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猫の国  作者: ねこじゃ・じぇねこ
EPISODE【1】 ホーム
5/35

4.

 計測器の赤い点滅が、ずっとわたしの頭の中で再生されている。意味もなく、ちかちかと点滅し続ける光景。それとも、意味はあるのにわたしの頭が理解していないだけなのだろうか。ちかちか、ちかちか、頭の中で点滅し続ける赤い色。

 『赤い点滅、綺麗だったね』

 バツの声が、わたしの耳元で聞こえる。いや、頭の中で? それとも、これは幻聴なのかな? バツはいつもどこからわたしに話しかけているんだろう?

「もう、聞いているの?」

 モモに覗きこまれて、わたしはやっと彼女に話しかけられていたことに気がついた。

モモの緑色の目がわたしをじっと見つめている。ビー玉のように綺麗。猫の目ってどうして綺麗なんだろう。って、そんな事考えている場合じゃなかった。

「ごめん、モモ、聞いてなかった」

 正直にそう言うと、モモは大きな溜め息をついた。いつものことだ。わたしはよく気付いたらぼんやりとしていて、他人の話を聞き逃してしまう。特に一緒にいる時間が長い分、モモの話を聞き逃してしまう事がこれまでにも多々あった。まあ、大体は、聞き逃したままでよかったって思うような、小言なんだけれども。

「まったく、あなたってば、いつもそうなんだから」

 モモはおばさんみたいな口調でそう言うと、しっぽをぱたぱたと振った。そう言えば、モモって何歳くらいなんだろう? 今の今まで考えたこともなかった。

「ごめん、ごめん」

 モモの小言を軽くかわして、わたしは話を促した。

「で? なに?」

「今度の土曜日、遊びに行くって言ってたでしょう? 何時くらいに帰ってくるの?」

 そうだった。今週の土曜日は授業がないから、アンナやヒメと街に遊びに行く約束をしていたんだった。魔法学校の生徒ってことを忘れて、町を歩いている他の女の子たちと同じようにおしゃべりして、買い物を楽しんだりして。いつも楽しみにしている日だった。それなのに、モモに言われるまですっかり忘れていたなんて、どうかしている。

 『さっきの補習の小テスト、ボロボロだったもんね』

 バツのからかい半分の声を軽く無視して、わたしはモモに言った。

「門限があるじゃない。それはちゃんと守るよ。あとは……んー……未定かなぁ?」

「未定って」

「だって、そんなきちんと計画立てて遊ぶわけじゃないしさ」

「そりゃあ、そうかも知れないけれど」

 モモはどこか不満そうな口調でそう言った。こういう時のモモは、わたしと同年代にも見える。本当にこの猫は、何歳なのだろう?

「ともかく、門限までは出かけているから、モモも一日ゆっくりしたらいいんじゃないの?」

 思えばモモは、働きっぱなしなような気がする。わたしが学校に行っている間は、サポーター猫達で会議をしているというし、そうでない時間も、教師との打ち合わせや面接とかがあると聞いたことがある。ちなみに、わたしの話をしているはずなのだけど、一切わたしには教えてくれない。聞いても、「別に、たいしたこと言ってないわよ」とはぐらかされてしまうのだけど、気になって仕方がない。

「言われなくてもそのつもりよ。いつも働き詰めなんですからね!」

 一日休んだら、この刺々しさも少しは緩まないかな。


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