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転生勇者の三軒隣んちの俺  作者: @aozora
第二章 村人転生者、授けの儀を迎える

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第132話 村人転生者、領都に向け移動する

「つまりな、王都にいる貴族ってのは自分たちを着飾る事でその権威や権勢を周囲に見せつける、それを見た周りの貴族は”それだけの財力がある者ならおこぼれが貰えるかもしれない”と考えすり寄って来る。それは発言力に変わるって訳だよ。

発言力のある貴族には多くの金が巡って来る、その金を使い私兵を養い武力を強める事も出来る。

あいつ等にとって見栄の張り合いってのは、冒険者の命のやり取りと何ら変わらないって事なんだな、これが」


ミルガルの街を出立して二日目、大都市ミルガルと領都グルセリアを結ぶ街道には冬場の時期とは思えない程の馬車や荷馬車が行き交っている。とは言えそれはごくたまにすれ違う馬車があると言った程度のものであり、在りし日の記憶の光景とは雲泥の差ではあるのだが、冬の期間まるっきり物流の途絶える辺境の地マルセル村の人間からすれば驚き以外の何物でもない。

その事をドレイク村長代理に聞けば、この街道が領都とグロリア辺境伯領北西部を結ぶ主要街道であることが大きいとの事。冬季期間に行き来するのは保存に適した穀物や芋、干し野菜など。季節に関係のない鉱物資源なども取り引きされるとか。

領都の商会などからは、時間停止機能付きのマジックバッグや腐敗遅延処理がされた大倉庫などに保管された干し肉などが、各都市に向け出荷されるらしい。

そんな便利な施設があるのなら領都だけじゃなく他の各都市にも設置したらと思うのだが、この施設、建設費用がバカ高いとのこと。領都の複数の大商会がグロリア辺境伯様と資金を出し合って建設したとかなんとか。これも領都や周辺都市の食糧事情改善の為の方策の様で、一般的な貧乏領主様の領地では春前にはお肉様が消えるそうです。


「貴族が街の服飾職人を囲ったり御用達の店とか言って売り出したりするのもその辺の事情が絡んで来るな。公爵家や侯爵家くらいの権力や財力があれば“我が家が後ろ盾になってます”ってお墨付きを与えるだけでいいんだけどな、伯爵家以下になって来ると一気に話が怪しくなってくる。

さっきケビン君が言ってたベネットお婆さんの話だっけ?ある程度古くからやっているが老舗と言うほど力のない服飾工房、中位くらいの貴族にとってはおいしい獲物だったんだろうな。工房一つを丸抱えするほどの財力はないが腕のいい職人は欲しい、何だったらその職人を通じ実質工房一つを手中に収められるかもしれない。断られたら潰せばいい、他の貴族に渡すぐらいならそんな工房はいらないって奴だな。

さっきも言ったが連中にとっては見栄の張り合いは戦闘行為そのもの、敵に塩を送るくらいなら潰すってのは定石だからな」


それでさっきから何をやってるかと言えば、荷馬車の上でメルビン司祭様のありがたいお話を伺っている所です。って言うか司祭様砕け過ぎ、ミルガルの街を過ぎてしばらく経ったら“俺は自由だ~!!”とか言って取り繕うのを止めてしまわれました。

それで昨日は移動中ずっと領都グルセリアのお姉様のいるお店について聞いていたとかなんとか。村の宿屋に着いた時行商人のギースさんに“ケビン君の言っていたことは本当だったんだね。一緒に朝まで飲んでいてもここまで態度を崩されてなかったから、てっきり大げさに言っているモノだと思っていたよ”と言われ、予め情報を貰っていなければ混乱する所だったと感謝されてしまいました。

司祭様、本気で夜の飲み歩きを楽しみにしてますんで、その辺よろしくお願いします。

普段シスターアマンダに抑圧されていた分ハッチャケてるんだろうな~。ボビー師匠が呆れるのも納得です。


そして本日は“これから大きく羽ばたいて行く子供たちに、王都や貴族についてお教えいたしましょう”とか言ってこちらの荷馬車に搭乗。

えっ、荷馬車だよ?人に見られて大丈夫?とか思ったんですが、“この辺なら全然問題ない”と仰っておられました。何でも馬車で一日くらい過ぎた距離からなら大して噂になる事もないし、バレてもさほど怒られないらしいです。“実践済みだから大丈夫”と言ってウインクをする司祭様、一体何をやってるんだか。

マジで自由人だわ、この御方。


「でもケイトちゃんは凄いな~。ブラッキー君凄く大人しいじゃないか。俺も何度かテイマーと一緒に仕事した事があるけど、ここまで人に慣れた魔獣は初めてだよ。

ブラッキー君は偶々知り合ったって話だけど、普通のテイマーはテイムしたい魔物を探して弱らせてからテイムしたりするんだ。ある意味職業スキルで無理やり従わせていると言ってもいい。

これが農村部なんかで馬型の魔獣を使役していたりウルフ種を小さい頃から育てたって場合は違うらしいんだけどね。

冒険者はテイムした魔獣を戦わせるのが仕事だろ?どうしても道具として見るきらいがあるんだよ。

だからこんな風にテイマー以外の人間が頭を撫でたりなんてまず出来ない。それを知らずにちょっかいを出して怪我をする冒険者の治療も何度かした事があるからね、アイツら馬鹿だよね~」


そう言いケラケラ笑う司祭様。

・・・威厳が裸足で逃げて行く、それでいいのか司祭様。

いや、お話は凄く為になるよ、王都の貴族のものの考え方なんか俺知らなかったし、俺の知識って割と一方的な情報(被害者視点)だったからね。

でもあなたそれでも教会の偉い人なんだから、なんかこう偉ぶるとか人格者ぶるとかしなくてもいいの?凄く心配なんだけど?


「ん?何だケビン君は俺の事を心配してくれるのかい?良いの良いの、俺別に王都に返り咲きたいなんてこれっぽっちも思ってないし、ここグロリア辺境伯領に限って言えば実質俺が教会勢力の一番だし?

これから向かう領都の教会の司祭って出世欲が強くてさ、何か王都の枢機卿の地位を狙ってるみたいなんだよね。だからグロリア辺境伯領内の事をあまり見てないのよ。だもんでその皺寄せがこっちに回って来るって言うね、超面倒。

まぁそれでもアマンダちゃんが片付けてくれるから助かってるんだけどね。ウチのシスターちゃん達、皆優秀だから。


これは内輪の話なんだけど、教会内でも身分の差ってのがあるんだな、これが。親が貴族の人間の方が教会内では出世するって奴?そんでもって教会内で力を持った者の子弟の方が出世するってね。

だから枢機卿や教皇の周りには権力欲に飢えた爺どもがうようよしてるのよ。そんでシスターたちもやっぱり高貴なご身分出身だったりするって言うね。女神様への信仰心は何処に行ったって感じ?

俺ですらちゃんと気持ちを込めてお祈りしてるってのに、嫌だね~権力者って」


う~わ、教会内部ドロドロやん。気のいいお爺ちゃん枢機卿なんて夢のまた夢やん、ラノベの定番聖女様を影から支える枢機卿なんていないじゃん。


「あ、でも今の教皇は割とまともだぞ?前国王の弟君、第四王子だった御方だからね。教会内権力も流石に王家には逆らえないってね、やたらな事をすれば首ちょんぱだから、物理的に。

バルカン帝国の南に位置するボルク教国なんかは教会が国を運営しているような所だからまた違うんだけどな。あの国のシスターちゃんって洗脳でもされてるんじゃないってくらい人間味が無いから嫌いなんだよね。一度王都で会った事があるんだけど、あんな国絶対に行くもんかって思ったもん」


うわ~、あるのかよ宗教国家、そりゃそうだよな、“あなた様”曰く弱い人族の為に女神様が職業やスキルやらを授けて下さる世界で宗教国家が出来ない訳がないわな。

実際に女神様の御声を聞く事の出来る聖女様って存在もいる訳ですし。

“あなた様”の口ぶりだと女神様は人の営みにはあまり干渉しないみたいなんだよね、どちらかと言えば全体のバランス調整を行って見守る感じ?

でもそうなると鍛冶の神様や商いの神様って存在に疑問が生じるんだよね?加護を与えてるあたりしっかり干渉してるって事だし。


「メルビン司祭様、一つお伺いしてもいいですか?シスター様にお伺いしたんですが、司祭様はお酒の神様の加護をお持ちだとか。僕、神様ってずっと女神様御一人だけだと思っていたんですが、他にもおられたんですね。

それで質問なんですが、加護って一体なんなんですか?」


「あぁ、ケビン君とケイトちゃんは辺境の村出身なんだよね、だったら教会の礼拝や子供教室なんかに行った事が無いから知らないか。先ず神様の話なんだけど、女神様は知ってるよね、この世界をお造りになり見守って下さる御方、それが女神様だね。そんでその下に多くの神様がおられるとされている。

例えば商いの神だがこの御方は商人同士の契約や通貨と言った“約束事”を司っているとされるし、鍛冶の神は武器や防具、生活雑貨全般を作り出す鍛冶仕事全般を司っているとされている。他にも魔道具の神やら魔法の神など、所謂職業に関係した神々が存在するとされている。更には美の女神や酒の神など人々の欲求に関係する神などだな。

ここで注目したいのは、神々と言ってもそれらは皆人の営みに関係するものであるって事だ。剣神やら槍神と言った神もそうだが所謂武神、戦いの神も人の営みに関係したものなんだよ。

逆に川や山、海や大地と言った自然物に関わる神様は見られない、これらは皆この世界をお造りになった女神様の管轄とされている。

つまり女神様のお造りになった世界そのものは女神様が、その世界に生まれ生きる人々を見守り導くのがその他の神様と言った区分けかな?これら女神様以外の神様は女神様をお助けすると言う意味で補助神と言われているね。


で、これら補助神が司るもの、文明や文化と言ってもいいかな?それらをより発展させる為に人々にお与えになるのが加護であると言われているんだよ。

例えば鍛冶の神様の加護を持つ職人は素晴らしい武具を作り上げるし、料理の神様の加護を授かった調理人は王侯貴族をも唸らせる料理を作り出すと言われている。

加護はそれをお与えになった神のご意思であり、それを妨げる事は女神様に仇なす行為と言うのが一般的な考えかな?

だから加護持ちの職人や料理人を貴族が無理やり連れ去ると言う事もまず起こらない。もしそんな事をしたなんて噂が立ったらそれこそ身の破滅だからね。

と言うか加護持ちの存在自体が物凄く希少だからね、そうそう会う事も無いんじゃないかな?

まぁ俺はお酒の神様の加護を授かってるんだけど、職人って訳じゃないんだよ。お酒の神様は少し変わっていてね、美味しく酒を楽しむ者にも加護をお与えになられるんだ。もっとお酒を楽しんでくれってね」


はぁ、なんじゃそらって感じがしないでもない。でもあのお貴族様方がそんな事くらいで止まるかな?密かにってことぐらいやっていてもおかしくない。

実際奴隷が禁止されてるこの国ですら奴隷商人ってのがいるらしいしね。

それにしても加護が文化の促進剤だとはね、加護持ちが希少なのはあくまでも促進剤だからやり過ぎ注意ってことなのかな?でもそんな神様に加護をいただく程飲み歩いていた司祭様って。

“軟派師メルビン“、半端ないです。

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