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木の床に毛布を敷いて横たわり、そのまま一回転すると、毛布に包まれた僕の完成だ。床は硬く冷たいが、彼女から毛布を貰ったという事実だけでとってもあったかい。
天窓から光が差し込み、僕とベットで寝ているお姉さんを浮かび上がらせている。
外には悪魔が飛びまわっていた。真っ黒くて、赤い瞳をギョロギョロさせて、とても醜い。知識量は人間よりも多い癖に。それを組み合わせて使用する事が出来ない。
「カリカリ五月蠅いな」
窓を引っかく黒い生き物に、怒りをぶつける。僕の力の方が強いから、一瞬下がるがまた前に出てこようとする。馬鹿な奴らだな。
あいつらは、お姉さんが張った結界があるから、中に入って来れないみたいだ。
さすが僕のお姉さん。この細い身体に、こんな高等な術を身に付けているなんて。
まあ、あの悪魔たちが入って来たとしても、僕が倒すけど。だって、僕は彼女の悪魔だ。
とりあえず、あの邪魔な奴らは滅ぼそう。お姉さんの眠りの妨げになるから。目を瞑って、開くとそいつらは跡形もなく消えていた。
これでよし。
寝返りを打てば、視界にお姉さんが入ってくる。頬が緩んでいくのを感じる。
二十歳くらいだろうか。まだ幼さを残した顔はいつも皺を寄せている。
服装や髪の毛は目立たないようにするためか肩の上で切りそろえ、胸も詰めもので平らにしているようだった。女の一人旅、当然の事だろう。
今日はとても素敵な日だった。とても可愛らしいお姉さんの使役に入る事が出来たから。まだお姉さんは気が付いていないようだが、もう遅い。僕は彼女の所有物になれた。
天井を飛び回る悪魔に勝ち誇った笑みを見せる。この人は僕の物だ。
ああ、どうしよう。嬉しくて走り回りたい。でも、そんな事をしたら、目の前ですやすやと眠りについているお姉さんの眠りを妨げることになってしまう。それは良くない。だって、そんなことをして嫌われてしまったら、とても悲しいから。
温かい毛布に包まれて眠る僕は、とても幸福。
この場所を誰かに譲る気も、奪い取られる気も無い。
さっき階下で会った馬鹿な男も、この街を出るときに消そう。もちろん、お姉さんに気づかれない様に残酷に。
だって、お姉さんを下種な目で見てたもん。許せない。
僕だけだったら、まだ許せた。だけど、僕のお姉さんを下種な目で見るなんて、絶対に許せるはずがない。
ああ、早く殺してしまいたい。
僕の目の前で服を簡単に脱ぎ捨てるお姉さんは、僕にずっと見られていたなんて思いもしないんだろうな。なんて可愛いんだろう。
これからが、楽しみだ。