリーナ。


 その後、エルブライト夫妻の寝室からはドタバタと激しい物音がしたが、それが子供のじゃれ合いなのか、夫婦の営みなのかは2人にしかわからない。





「ではこちらでお待ちください」


 私が案内されたのは領主様のお屋敷にある客室。


 別に権力者への献金だとか、特別に親しくするためってわけじゃなくて、知り合いにアクアのお土産を渡すために来ただけだ。


(相変わらず貴族って変なところに金掛けるわよね~)


 私が客室にある調度品を眺めていたら、目的の人物はすぐに現れた。


「最近羽振りのいいエリーナさんが今日はどのようなご用件ですの?」



 『エリザベス=エドワード』

 アランに振り向いてもらえなかった彼女が結婚相手に選んだのは領主の息子である『バッツ』だった。

 エリーナとアランの結婚で自棄になったエリザベスだが、エリーナ達から勇気をもらったバッツの告白に承諾して領主夫人になったのだ。



 私がお土産を渡したい相手っていうのは彼女だ。


 相変わらずのドリルヘアーね。アレをストレートにしたらどれだけ長いのかしら?



 あの告白の後も色々あったけど、決して仲が悪いわけではない私とエリザベスの交友関係は10年以上続いていた。


 アランのためを想い、貴族に向かない私に活を入れていたというのを知ったのは結婚した後の事だ。どうやら口下手な女性だったらしい。



 まぁそんな事より、折角持ってきた品々を手渡さないとね。


「先日アクアへ行ったから、そのお土産を渡しに来たのよ。これ、名産のワインと近々流通する100%塩。

 この前『私が』料理してアラン・マリクと一緒に美味しく食べたの。エリザベスは料理出来ないでしょうから、使用人にでも作ってもらって」


 貴族で料理出来る人ってどれだけ居るのかしらね?


「(ピクッ)あら、それはそれはご丁寧に・・・・なんでも、料理がお上手なエリーナさんの一人娘のアリシアさんは学校で生徒を料理しているそうですわね。被害に遭った生徒からは『破壊者』と呼ばれてるとか。親子で料理上手なんて羨ましいですわ~」


 は? お土産を受け取ったエリザベスが喧嘩を売ってるようにしか聞こえないんだけど?


 あとアリシアの学校生活について触れないでもらえるかしら。一切否定できなくなるから。っていうかなんで知ってるのよ? 調べたの?


「(ピクッ)ウフフフ。そうでしょ? 我が家はみんな努力家なのよ。アランに振り向ていもらえなかった誰かさんと違ってね。

 私の知り合いに10年以上も片思いしてた人が居るのよね~。告白しないままだったらしいけど、もっと努力するべきだと思わない?」


 もちろん目の前のドリルの事だけど。


「(ピクピクッ)オ、オホホホホ・・・・ど、努力家ですって? 面白い冗談ですわ。お金に困るとすぐ泣きついてくる貧乏貴族が少し成り上がったぐらいで偉そうに吠えますわね。

 そう言えば、先月アリシアさんが・・・・・・」


 今にも喧嘩が始まりそうだけど、これが私達のコミュニケーションなのだ。決して仲が悪いわけではない。


 ほら、エリザベスの後ろで控えてる侍女も何も言ってこない。きっと私とエリザベスの言い合いに慣れてる人なのね。前回居た執事は途中で泣き出したわよ。




「お母様、誰ですの?」


 今まさに私とエリザベスが掴み合いを始めようとした時、客間にドリルヘアーの少女が現れた。


「あら? あなたの娘さん? そっくりね、特にドリルが」


 彼女も10年後には、私がエリザベスと初めて会った時ぐらいのそれはそれは立派なドリルへと成長していることだろう。



「はじめまして。わたくし『アリス=エドワード』ですわ。

 来年から学校へ入学しますのよ」



 へぇ、ルークと同い年の娘なんて居たのね。


 大抵の貴族がそうだけど、子供が入学するまでは自慢話をすることがないから存在すらしらない事も多い。で、入学したら勉強で一番になったとか、新しい魔術を覚えたとか、主にランキングに関することを散々自慢するわけだ。



 その後、娘の前にも関わらず大人げない態度を見せ続けたエリザベスを相手にして、私は領主邸を後にする。


「お土産に関してはありがとうございます、と言っておきますわ。エリーナさんがもう少し大人しくなれば文句はありませんでしたけど」


 ご自慢のドリルヘアーを使って人の事を縛っておいて何をほざいてるのかしら。アレはもう立派な武器ね。


 今度来るときは懐に小刀でも忍ばせておいて、伸びて来たドリルを切り裂いてやりましょうか?




 現役を退いて十数年経っているのでエリザベスといい勝負をしてしまった私は、体を鍛えるべきか本気で悩みながら家へと帰って来た。


 すると庭でルークが、倒れているニーナとヒカリに抱き着いて何かしていた。


 どうやら2人が運動で疲れているところにルークが通りががったらしい。


「母さんおかえり~。あ、これ? いや~、血の繋がりはなくても同じ生活をしてたら姉妹として尻尾の感触が同じになるか調べてたんだ。でもやっぱり個性が出るね。ニーナはコリコリしてて、ヒカリはフワフワしてるよ。

 いや俺はどっちも好きなんだけど、やっぱり感触に合った専用シャンプーを作るしか・・・・ってどうしたの?」


 私は息子の変態趣味に呆れてしまった。


 前々から知ってはいたけど、何故かルークは獣人の特徴である耳と尻尾に過剰なまでの興味を示して、いや5歳にも関わらず性的興奮を覚えていると言っても過言ではない。今だって「ハァハァ」と興奮しながら話している。


 たまに「ロア商会も獣人パラダイスを作るために起ち上げたのでは?」と思う時がある。


 田舎のヨシュアにだって獣人専門店というものがあり、そこでは獣人の生活に便利な『毛の手入れグッズ』や『爪とぎ』等のアイテムが数多く販売されていてリリ達も愛用している。


 そして何故か、人が身に付ける獣耳や尻尾も売られていた。


 たぶんルークと同じような性癖を持った誰かが発明したのだろう。


(もしもお嫁さんに着用させるようなら、私は生まれて初めて子供を全力でビンタ、いや殴るかもしれない・・・・比喩的表現でもなんでもなく、全魔力を込めて殴り飛ばすかも)


 その時、私は自分を抑える自信がない。


 でも現役の頃より強力な一撃をお見舞いする自信はある。



 アリスちゃんはエリザベスとは似ても似つかないほど礼儀正しかったのに・・・・なんでルークはこんな子に育ってしまったのかしら? 一体誰に似たの?



 こんな調子で学校に通って問題を起こさないでもらいたい。ただでさえアリシアの事で先生方から睨まれてるのに・・・・。


「ルーク。あなたと同い年でも貴族としての自覚を持った子も居るのよ? そもそも・・・・・・」


 私はその場でルークに説教を始めた。



 まぁ私の言えたことじゃないけど、子供達には貴族として立派に育ってほしいわね。


 アリシアは無理。だって昔の私と瓜二つなのよ? 絶対にパーティ嫌いで、会話もせずに護衛や武器ばっかり見てるに違いないわ。


 レオ、頑張ってね。あなたがオルブライト最後の希望よ!



 そんなどうしようもない家族だけど私は今、幸せです。

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