1.
ぼんやりと、夢を見ていた。
なんの夢かなんて聞かれても、誰かに教えることが気恥ずかしい夢。だって、夢っていうものは、無秩序で、とりとめもなくて、子どもっぽい考えがそのまま現れていたりするのだもの。夢は、冒険する夢。
一人で? いいえ、二人。わたしとバツという少年と二人。バツの姿はわたしには見えない。見えないけれど、一緒に居る。わたしとバツはそういうものなんだ。
わたしの名前はマル。
わたしは冒険者マルになって、たくさんの異世界に行く夢を観た。バツと一緒に感じて、バツと一緒に学ぶ。まだまだ未熟なわたし達だけれど、二人ならば大丈夫。二人ならばやっていける。そう信じて、それを力にして、わたし達は先へと進んでいく。
そういう夢だった。
どうしてこんな夢を観たのかな?
『夢は心の反映。もしくは、何かのお告げ』
今の声は、バツの声。バツは声しか聞けない。だけど、傍に居るのは確実。わたしとバツはいつも一緒。でも、わたしとバツが一緒に居る事を知っている人は、あまりいない。言いふらしても、信じて貰えないから。気持ち悪いって思われちゃうから。
『夢は理想の姿。ここなら何でも出来るんだよ』
それなら、バツ、姿を見せてよ。わたしに姿を見せてよ。
一人じゃない。わたしにはバツがいる。それはとても幸せな事。けれど、独りを感じることはある。どうしてだろう。なんでなんだろう。なんでわたしは独りを感じることがあるのだろう。その疑問の答え。その一つが、バツだった。
わたしは、バツを見たい。もっとバツを感じてみたい。
『いつもマルと一緒に居るよ』
バツはそう言って、うろちょろと動く。わたしのすぐ傍に? それとも、遠くに?
姿が見えないと、分からない。
『とにかく今は、目を覚ましたらどうかな?』
目を覚ます? どうしてだろう。
その時、わたしは遠くで誰かが呼んでいるような気がした。マル、マル、と、声が響く。冒険を続けていたこの夢の空間で。いや、そうではなくて、もっと違う場所で。もっと身近な場所で。もっと……。
「マル!」
はっと目を覚ます。ああ、ここは。……教室?
「マル?」
寝ぼけ眼のわたしを睨んでいるのは、このクラスの担任の先生。若い女の先生。
「睡眠学習もほどほどにしなさい」
先生は呆れ顔でそう言った。
ああ、やってしまった。
そう分かったのは、クラスメイト達がくすりと笑った後だった。




