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転生勇者の三軒隣んちの俺  作者: @aozora
第二章 村人転生者、授けの儀を迎える

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134/145

第134話 村人転生者、領都グルセリアに到着する

一面にレンガの敷き詰められた街道を多くの人々が行き交う。

ある者は馬車で、ある者は荷車を引いて、またある者は徒歩で。

彼らは皆石作りの壁に守られた巨大な都市の街門に向かい歩を進める。

領都グルセリア、そこは冬の閑散期とは思えない程の人や物が行き交う一大都市。


「ドレイク村長代理、何も起きませんでしたね」

「あぁ、何も起きずに無事に領都まで着いたね」


街門前の行列に並ぶ荷馬車の上でボソリと漏れた呟きに、やはりボソリと答えるドレイク村長代理。

そう、俺達マルセル村一行はこれと言った事件や事故、面倒事に巻き込まれる事なく、何事も無く領都に到着したのである。その事自体は良い事であるし喜ばしい事ではあるのだが・・・。


「ドレイク村長代理、もしかしてマルセル村って凄い危険地帯にあったりするんですか?」

「いや、まぁ辺境の最果てとは呼ばれているけどね、魔獣の危険性はあるもののそこまでの危険な場所ではないと思っているんだが」


前回マルセル村からミルガルの街に着くまでやミルガルの街からマルセル村に帰るまでに起きた数々の出来事、そして今回マルセル村からミルガルの街に向かうまでの間に経験した様々な出会い。なんか色々とありましたよね。

俺、村の外って危険が一杯なんだってずっと思ってたんですよ。

ミルガルの街からここ領都に至るまでの道すがら、宿泊した各村の宿の対応はいたって普通、途中に寄ったバーナンの街も特に何もなく順調な旅路、この違いは一体。


「ハハハハッ、何なんだろうね~。私が行商人を行っていた頃も、基本的にはミルガルからここ領都に辿り着くまでの行程と同じ様なものだったかな?

他の領地でもそうだけど、領都と呼ばれる様な大きな都市を擁する貴族、公爵領や侯爵領、伯爵領と言った場所はその都市を中心とした経済圏を作っている事がほとんどなんだ。その場合その経済圏では冬場もある程度のモノの流通が行われている。そしてその動きは都市の生命線でもある。その為周辺都市や街道沿いの治安には、相当に気を使っているんだよ。

でも人材と言うものは有限だろう?優秀な人材は領都周辺を治めその領の兵力は領都と周辺を中心として展開される。結果領都を中心とした経済圏には安全を求め多くの者や人が集まり領都は更に栄える。

頭の悪い犯罪者なんかはそんな金の集まる領都で一旗揚げようとして領兵に捕まり縛り首、ご領主様方もその辺は苛烈に取り締まるからね。連中もその辺は上手い事やっているらしいよ。

じゃあそんな連中は何処へ稼ぎに行くのか。領兵の目の届かぬところ、金の匂いがする所。ミルガルより北、エルセルの街や我がマルセル村は連中にとって魅力的な狩場って事になるんじゃないかな。

前にギースがミルガルからマルセル村に向かう時はいつも緊張すると言っていたよ。オークの森にグラスウルフの草原、魔物の様に現れる盗賊たち、エルセルの冒険者ギルドは中々積極的に動いてくれないからね。

まぁその理由もこないだケビン君がくれた書類を見て納得したんだけどね」


うわ~、元行商人のドレイク村長代理がここまで言うって事はグロリア辺境伯領北西部って末期状態だったって事じゃん。そりゃ引っ切り無しにマルセル村目掛けて盗賊が襲ってくる訳だよ、ぶら下げられた人参と変わらないじゃん。

これ、村に帰った時男衆の顔が修羅になってたらどうしよう。だって俺が男衆の訓練と称して盗賊退治を任せてたときだって、三回も襲撃があったのよ?これから本格的な冬を迎えるグロリア辺境伯領北西部、飢えた獣が餌に群がること必至よ?


「ドレイク村長代理、俺たちが村に帰り着いた時、村人全員が戦闘民族になってたらどうします?」


「そ、そうだね。ボビー師匠にヘンリーさん、グルゴさん達がいるからマルセル村が滅ぼされましたって言う事にはならないと思うけど、平和とは程遠い状況になっている事は確かだろうね」


「ドレイク村長代理、やっぱりグラスウルフ雇いません?何だったらキラービーにも伝手があるんですけど」


「ブッ、はっ?いや、はっ?えっとケビン君、今なんて言ったのかな?」


「ですからグラスウルフをですね」


「いや、その後に何か物騒な事を言ってなかったかな?」


「あぁ、キラービーの話ですか?いや~、俺の家にフォレストビーの巣箱があるじゃないですか、あの巣箱に引っ越してくれたフォレストビーたちを探しに森に入った時に知り合いましてね」


「えっ、ちょっとごめん。魔の森にキラービーの巣があるの?それって大問題なんだけど?」


「いえいえ、大丈夫ですよ?彼らの巣は大森林の中層と呼ばれるあたりですから。基本的には大森林から出て来る事もありませんから。

それでですね」


「イヤイヤイヤ、ちょっと待とう。なんでケビン君がキラービーの巣が大森林の中層部にあるって知っているのかな?大体何がどうなったらキラービーと知り合うって言う状況になるのかな?」


「いえ、ですからさっきお話したように森でフォレストビーを探していた時にですね、フォレストビーの巣がキラービーに襲われてまして。俺が仲裁に入ってビッグワーム干し肉で手を打って貰ったのが切っ掛けですかね。その後も何かと付き合いがありまして、大森林の中層部にはキラービーの女王様に御呼ばれした時にお伺いしてってどうなさいました?なんか頭を抱えちゃって」


「いや、うん。“ケビン君だから仕方がない”、そう言う事だね。胃薬足りるかな~」


「あ、俺が処方した奴なら持って来てますんで差し上げますよ?基本はミランダ師匠に習った通りですけど、追加でキャベールの葉を乾燥した物を加えてあります。

苦味が大分抑えられて飲み易くなってるはずですよ。

ドレイク村長代理個人に合わせて処方したミランダ師匠のものには及びませんけどね」


「ハハッ、いや、うん、助かるよ。帰りに怪しくなってきたら声を掛けさせてもらうよ」


俺は苦笑いをしながら胃薬を取り出すドレイク村長代理に、生活魔法の<ウォーター>で水を入れたコップを差し出し、“いつでもお声掛けください”と返事を返すのでした。


―――――――――――――


「次、身分と目的を告げよ」


車列は進み、荷馬車は大きな街門のところまでやって来ました。

流石は領都、数名の門番さんが数台の馬車や荷馬車を同時にチェックし、背後には何か事が起きた時の為に衛兵さんが控えている姿も見受けられます。徒歩で来た旅人などは、簡単なやり取りを行った後ドンドン街中(まちなか)に入って行く様です。


「はい、私共は遠く辺境の地マルセル村から子供たちの授けの儀に参りました者でございます。私は村長代理のドレイク・ブラウン、隣は村人のザルバになります。そしてこの子らが授けの儀を受ける村の子で、ケビンとケイトになります。

こちらが村民証になります、お確かめください」


ドレイク村長代理が慇懃に村民証を渡すと、それに目を通した門番さんが荷台の上を見て声を掛ける。


「村民証は確認した。それでこの荷台のウルフ種はお前らの従魔と言う事でいいのか?」


「はい、幸運にもこちらのケイトがテイムのスキルに目覚めた様でして。ケイトちゃん、ブラッキーを立たせてくれる?」


「ん。」

ドレイク村長代理に促されたケイトがブラッキーに目を向けると、ブラッキーは耳をピクピク動かしながら“えっと、お仕事っすか?”と言った顔でケイトに目を向ける。


「ブラッキー、立つ。」

“ガサッ”


「ブラッキー、お座り」

“バサッ”


「ブラッキー、前足を上げる」

“ガタッ”


「ブラッキー、お辞儀。よろしくお願いします。」

“ぺこっ”


「あ、あぁ。よろしくな。と言うか凄い従魔だな、これほど訓練されたウルフ種は今まで見た事が無い。精々がお座りやテイマーの周りを回らせるくらいじゃなかったか?ケイトと言ったか、君は凄腕のテイマーになりそうだな、授けの儀、頑張ってくれ。

よし、行っていいぞ」


そう門番さんに促され領都の中に入った俺たちは、先行して領都に入っていたギースさん達の幌馬車と合流し、一路モルガン商会へと向かうのでした。


「ケビン君、さっきのブラッキーは一体?」

領都の街並みは街道が全てレンガで整備されており、大通り沿いには確りとした建物が立ち並んでいます。まさに街、ミルガルの街に初めて行った時も口をあんぐり開けちゃいましたが、領都は規模が違う。見渡す限り建物と人だらけ、ここってどれくらい人が住んでるんです?って感じです。


「えっと、ブラッキーの事ですか?」

俺は町並みに夢中になっていた意識を切り替えて、ドレイク村長代理の質問に答える事にしました。


「さっきの奴は宿屋に泊まった時とか荷台で暇を持て余していた時に仕込んでいた奴ですね。他にも色んな芸が出来るんですよ?

ブラッキー、伏せ」

“バサッ”


「ブラッキー、匍匐前進」

“ガサガサガサ”


「ブラッキー、弓。バシュ」

“フラッフラッ、バタンッ”


「ね、凄いでしょ?ってどうしました、ドレイク村長代理」


「いや、うん、凄いね、凄いと思うよ?えっとケビン君は大道芸人でも目指しているのかな?これでもう少し芸が揃ったらその道で食べて行けるんじゃないかい?」


「へへ~、実はとっておきの芸がありまして、”丸太転がし”って技なんですけどね?

ブラッキーが輪切りになった丸太の上に乗って転がすって言うフォレストウルフの器用さを生かした芸がって大丈夫ですか?

丸太はブラッキーの影に仕舞ってあるんで良かったら後で披露しますけど?」


「いや、うん、それはマルセル村に帰ってからお願いしようかな?ここではフォレストウルフって事になってるからね。と言うかこの短期間でそこまでの芸を、もしかしたらケビン君の職業は魔物の調教師とかかも知れないね、そう言う職業があるのかは知らないんだけど」


「いや、うん、その可能性はありますね?俺、テイムスキルが無いのに魔物と交流してますし。調教師か、それって学園行きですかね?」


「いや、どうだろう。一見戦闘向きではないし、調薬師と一緒で俗に言う職人系の職業に分類されるんじゃないのかな?

学園に通う事になる子供は、有事の際に役に立つ職業と決まっているんだよ。戦闘スキルだったら剣聖や拳聖と言った聖が付くものや闘鬼や剣鬼などかな。魔法職は賢者や魔導士、魔力量が多ければ魔法使いでも王都学園に通う事があるね。他は聖女や上級治癒術師かな。

領都の学園は魔法使いか特化型魔導士、中級下級の治癒術師、剣豪や重装騎士、防御型の堅盾士なんかだね。

治癒術師って言うのは光属性魔法使いと被る所があるんだけど、攻撃魔法が使えない代わりに治療術に特化している職業だね。他にもいくつかあるらしいんだけどその辺は詳しくなくてね。


それで所謂職人職と言うのは魔道具職人やら調薬師、薬師、調理人や鍛冶師なんかがそれにあたるかな。それらの職業は学園とは無縁なんだよ。

剣士や木こり、農民なんかも関係ないかな。ケビン君のお母さんメアリーさんは給仕だったね、そうした場合は幾ら魔法適性があっても学園には通わないんだよ。

魔法職以外の人間は多くても二属性まで、それも一般的な魔力量ってのが大体だからね。いくら多くの魔力量があっても職業が魔法職でない者は上級の魔法を使う事が出来ないと言うのが定説かな?

例外は勇者様だね、勇者様は戦闘スキルも魔法スキルも使いこなす事が出来ると言われているんだ。でも両方の道を究める事は非常に難しい、そこで剣の勇者様や魔法の勇者様みたいに別れたんじゃないのかな?」


へ~、流石にその辺は知らなかった。確かに剣の勇者様も魔法を使っていたし、魔法の勇者様も見事な剣技で魔物を打ち倒しているんだよね。そっか~、どっちがより得意かって事で呼ばれ方が変わったのか。

言われてみれば剣の勇者様にしろ魔法の勇者様にしろ、本人から名乗ってる訳じゃなくて周りからの呼び名だもんね、納得。


「マルセル村の皆さん、お疲れ様でした。ここがモルガン商会領都本店になります」


冒険者パーティー“草原の風”のソルトさんからの声掛けに顔を向ける。

領都の大通りに面した一等地、多くの幌馬車や荷馬車が集うその場所こそ、グロリア辺境伯領最大の商会モルガン商会本店の建物なのでありました。

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