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現代に残る聖杯伝説について  作者: 乙黒


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聖杯伝説について

 聖杯伝説について。


 最近、この町で聖杯伝説がまことしやかにささやかれております。その噂を今回は調べてみました。噂が聞こえて来た時期は不明ですが、最近は何人か願いが叶った方もいるようです。


 聖杯伝説は、本学校の生徒である皆様はご存じですよね。

 そうです。聖書に書かれている聖杯のことです。最後の晩餐に使われたものです。かつては「私の血である」と弟子たちにその杯からワインを飲ませた事で使われたもの、あるいは十字架上の聖なる血を受けた者であり、聖遺物の一つとされているものです。


 この聖杯には奇跡をもたらすという伝説があるらしい。

その杯に注がれた飲み物を飲み干すと、たちどころに傷や病気を直したり、不老不死になったり、はたまた願いを叶えたり、と様々な奇跡を起こすと言われています。


かつては時の権力者も聖杯を探し求めたとされていますが、現代ではあくまで伝説やオカルトと位置付けられることが多いです。


そんな聖杯には多くの逸話が残っています。アーサー王伝説によって語られ、テンプル騎士団がどこかに隠したとされていたり、かつては時の権力者であるヒトラーが探しにいったりと様々な物が溢れています。


 そんな聖杯は西洋においての伝説であり、東洋にある島国である我らが日本にて、何故だかあるという話があるのです。

 私たちが住む幽現市に。


 あくまで噂ですよ。数ある噂の一つです。ですが、私はそんな中、ある生徒からこんな話を聞いたのです。

その生徒が知る男は、どうやら何も入っていない聖杯から溢れ出した水を飲んだって言うんですよ。


本当だと思うでしょう?

 だって聖杯伝説はヨーロッパを中心にしているというのに、まさかアジアのさらにこんな極東にあるとは誰も思わないでしょう。


 では、その聖杯の水を飲んだと言う男の話をしましょう。

その男は五十代で、それまではにっちもさっちも行かない人生だったんですが、聖杯の水を飲んでからは打って変わって多少若返ったように見えて、活力も生まれて、恋人も出来て、仕事もうまく行っていたらしいです。

だけどどうやら一週間ほど前に死んだということを私は聞いたのです。

それも、心臓発作。せっかく聖杯を手に入れて順風満帆な人生を送れたはずだったのに、運が悪いとしか言えないでしょう。


また他にも出会ったと言う情報があります。

これは聖肺の水を飲んだ男の知り合いのお話です。

橋の近くで怪しげな黒いローブを被った男とも女とも見分けがつかない占い師のような若者のような老人のような奇妙な人物が、「ひひっ、人生を変えたいとは思わんかね?」と怪しげな誘い文句とともに、どこからか聖杯を取り出したらしいです。


最初は何も入ってなかったのに、杯を覗き込めば徐々に浮かび上がるのが液体でした。きっとトルココーヒーのような仕組みだと思ったようです。ですが、その液体は赤色をしており、老人はそのワインを試供品のように小さなプラスチックの容器で渡し、一口分だけ男は飲んだらしいです。その老人が直接杯から飲んでいたので毒は無いだろう、と男は安心したとの事でした。

男曰くそのワインの味は、これまでに飲んだどんなワインよりも濃厚で芳醇で美味しいと語っていたときいたみたいです。

男は目を閉じながらそんな幸せに浸っていると、もう一杯同じワインが飲みたくなったのですが、目を開けると、そこに占い師はいなく、近くを探したがどこにもいなかったようです。

ですが、次の日から男の人生は上向きになったらしいとのことでした。


 さて、皆様が気になるのはその聖杯がどこにあるのか、誰が持っているのか、だと思います。きっと奇跡を望む人は多いと思うのです。

 でも、その行方はどうやら不明らしいです。その男は聖杯で水を飲んだとは言っていましたが、聖杯を手に入れたわけではなくて、誰かから借りたらしいんですよ。それにその借りた相手の事も何も言っていなかったようです。


私はこの話の真実は、その男が詐欺師に騙されて、高い金を払って聖杯と信じ込んだ杯で何かを飲んだ。そのプラシーボ効果でしょうか。信じ込むことで効果が出た、と思っているいます。皆様には夢も希望もない話だと思いますけど。


念のため、プラシーボ効果についても話しましょう。

プラシーボ効果とは、例えば患者に偽薬を処方したとしても、それを患者自身が薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事を言うのです。要するに、今回の聖杯伝説に踊らされた男も、本気で聖杯と信じた杯で飲むことによって、前向きに生きることが出来たのだと新聞部では思っています。


皆様には期待させて申し訳ございません。

そう言えば、数ある失踪事件でも、部長である私の友人が失踪した事件を、以前にここで伝えたと思います。随分前ですね。私の友人であるバドミントン部の子がいなくたったと。

それはただの家出だったようです。先日から学校にも通っているので知っている方も多いですね。


実は世の中って、そんな摩訶不思議な事なんてあるわけないかもしれません。

ただ、生徒の皆様にはいつもこの広報紙を読んで頂いてありがとうございます。

 これからも皆様の興味が惹かれるような話を掲載するように努力いたします。


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