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転生勇者の三軒隣んちの俺  作者: @aozora


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第38話 村人転生者、調薬に励む

「へ~、これがヒカリゴケなのね。話では聞いていたけど、実際に光っている物を見るのは初めてだわ」

昨夜はネオン人間ケビンに悲鳴を上げて驚いた調薬の師匠ミランダさん。ケビン君の全身に張り付いてピカピカ光ってた“ヒカリゴケ”を見てたよね?どうやら昨夜の一件は無かった事になされたみたいです。


「それでケビン君は魔力過多症の治療薬を作りたいと言う訳ね。昔調薬の工房で働いていた頃に調合していた事があるから作り方は知っているわ。

あの時は乾燥して保存してあったヒカリゴケを使っていたんだけど、指導して下さった先輩によると鮮度のいい方がその効果が強いんですって。だから始めは乾燥したもので調薬してみて患者の容態に合わせて新鮮な物に移行して行くのが一般的って言っていたわ。乾燥したヒカリゴケを使用した薬でも十分効果はあるしね。


それで調合に必要な材料だけどこのヒカリゴケと癒し草、それと乾燥したスライムになるわね。乾燥したスライムを混ぜる事で薬草同士の効果を喧嘩させない様にしているの。先ず乾燥スライムをよく()って粉にして・・・」


流石天才調薬師が作り出した薬の調薬法、魔力と呪文でお気楽ポンってのとは訳が違う。これですよこれ、これが調薬ってなもんですよ。知識と技術の集大成、ザ・調薬。流石ミランダ師匠、格好いいです。


「でね、調薬系の職業かスキルを持っていると薬の調薬を何度か成功させる事で<レシピ>と言うモノを覚える事が出来るの。そうすると材料を揃える事でスキルでの作成が可能になるわ。

ケビン君も授けの儀で調薬スキルを授かったら出来る様になるから期待していてね。一度レシピに登録すれば作り方を忘れる事もないからすごく便利よ」

・・・やっぱり剣と魔法の世界はファンタジーだった様です。そりゃそうだよね!この情報の広がりにくい世の中で魔法薬がこれだけ広まっているのには、それなりに理由があるよね!

いや、分かるよ、便利だし。でもこうなんだろう、ロマンが足りないと言うか、薬研(やげん)でゴリゴリしようよ~、秤で分量の調整とかさ~。


ミランダさん、超アバウト。ヒカリゴケと癒し草と乾燥スライムを並べて詠唱呪文を唱えてポンって。“ちゃんと分量を合わせないと無駄が多くなるから気を付けてね”ってそうじゃないから。多めに使用した材料も消えちゃうから注意って分量調整は勝手にしてくれるんですね、わ~い、スキルって便利~って違うから!

まぁ、この後確りスキルなしでの調合の仕方を教わったんですけどね。


レシピを覚えてるから調合の仕方は完璧なんですか、やっぱ凄いですね。自分はそうじゃないけどレシピのスクロールで覚える人もいるってマジですか!?スクロールを作れる職業の人がいるんですね、スゲー。

お値段も凄いと、そりゃそうですよね、これだけの技術の習得が一瞬ですもんね。でもスクロールで覚えた人の技術は微妙ってそれは仕方がないんじゃないですか?その辺は熟練度の差だと思いますよ?

なんやかんやと昔の愚痴を交えつつ、魔力過多症の治療薬の調合を教わるケビン君なのでありました。


で、完成した魔力過多症の治療薬がこちらになります。見た目は只の丸薬、色からしたら小さなマリモっぽい。


「普通はこれを一粒飲む事で症状を押さえられます。魔力量が多い子は二粒くらい?その辺は症状を見ながら調整ね。稀に三粒必要って子もいるらしいけど、それこそ将来王宮に仕える魔法使いとかになる様な人くらいじゃないかしら?」

「へ~、難病奇病って言われる割にはそれなりに患者数がいるんですね」

俺がそんな感想を漏らしながら出来上がった丸薬を眺めていると、“その昔は病気自体を隠そうとする人が多かったから”とのお言葉。

どうやらこの病気、貴族の子供に多く発症するものらしく、家の恥として秘密裏に処理されていた様です。どう考えても魔法使いの血を取り込みまくった結果だと思うんですが、秘密裏に処理って。やっぱり貴族って怖い。


では早速完成品の試食をば。

“ゴクン”

ミランダさんが「ケビン君駄目!」と声を掛けるよりも早く頂いた(わたくし)、さてどのような変化があるのでしょうか。・・・はて?さっきから待ってるんですけど何の変化も無いんですが?


「えっ、ちょっと待って。”大いなる神よ、我に慈悲をもってその英知を分け与えたまえ、品質鑑定”って問題ないわね。これはちゃんと魔力過多症の治療薬よ?ケビン君、本当に何ともないの?」

「うん、全くと言って。どちらかと言えばトイレに行ってスッキリした後の様な感じですね。

それじゃもう一つ」

”ゴクン”


「・・・ちょっと魔力が減った様な気がしなくもない、でも支障はないかな?う~ん、よし、あと二つ行ってみよう」

”ゴクン”


「おぉ!?しっかり魔力が減った感じ、これなんか懐かしい感じがする。後は少し魔力を使いまくれば行けそうかな?ってミランダさんどうしました?お口をあんぐり開けちゃって」

なんかミランダさんが固まってしまいました。心配させちゃったかな?目の前で体操をして問題がない事をアピール。俺は全く支障ありませんよ~。


「そ、そうなんだ、ケビン君は凄く魔力が多いのかもしれないわね。でも魔力適性は無いのよね、勿体無い。きっと授けの儀では凄い職業を授かると思うわよ、うん、そうに違いないわ、きっとそう」

ミランダさん、何かぶつぶつ言い始めちゃいましたが大丈夫なんだろうか?ちょっと心配です。


俺は完成した魔力過多症の丸薬を布袋に仕舞い、よく礼を述べてからミランダさんの家を後にしました。ミランダさんが凄く疲れた顔をなさっていたみたいですが、普段あまり作らない薬の調薬を指導したので色々と大変だったのでしょう。ミランダ師匠には本当に頭が上がりません。

で、お昼を食べに家に戻ったんですが、何やら母メアリーがバタついている様子。一体何があったんでしょうか?


「ケビン、いい所に帰って来たわ。悪いんだけど急いでミランダさんを呼んで来てくれる?私じゃどうしようもないの、とにかく急いで!」

お、おう。よく分かりませんが緊急事態の様です。俺は(きびす)を返し急ぎミランダさんを呼びに行くのでした。



「これは‟魔力過多症”ね。過剰な魔力に身体が耐えられなかったのよ」

そう告げるミランダ師匠。その言葉を重く受け止める父ヘンリーと母メアリー。


「な、何で今頃、そんな、やっとこれから親子二人幸せになれると・・・」

そしてベッドで寝る我が子の脇で悲壮な声を漏らし膝を突く《《ザルバ》》さん。

そうです、魔力過多症でひっくり返ったのは誰あろう《《ケイト》》君だったんですね~。


ケイト君、今日も朝から団子と紬のお世話と言う名目でモフモフに癒されておりました。完全に団子ラブです。紬と遊ぶのも楽しいみたいで、二匹ともケイトに懐いております。

母メアリーもそんなケイトのご様子にほっこり、“いつでもいらっしゃい”と温かく迎え入れていたんですけどね、そんなケイトが昼前に倒れちゃいまして。

で、今って訳です。


「魔力過多症の治療薬なんてどうやって手に入れたらいいんだ。あれは貴族御用達の薬屋でしか手に入らないと聞く、俺にそんな金なんか」

「ミランダさん、ミランダさんの伝手で何とかならないものだろうか。金なら俺の冒険者時代の(たくわ)えで何とかなると思う。足りない分は村長代理に借りればいい」


父ヘンリーが何か格好いい事を言っています。母メアリーもそんな夫を支える構えの様です。

・・・こちらをじっと見て“お前がどうにかしろ”と言わんばかりの視線を送るミランダさん。俺がっすか?タイミング的に凄い嫌なんですけど。まるで俺が原因みたいじゃないっすか。それでもやれと、そうですか、分かりました。


「でもその前に一つだけ実験させてくださいね」

俺はそう言うと部屋に戻り、例の衣装を取り出すと急ぎケイトの下へ。


「ケビン君、それは一体・・・」

困惑するザルバさんを余所にベッドの掛布団を剝ぐと、その衣装をケイトの上に載せます。

“ピカーッ”

お~、光る光る、やっぱり魔力過多症って言うくらいだから魔力が吹き出しちゃっていたのね、こりゃ体調も悪くなるわ。

一同がお口あんぐりしている中、当のケイト君と言えば。

“スヤスヤ~”

気持ちよさげな寝息を立てて眠りについているのでした。


「ちゃんと説明してくれるんですよね?」

そう言い俺の顔を覗き込むミランダ師匠。師匠、目が恐いです。

ケイトの症状も安定し、容態の変化もなさそうなので俺たちは一先ず居間に移動。先ほど俺が何をしたのかの説明を求められる事になりました。

大人四人にガン見されるのって無茶苦茶プレッシャーなんですが。さっさと話せと、了解であります。


「まぁ簡単に言えば魔力過多症の治療薬がやってる事を物理的に行った、ただそれだけなんですけどね。これって魔力過多症の治療薬を作った天才調薬師様のお話を読んでいれば誰にでも解りそうなもんなんですけど。ミランダさんは当然知っていますよね、そのお話」

俺はミランダ師匠の方を向きながら話を振る。ミランダさんはしばらく考えた後、“確か”と言いながら話し始めました。


「“魔力制御が出来ない膨大な魔力が病状の原因ならばその魔力を取り除けばいい”だったかしら、その時彼が注目したのが周りの魔力を吸収して発光する“ヒカリゴケ”の性質。彼は大量のヒカリゴケを集め研究し魔力過多症の治療薬を開発したと言われているわ」


「そう、その通り。もう答えは出ている様なものなんですけど()えて言いますね。“膨大な魔力が病状の原因ならばその魔力を取り除けばいい”、要は使ってあげればいいんですよ。

天才調薬師様は薬として体内にヒカリゴケを取り込む事で魔力を吸収排出する方法を取りましたが、別にそんな事をしなくても魔力を吸収してくれる何かがあればそれでいいんです。先ほどのヒカリゴケジャケット然り、何かの魔道具でもいいでしょう。

一番は本人が魔力制御出来るのが手っ取り早いんですけど、発症するのは幼い子供と聞きます、それを求めるのも酷と言うもの。

成長し、身体が大きくなるにしたがって自然と魔力の制御も出来て来るのでそれまでは薬で抑えてしまおうと言うのが天才調薬師様の発想ですね。それに十二歳の授けの儀になれば魔力過多症の子供はみんな魔法使いの職を授かるんでしょう?

“魔法職を授かれば職業補正の様なものが働いて魔力制御が出来る”って話は元冒険者のボビー師匠に伺っています。要は授けの儀まで持たせればいいという事なんですよ」


俺の説明、分かって頂けました?ミランダさんは、“そんなに簡単な事だったの?私たちの努力って一体”ってうん、大丈夫みたいですね。他の方々は、ヘンリーお父さんは分かった様ですが、ザルバさんは駄目っぽいかな?


「要はケイト君はもう大丈夫って事です。これで理解出来ました?大丈夫そうですね、良かったです。

それとですね・・・」


俺はおもむろにポケットから布袋を取り出すと事情を知らない三人の大人にこう告げた。


「これ、魔力過多症の治療薬です。午前中にミランダさんの家に行って調薬していた新しい薬ですね。これがあればもう安心、いや~、凄い偶然もあるもんだ、ビックリです」


シーンと静まり返った室内、父ヘンリーは頭を抱え、母メアリーはそんな父に目を向けながら“あなた・・・”と呟き、ミランダさんは苦笑いを浮かべ、ザルバさんと言えば。


「ありがとう、ありがとう、ありがとう!」

跪き、感謝の言葉を述べながら泣き崩れるのでした。


アハハハハ、どうしてこうなった!?

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