3.
目を覚ましてから数日後、復帰してすぐの授業が魔法実技だったのは、とてもテンションが下がる事態だった。けれど、思っていたよりも、皆の進みは遅くて、相変わらずといった感じだった。補講を受ける事になるのも、だいたい同じメンバーなんだろうなって思いながら、わたしはいつもの計測器を手に取っていた。
「ちょ……ちょっと、危ない!」
その時、カガリの甲高い声が響いて、わたしははっと身構えた。カガリがこんな声をあげるのは、だいたい、ホムラがまた《火》を暴走させてしまった時くらいだ。グラウンドを見渡せば、その予測が正しい事が証明される。
クラスメイトは、相変わらずだ。
行方不明者が出たからといって、それに関わらない者は、いつもと全く変わらない。《白》についているサポーター猫のことも、アリスやアキラのことも、皆、忘れてしまったのだろうかって思う程、いつもと変わらない。
『忘れるわけがないよ。だって、友達だよ』
行方不明者のことも、わたしとエリカが猫の国を旅した事も、ホームの先生達はちゃんと考えている。だからこそ、わたし達生徒は何も出来ないまま、魔法界の大人たちがどうにかするしかないんだってことも、理解しているつもり。
でも、いいんだろうか。
こうやって、のんきに授業を受けていて。
『修行をしないと、モモを捜しに行けないよ』
そうだね、バツ。
そうだね。わたしはその時を待ちながら修行をするしかないんだ。猫の国で学んだ事。それは、ホームがどれだけ安全なのか。外の世界がどれだけ危険なのか。そして、魔法がどれだけ大変なものなのか。
わたしもエリカも無事に帰る事が出来たけれど、もしかしたら、それすらも叶わなかったかもしれない。そう考えると、魔法の熟練がどれだけ大事なのかが、分かってくる。
バツ。
わたしね、また夢を見たんだ。
バツも見たかもしれないけれど、また異世界を冒険する夢を見たんだ。
それがいつになるかなんて分からないし、いつになっても正夢にはならなかいかもしれないけれど、バツは言ったよね。
信じるよ。
『信じて待つんだ』
また、モモを捜す旅が出来る事を。
そして、確かめるんだ。
猫の国で分からなかった事を。
モモたちサポーター猫はどうして消えてしまったのだろう。わたしとエリカを助けてくれた光と闇はなんだったのだろう。カチュア国はどうなったのだろう。アキラとアリスはどうしていなくなったんだろう。
確かめるんだ。
それを確かめられる日が来る事を信じるんだ。
『そうだよ。それでこそ、マル』
ありがとう、バツ。
『待とう、マル。その日を』
新たな旅立ちの日を。




