Α
わたしは、どうして生まれてきたのだろう。
世界をこの目で見つめて、世界をこの心で感じるようになった頃からずっと、わたしは独りだということを理解していた。
家族はいた。お母さんも、お父さんもいた。兄弟もいたし、親戚もいた。けれど、彼らは皆、わたしとは何かが違った。わたしは、きっと、何かの間違いで生まれてきたんだろうっていつも思っていた。
コウノトリが運び間違ったの? キャベツ畑で摘み間違ってしまったの? それとも、わたしは違うところからやってきたの?
わたしが誰かの心を感じて、それを話す度に、家族の眼差しは冷たくて、鋭くて、でも、わたしは何も感じなかった。ただ、空虚な心を家族に向けて、冷やかな視線、蔑むような言葉、わたしを否定する家族達の一切の感情を、ただ見ていた。
それが絶望に変わったのは、わたしが念じるだけで物を動かせるようになった時。
かっとなったわたしが、怒りの感情だけではさみを投げつけて、妹の手に怪我をさせてしまった時。
ああ、この人達は、わたしとは違う生き物なんだ。
絶望も、すぐに空虚に吸い込まれて。子どもながらに理解して、わたしを社会から隠そうとする家族達を、ただ見ていた。わたしを棄てる場所を必死に探す家族達を、そして、いい棄て場所を見つけて、そこにわたしを置いて振り返りもせずに去っていく両親だった人達の背中を、ただ見ていた。
わたしは独りなんだ。
『君は独りじゃないよ』
わたしは生まれてきてよかったのかな?
『生まれてきちゃいけない人なんていないよ』
世界をこの目で見つめて、世界をこの心で感じるようになった頃からずっと、わたしの心には、わたしを励まし続けるたった一人の少年が住み着いていた。
あなたは、誰?
あなたは、わたし?
その答えを、彼はくれなかった。
わたしはマル。
あなたは……バツ。
その時、わたしは初めて、バツの声を聞いた。




