ある選挙管理官の悩み。(投票前にご一読ください)

ほとんど実体験です。

まぁ気楽にご一読ください。

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「へぇ。お前、今度の選挙で管理官をやるんだ。」

「…まぁこれで三回目だよ。

　短期バイトとはいえ週末は臨時の公務員だ。」

「でも大変だろ。不正を見抜く重要な仕事だからな。」

「いや…実にくだらない悩みがあってさ。。」

　くだらないこと？？

　国政を左右する選挙管理の何がくだらないんだ？？

「お前さ、選挙の案内はがき、持ってるか？」

「ああ、これか？？」

「そこの性別欄を見てみな。」

「≪男・女≫って書いてるけど…印とかないな。。」

「ああ。その欄には投票者の性別は書いてないんだ。」

「はぁ？？じゃあこの欄に何の意味がある？？」

　詳しく聞いてみると…

　投票を終えた人の案内はがきは男女別に管理される。

　男女別の投票率を知る目的らしいのだが…

　なぜかその性別は、

　《選管の職員》が、

　《投票者の見た目》で判定して、

　《性別欄に◯印を手作業で》書き入れるとやらで…

「なんだ！？なぜそんな面倒なことをするんだ？？

　メチャクチャ不正確だしミスも出るぞ。」

「…セクシャルマイナリティーへの配慮だって。。

　戸籍上の性別を書かれたくない人がいるらしい。」

「けど…それで運用できるのか？？」

「…そりゃ性別なんて見た目で大抵は分かるさ。

　けど数十人に一人くらいは不明瞭な人もいるんだ。」

「…だろうな。」

「投票に来る人は一会場で数千人だぜ。。

　これを13時間で処理するんだ。そうなると、、」

「…仮に分からないのが100人いるとして…

　10分に一度以上は無駄な作業が発生するのか。。」

　そう…簡単ではないのだ。

　見た目性別不明な人間は意外な程に多い。

　じゃあ分からなければどうするのかというと…

「まず名前を確認する。●郎とか▲子なら決まりだ。

　でも■美は男でもいるから決め手にはならない。」

「…名前でわからなければ？？」

「一緒に来た人との間柄から推察するんだ。

　夫婦とか同性のグループならわかりやすいよ。」

「でも一人で来る人も多いだろう？？」

「話しかけるんだ。声と話し方で大体はわかる。」

「…それでもだめなら？？」

「注意深く見るんだ。決定的な証拠を…」

　…なんか探偵みたいだな。

　男ならば喉仏、ひげ、体毛など…

　ただ男物の服装だけでは判断が難しい。

　女ならば胸で判断できれば一番だが…

　化粧、ネイル、靴、時計、カバン、服のあわせなど

　女物が一つでもあれば決まり。

　なぜなら女物を身に着ける男は極めて少数だから。

「でもな…大切なのは正確に見極めることではない。

　申し開きのできる材料があることなんだ。」

「どういうことだ？」

「例えば女装男を女と間違えても問題はない。

　判断に正当な根拠があるからな。

　けど何となくで判断して間違えたら…ダメだ。」

「そんなに厳しいのか？？」

「ああ。最悪の場合は公務員の不祥事だ。

　マスコミは重箱の隅でも叩いてくるからな。」

　…酷い話だな。

　間違えたって投票結果に何の影響もないのに…

　公職者のミスは即不祥事というのが常識なのか？？

「それで…どういう人が難しいんだ？？」

「普段から間違えられやすい人はまだマシさ。

　たとえば大柄でゴツイ女性なら、自分から意識して

　女性的なアイテムを身につけているから。」

「じゃあ逆に小柄で華奢な男性は？？」

「それも同じだ。

　むしろ小柄で細身ならば女性の方が厄介だな。。

　普段、男性と間違われない人の方が…」

　なんでだ？？

　それじゃわかりやすいんじゃないのか？？

「なぁ考えてみな。小柄で華奢で体毛の薄い男が

　どうやったら一目で男性だとわかる？？」

「…短髪にして…男物を着てアクセサリをつけず…」

「では同じ特徴の女性とどう区別する？？」

「…そりゃ雰囲気でわかるだろ？？」

「言ったはずだ。何となく判断してはいけないと…」

　なるほど…そういうことか。。

　申し開きをするに十分な証拠が見つけられなければ

　公的には判断ができないんだ。

　極論すれば真っ赤な口紅を塗った和●アキ子よりも、

　すっぴんの剛力●芽の方が難しいってことになる。

　小柄で女顔だからと油断して短髪スッピンにしてる

　ユニクロの女性の多くはこれに該当する。。

　…ちなみに隣の席には投票者の名簿がある。

　それを確認すれば答えは分かるのだが…

　本人の目の前であからさまな確認行為はできない。

　確認したこと自体が叩かれかねないらしいから。

　けどそう考えると…

　もう一つ問題があるのでは？？

「じゃぁ…どうやって本人特定する？？

　性別さえ隠すなら見極める要素などあるまい。。」

「ああ。本人の名前以外は…

　生年月日ぐらいしか確認する方法はないよ。。」

「でも…年齢なんてわかるのか？？」

「…美魔女程度なら首筋や目尻などで大体は分かる。

　見た目年齢20代なんて騙される方がウソだけど…」

「…けど？？」

「…自覚のない若作りは厄介だ。。

　年齢相応でない自然な服装の人間は…

　見極めに本当に苦労する。。」

　そういうことか。。

　自覚した年齢詐称や性別詐称より…

　見極めるのに決定的な証拠のない自覚のない

　人間の方が管理官には妨げになるんだ。。

　不正投票をする気がないのなら…

　投票日一日程度は…

「なぁ、哀しいと思わないか。。

　俺たちは公正な選挙のため仕事をするんだ。

　それなりの日給を税金から頂いてな、、

　それがこんなくだらない雑務もしてるって…」

「…じゃあなぜ選挙用紙に性別を書かない？？

　その他の個人情報を書いて照合を義務付けない？？

　住民票に書いてるんだから簡単だろう。。」

「そう…簡単に解決できる問題だ。。

　余計な負荷が減ればそれだけ業務に集中できる。

　それで一件でも不正を減らせるのなら……」

　…俺だってもっと意味のある仕事をしたい。

　選挙管理官のその言葉が深く突き刺さった。。

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選挙は公的な行事です。

公的な年齢・性別その他を現した格好で

投票所に足を向けてください。。

ちなみに作者は公務員ではありません。