4.
計測器の赤い点滅が、ずっとわたしの頭の中で再生されている。意味もなく、ちかちかと点滅し続ける光景。それとも、意味はあるのにわたしの頭が理解していないだけなのだろうか。ちかちか、ちかちか、頭の中で点滅し続ける赤い色。
『赤い点滅、綺麗だったね』
バツの声が、わたしの耳元で聞こえる。いや、頭の中で? それとも、これは幻聴なのかな? バツはいつもどこからわたしに話しかけているんだろう?
「もう、聞いているの?」
モモに覗きこまれて、わたしはやっと彼女に話しかけられていたことに気がついた。
モモの緑色の目がわたしをじっと見つめている。ビー玉のように綺麗。猫の目ってどうして綺麗なんだろう。って、そんな事考えている場合じゃなかった。
「ごめん、モモ、聞いてなかった」
正直にそう言うと、モモは大きな溜め息をついた。いつものことだ。わたしはよく気付いたらぼんやりとしていて、他人の話を聞き逃してしまう。特に一緒にいる時間が長い分、モモの話を聞き逃してしまう事がこれまでにも多々あった。まあ、大体は、聞き逃したままでよかったって思うような、小言なんだけれども。
「まったく、あなたってば、いつもそうなんだから」
モモはおばさんみたいな口調でそう言うと、しっぽをぱたぱたと振った。そう言えば、モモって何歳くらいなんだろう? 今の今まで考えたこともなかった。
「ごめん、ごめん」
モモの小言を軽くかわして、わたしは話を促した。
「で? なに?」
「今度の土曜日、遊びに行くって言ってたでしょう? 何時くらいに帰ってくるの?」
そうだった。今週の土曜日は授業がないから、アンナやヒメと街に遊びに行く約束をしていたんだった。魔法学校の生徒ってことを忘れて、町を歩いている他の女の子たちと同じようにおしゃべりして、買い物を楽しんだりして。いつも楽しみにしている日だった。それなのに、モモに言われるまですっかり忘れていたなんて、どうかしている。
『さっきの補習の小テスト、ボロボロだったもんね』
バツのからかい半分の声を軽く無視して、わたしはモモに言った。
「門限があるじゃない。それはちゃんと守るよ。あとは……んー……未定かなぁ?」
「未定って」
「だって、そんなきちんと計画立てて遊ぶわけじゃないしさ」
「そりゃあ、そうかも知れないけれど」
モモはどこか不満そうな口調でそう言った。こういう時のモモは、わたしと同年代にも見える。本当にこの猫は、何歳なのだろう?
「ともかく、門限までは出かけているから、モモも一日ゆっくりしたらいいんじゃないの?」
思えばモモは、働きっぱなしなような気がする。わたしが学校に行っている間は、サポーター猫達で会議をしているというし、そうでない時間も、教師との打ち合わせや面接とかがあると聞いたことがある。ちなみに、わたしの話をしているはずなのだけど、一切わたしには教えてくれない。聞いても、「別に、たいしたこと言ってないわよ」とはぐらかされてしまうのだけど、気になって仕方がない。
「言われなくてもそのつもりよ。いつも働き詰めなんですからね!」
一日休んだら、この刺々しさも少しは緩まないかな。




