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転生勇者の三軒隣んちの俺  作者: @aozora
第二章 村人転生者、授けの儀を迎える

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118/145

第118話 村人転生者、ミルガルの街に向け出発する

夏休み特別企画

毎日五話投稿!!

毎日多過ぎる? 正直すまなかった。

25日まで付き合って。


by@aozora

朝の街を荷馬車は走る、一路ミルガルの街を目指して。

エルセルの街の大通りには、同じ様に街道に向かう幾台かの馬車や荷馬車が列を作り、列を作りって大渋滞だなおい。

えっ?もう開門時間過ぎてるよね?まだ閉まってるって事はないよね?

エルセルの街の街門前は街を出ようとする車列がひしめき合っておりますが、これって一体何事なんでしょうか?


「あ、フレムさん、朝ごはん食べました?」


「ん?いや、そこまで考えてなかったな。」


「ふむ、だったら情報収集がてら何か買ってきますね。ケイトも軽い物なら摘めるか?」


「ん♪」

「甘い物ね、ってそんなものを売ってる屋台なんて、あるじゃん。堅パンの蜂蜜掛けってマジかいな。ちょっと行って来ます」

通り沿いに並ぶ数々の屋台、その中の一軒に掲げられた“堅パンの蜂蜜掛け”の文字。

流石街場、甘味が屋台で売ってるって、マジ半端ね~。


「おやじさん、蜂蜜掛け六人前下さいな。って流石エルセルの街、蜂蜜が屋台で売ってるんだね」

こじんまりとした屋台に並べられている瓶に入った蜂蜜の数々。周囲に漂う甘い香り。堅パンはスライスした上に火で炙ってる!?最高かよ!


「へいいらっしゃい。蜂蜜掛け六人前で銅貨六十枚だよ、ハイ毎度。

それで蜂蜜がなぜ屋台で売ってるのかだったな、それは俺が蜂蜜農家の息子だからだよ。ウチのオヤジがテイマーの職を授かっててな、昔は冒険者で一旗揚げようとしたらしいんだが上手く行かず、田舎に戻って始めたのが蜂蜜農家って訳よ。


オヤジは強い魔物を従えるほどの才能はなかったらしいんだが、弱い魔物だったらそれなりの数を従える事が出来たらしい。冒険者時代は“スライム使い”とか“グラスウルフ以下の底辺テイマー”とか馬鹿にされたらしいが、スライムも使いようによっては色々と便利なんだぞってのが口癖だったな~。

今は兄貴が継いでるけど底辺テイマーの才能は健在でな、上手い事フォレストビーを使役しているって訳よ。

はいよ、零さず持って行きなってどうした坊主、目がキランキランしてるんだが?」

す、す、スライム使い!?出た~、伝説のスライムマスター、ラノベの定番、低級魔物でひゃっほいって奴ですね、そこに痺れる憧れるって奴ですね!!


「是非、是非にお父様をご紹介していただきたいんですが!!あ~、でも駄目だ~、俺これから領都に授けの儀を受けに行くんだった~。あの、お父様のお住まいの村ってどこですかね?俺、お尋ねして色々教えを乞いたいんですが!!」


「へっ?ちょっと待て坊主、今の話しのどこにそんなに興奮する所があった?良く聞け、オヤジが使役してたのはスライムだぞ?」


「はい、スライムテイマー様でいらっしゃいましたよね、スライムの使い手、最高じゃないですか!俺、スライムとビッグワームとキャタピラー飼ってます!」


「マジかよ、この坊主オヤジの同類だったのかよ。それで授けの儀って事はこれからミルガル方面に向かうんだよな?だったらその途中、オークの森の手前にあるラッセルって村に寄ってジニーって人物を訪ねてみな。養蜂家のジニーそれが俺のオヤジだ。

エルセルの街で蜂蜜屋台のロイに聞いたって言えば話くらい聞いてくれるはずだからよ」


「ラッセル村の養蜂家ジニーさんに蜂蜜屋台のロイさんですね、了解しました、ありがとうございます!

所で話は変わるんですが、何でこんなに混雑してるんです?村の馬車が渋滞に巻き込まれちゃって身動き取れないんですけど」

いかんいかん、仮性心が天元突破して肝心の情報収集を忘れる所だった。いや~、思い出せてよかったわ~、ケイトにジト目で馬鹿にされるところだったわ~。


「本当にコロッと変わるな、まぁいいか。この車列は街門の検問の影響だな。昨夜鍛冶屋のビスク工房が何者かに襲われたらしくってな、これで鍛冶屋が襲われるのは二件目だ、街の衛兵も漸く重い腰を上げたらしい。

前のゾイル工房が襲われた時なんかは“夫婦喧嘩の末、奥さんが旦那を切りつけた”とかって訳の分からない事を言って碌に調べもしなかったくせに、今度は検問迄してやがる。あんな仲のいい夫婦がそんな事する訳無いっての、奥さんは行方不明だし残された旦那は右腕潰されて店は閉店しちゃうしって、どう考えても違うだろうに。

ビスク工房は街に結構な金をばら撒いてたからな、この街の監督官も必死だろうさ」


「へ~、なんかおっかないですね。あ、堅パンの蜂蜜掛け、ありがとうございました。ラッセル村には是非寄らせてもらいます!」


「おう、オヤジに会ったらロイは元気にやってるって伝えてくれるか?」


「お任せください!」

俺はロイさんから最高の情報を頂き、ルンルン気分で荷馬車へと戻るのでした。 


―――――――――――


荷馬車は進む、カタコト音を鳴らし街道を一路ミルガルの街を目指して。

“ドドドドドドドドドドド”


後方からは土煙を立てて馬車がやって来る。

“ハイッ、ハイッ”

馭者が中腰になって街道を進む、その顔は何処か必死さが窺えるのだが、魔物に追われているって気配はしないんだよな~。って事は時間に追われている?

今朝の街門前の大渋滞、あれが決定打だったんだよな~。


エルセルの街門で行われていた一斉検問は、それこそ都市の物流を完全にストップさせる暴挙であった。昨晩何者かに襲われたビスク工房の工房主、どうやら盗賊か何かに襲われたって事にしたらしいです。工房内で意識を失っていた人間も魔道具か何かで眠らされたって事になっているとか。そりゃ凄い魔道具です事。(冷や汗)


で、取り調べを行っている門番さんにそれとなく袖の下を渡してお話を伺った所、どうもビスク工房の金庫に仕舞われていた重要書類が無くなっている事が分かったとか。それがどうやらエルセルの街の監督官様にとっては必要なものだったらしいです。

ふ~ん、そうなんだ~。って程度の話でございました。本当に偉い人って迷惑だわ~。


お忙しくしている門番さんにはマルセル村の特産品ビッグワーム干し肉ピリ辛風味五枚の束を進呈、エールの摘みにしてくださいと言ってお渡ししたら満面の笑みで“気を付けろよ”と送り出してくれました。

門番さん曰くビッグワーム干し肉、衛兵さんや領兵さんの間では密かなブームになってるとか。“俺たち安月給の強い味方だよ”と絶賛して下さった事は大変心強く有難かったです。


“ガタガタガタガタ”

うん、また馬車が追い抜いて行った。そんなに急いでも今日中にミルガルの街に到着するのは無理だと思うんですけど?なぜにそんなに行き急ぐ。

この先を急ぐ理由、ミルガルの街までの移動は距離的に無理。かと言ってオークの森を越えられるかと言えばそれも微妙、って言うかその前に日が暮れる模様。

となると彼らが向かっているのはその前の村、ラッセル村?

ラッセル村と言えば蜂蜜!もしかして蜂蜜料理を出す宿屋があるとか!?

そりゃ急ぐわ、俺だって行きたいわ!

でもな~、今は徒歩の連れがいるからな~。


セージさん、エルセルの街から頑張って歩かれております。流石魔力の扱いに長けたエルフ族、確り身体強化に魔力を使われている模様。あの調子ならフルマラソンを完走した後にスポーツジムで二時間泳げるわ、やっぱ魔力の恩恵って凄い。

でも時折黄昏てるフレムさんの横顔を見ながら優しい笑顔を向けるのは止めなさいっての。あなた今男顔なんだから、見た目もしっかり男性なのよ?門番さんが軽く身体チェックしただけでOK出しちゃうくらい完全な男なのよ?

そんな見た目の貴方がそんな顔をしたら貴腐人様が大喜びしちゃうでしょうが!誰もツッコミ入れないからって自由だな、おい。

荷馬車は進む、一路ミルガルの街を目指して。多くの馬車が追い抜く街道をカタコト音を立てて。



「女将さ~ん、お腹減ってペコペコなの、何か食べさせて~!!」

お昼も()うに過ぎ日が傾き始めた頃、漸く以前お泊りした宿屋兼食堂のある村に到着した俺たちマルセル村一行は、早速食事を摂る為に食堂に飛び込みました。


「あら、ケビン君。暫く見ない間に身体付きががっしりして来たんじゃない?その調子なら授けの儀次第で立派な冒険者になれるわよ。確か冬の授けの儀に参加するって言ってたけどこれから向かう所なのかしら?」

女将さんは相変わらず豪快そうな雰囲気、お元気そうで何よりです。


「そうなんですよ~、これから領都に向かうんですけど、昨日の夜エルセルの鍛冶屋で強盗騒ぎがあったらしくって、検問に引っ掛かっちゃって。本当はお昼前にこの村に到着して、お昼を食べてからオークの森の前の村、ラッセル村まで向かう予定だったんですよ。

でもこの調子だとその一つ前、例の追い剥ぎ村で一泊なんですよね~。なんか冒険者が入ったり領兵が入ったりして大変な騒ぎになったって聞いてるんですけど、女将さん何か聞いてません?最悪野宿するしかないんで」

俺がそう言うとなぜか訝しげな顔をする女将さん。暫くして“あぁ、そう言えばケビン君は最果てのマルセル村の子供だったわね”と得心が行った様で、詳しくお話ししてくださいました。


結論から言います。追い剥ぎ村、廃村になっちゃいました。

いや~、ビックリビックリ、この半年の間に何があったしって思うでしょ?マルセル村の人間は誰も知らないニュースだしね、だって村長代理ですら驚いてたもん。

魔獣の襲撃を受けた追い剝ぎ村、街道沿いって事もあり冒険者の魔獣討伐隊が組まれて掃討作戦が行われたようです。


どうやらその時、例の怪しい気配漂う森で大量の遺体が見つかっちゃいましてね、まぁ領兵が来ての村内一斉捜索が行われたらしいです。そうしたら出るわ出るわ、村ぐるみで行った追い剥ぎの証拠がゴロゴロと。

村民の全て、性別年齢問わず粛清されちゃったって言うね。グロリア辺境伯様大激怒だったらしいっす。


その事件はすぐさまグロリア辺境伯領中に監察官様を通してお知らせが行ったらしいんですけどね~。マルセル村、と言うか辺境五箇村、どうもハブられてるみたいっす。

いや~、急成長を遂げる我ら周辺五箇村、かなりヘイトを稼いでいる様でして。嫉妬や羨望、人間て醜いですな~。


「まぁそんな訳だから、あの村のあった場所は今は野営地になってるよ。井戸なんかは残ってるから便利ではあるんだ、便利ではあるんだけどね~」


「えっ、何ですか女将さんその言い回し、ちょっと怖いんですけど?」


「出るんだよ」

「何がです?魔獣が住み付いてるんですか?」


「うん、おしい。追い剥ぎ村の亡霊たちだね。野営をしていると恨めしそうな視線を向けてじっとこちらを見ているらしいよ。

さっきから引っ切り無しに街道を走って行く馬車、あれって皆追い剥ぎ村で野営をしたくないって連中さ。これから先は逆に急いでも間に合わないからゆっくりと走ってこの村で一泊って事になるんじゃないかね。

はいよ、根菜とホーンラビットの煮込みだよ。堅パンはおまけしておいてあげるからしっかり食べて行くんだよ」

女将さんはそう言うと、厨房の方へと戻って行くのでした。


「「「「・・・・・・」」」」

「と言うお話ですが、どうなさいますか?ドレイク村長代理」


「あ、うん。今からラッセル村に向かうのは厳しいんだよね、だったら手前の追い剥ぎ村跡の野営地で野営しかないかな。

この村に一泊って事になるとオークの森の手前で野営って事になる。それかラッセル村で一泊かな?そうなると今度はミルガルの街の門前での野営って可能性が高くなる、それは避けたいんだよね。」

あ~、街門前の野営は避けたいですよね~、トラブルの予感しかしませんもんね~。


でもこの時期に野営か~、ま、何とかなりますけどね。

俺は美味しいスープに堅パンを浸しながら“備えあれば憂い無し”と言う言葉の意味を噛み締めるのでした。


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