ダイイチワ
神様とは何か。神とは人間が作り出した概念である。
つまり、神は、人に造られた物なのである。神が人を造ったなんて言うのは間違っている。
人が神を崇めるために造り出したのだ。そして、僕は人間によって造られた神様だ。
僕は神様だから、何だって出来る。遣って退ける。ただし、私は人間に手を出せない。手を上げる事が出来ない。人間によって、都合のいいように造られたからだ。
僕は人間に望まれるまま、自分の地位に甘んじて居た。甘んじて来た。
ただし、人間は、自分の都合のいいものだけを造る訳ではない。自分にとってどう考えても都合の悪いものまでも、彼らは造り出す。僕には理解など出来ないけれど、それでも彼らは造り出してしまう。造り出してしまった。馬鹿なものだ。
結果、人間は都合よく僕を宛がった。押し付けた。彼らの造った災厄を、彼らの造った僕に如何にかさせようとした。困ったものだ。まあ、僕ならば遣って退けて見せるだろうが。
「僕は神様だ。僕は取りあえず悪である存在の悪魔を滅ぼしてやろう。」
死神を目の前に、僕は平静で言い放つ。神である僕がこう言った時点で、悪魔はこの世界から滅び、消え去る。二度と甦ることなどない。僕は断言する。
「へぇ、怖いねぇ神様。そうやって人間の考えるままに私の消してしまうのかい?」
「当然だ。僕は取りあえずは人間の思うがままに動いてやろうと考えているからな。」
僕は言いながら死神の首を掴み上げ、握り潰す。圧勝だ。つまらない。
そして僕は僕を作り出した、どこの誰だが知らない、たった一人の人間の思想によって、人に落とされた。そこから神様である僕の話は始まる。
神の数は、神を本気で思想する人間の数だけ創造される。それが悪魔であれ、僕のような神であれ、考えた人間の思想次第だ。ただし、神は本来人の世界には来ない。理由は簡単だ。
神を本気で信じている思想家は、神を崇めているからだ。人に落としてやろうだなんて、そういった人種の人間は考えない。そんな烏滸がましい考えに至らない。
それが人間だ。神を想像する唯一の存在だ。だが、僕を想像した人間。「人柱貝柱」は違った。僕を人間として、この世界に造り出した。有りっ丈の思想で、強力に仕立て上げた僕を、本気で人間に落とした。
「……。何だお前は。僕がいるこの場所はなんだ。」
「俺が神であるお前を、ここへ呼び出した。」
「……そうか、なるほど。そういう事か。」
神である僕に、考えて知り得ない事など存在しない。状況は理解した。
「流石、俺が造った神様だ。」