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・第七話  もはや何がなにか分からない ~Je ne comprends pas ce qui est cela qui plus~

寝起きなんて、爽快に気持ちよく起きることが出来るのとそうではない時がある。

今日は後者だ。


まぁ、昨日あんな目に遭えばそうであっても合点承知がいく。


あのしりとり (?)の後の掃除はきつかったなぁ。


そして、今日に至るわけだ。朝はシズナ少尉の必殺下半身大事な所チョップで強制覚醒させられた。


その後、乗組員全員に召集命令が出て格納庫に集合した。


これほど眠いというのに朝から何の嫌がらせだまったく。


「というわけで、今回集まってもらったのはそれぞれ自己紹介をしてもらおうと思ってな、

それに将官に昇格した者もいる」


 そうやって朝から格納庫に大声を響かせるのは新隊長であるシノハラ(父)だ。


「さぁ、どんどん自己紹介していけ」


 そう言うとまだ若い20代くらいの隊員達が次々と自己紹介を済ませていく。


しかし彼らは整備兵的な立場なのでそこまで親密にはなることはないだろう。


実質、この第0艦隊は戦艦一隻、巡洋艦2隻程度で編制されているそうだがもちろん巡洋艦乗組員とは面識はなく(むしろ戦艦に乗って言われるまで気づかなかった)この蝦夷艦内でもシズナやササナカやシノハラ隊長、司令室のレーダー管制員などぐらいしいか挨拶をしていないので面識はないといってもいい。


とりあえず暇なので立ち寝をしていると。


「おい、次はお前だ」


 そう言われて気づくと残りは僕とササナカシズナしか残っていなかった。


と思いきや、僕が順番に並ぶ列の一番後ろにもう一人。


彼女はだれだ。まったく見覚えが無いため妙な不安を募らせる。


「ハシモト レンです。階級は……しょう……少尉です一応」


「ササナカ リョウだ! 階級はレンちゃんと一心同体! よろしくッ」


「シノハラ シズナっていいます! 階級は残念なことに少尉なんだよ……ッチ!」


 なんか舌打ちが聞こえたがまぁ気にしないでいこう。


とりあえずの自己紹介は済ませ、遂に謎の女が自己紹介という壇上に立った。


仁王立ちで。


その女の容姿はなんともいえない美しさ、ブロンドの髪に妖艶な顔立ち、バラを連想させる雰囲気があり、なおかつ冷酷さを感じられる。


その女の第一声は


「私はこの艦の艦長を務める、アカニシ中将だ」


「あぁ、あの人が艦長か、なんかそんなオーラでてるな」


「やっぱそう思う? レンちゃん」


 ササナカが割って入ってくる。


「なんかカッコいいな女の艦長って、僕てっきりシノハラ大佐が艦長かと思ってた」


「そうなんだ?」


「ん? あぁ、シズナ少尉もいたんですかぁ、いやぁ、ちっちゃイから見えなかったなぁ」


「わわ! いくら同じ階級だからって調子のるんじゃないよ!」


『お前が言うな!』


 ササナカと珍しく息が合った。


「いじめだよね。これいじめだよね」


「はいはい、ちっちゃイの艦長様のお言葉を聴かなきゃ」


とりあえず面倒臭いので適当にあしらっておいた。


艦長の言葉に再び耳を傾ける三人。


「私のサポート役となってくれるシノハラ大佐には感謝しているぞ。ではみんな――」


 (プるるるるるるるる)


携帯の着信音?


「おっとすまない……私のだ。もし私のではなく貴君らのであったら鹿せんべいを要求していたところだな」


 勝手にしてくれ、もう……


そして携帯で喋りだす自称艦長。


「ふん……ふんふん……ん? なんだとぅ! い……犬を狩っただと!? いや……犬を飼ったか、や


やこしいなぁ。しかしお前、犬を飼うとは生意気な! 大将の分際で――」


 いやそれならあんたより階級上だから。


「――ふざけるな、私にはお金だ無いんだ! 犬など飼えん……自慢だろぅ自慢なんだろ! いいさ私には愛しのハムスターぷーちゃんがいるんだからな! いいですもんねぇ、ぷーちゃん8百円ですぅぅ! 維持費ほとんどかかりませんよーだぁぁ! なんだまったく」


 艦長のオーラぶち壊しだった。


「――本題に戻そう。みんな、弐本国に忠誠を尽くし、それぞれ全力をもって極秘任務を遂行すること、そして仲間の武運を祈ることだ。でないと、この艦には乗せてやらん。それが第0艦隊だ」

 かっこいいのか何なのかよくわからない艦長様だった。





「準備は進んでるかいシャルロット」


 一見整った顔立ちの右頬には大きな傷。目をかろうじて避けてはいるもののえぐる勢いの傷だ。


「はい、シルフ様、ただいまターゲット第0艦隊弐本海沖洋上70海里を航行中。ターゲットは鬼駕島まで残り一時間といった所です」


 ふん、と鼻を鳴らしてシルフという男は言う。


「この右の傷を負わされた痛みは必ず奴等に返してやる。俺はこの傷のおかげで全てを失ったんだからな」


「はい、承知しておりますシルフ様」


 そうやって答える少女はまだ高校生くらいの幼さ。


「じゃぁ、奴等がその島に着いたら報せておくれシャルロット」


「承知いたしました」


 その少女の瞳に赤が染まる。


「かの憎き弐本の仇を我等に」


「その仇討ち。貴君に捧げようぞ。まぁ、なんかあったらまた言ってシャルロット。この合言葉も慣れないけど、雰囲気作りにはいいかな」


「シルフ様、この合言葉は必要でないと?」


「いや、これが君の兵器の解除パスワードだからね。これがあるからこそ君は目覚められる。そうだろシャルロット」


「はい、仰せの通りで御座います」


「じゃぁ俺はちょっと寝るから」


「はい、承知いたしました」


 彼女の瞳はさっきよりもよりいっそう紅蓮の赤に染まっていた。


そうやって奥の部屋に消え行く男の背中に彼女は呟く。



「シルフ様のため、奴等の細胞一つこの世に残しません」


そう、全てはシルフ様のため。

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