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第2話:街の喧騒と、初のクエスト

石畳の街並みが陽光に輝く。ルミエール王国の首都「エルグランド」は、まるで中世の絵巻物みたいだ。馬車のガタゴト、市場の呼び声、酒場の笑い声が響き合い、鼻をくすぐる焼きたてのパンの香り。俺、佐藤太郎、27歳、昨日まで東京のサラリーマンだったのに、今は異世界の冒険者だ。隣には、剣士のカイルがニコニコ歩いてる。「なぁ、太郎! この街、すげえ活気だな! お前と一緒なら、俺、冒険者としてやっていけるぜ!」

「はは、頼りにしてくれて嬉しいけど、俺もお前に頼ってるからな!」俺は笑うが、内心ちょっと複雑。俺のスキル【時間制限付きバフ無限付与】は、他人を1時間だけ無敵にできるチートだけど、時間切れで元に戻る。昨日、カイルにバフをかけてゴブリンを倒した時は爽快だったけど、効果が切れた後の彼の青ざめた顔が頭に残ってる。「お前がいないと、俺、ただの雑魚だ……」って言葉、冗談じゃなかったよな。

俺たちは冒険者ギルドへ直行。木造の大きな建物は、まるで酒場と闘技場が合体したみたいな雰囲気。屈強な戦士が剣を磨き、魔法使いが呪文書を読みふける。カウンターには、依頼書がびっしり貼られた掲示板。カイルが目を輝かせる。「よおし、でっかいクエスト受けて一発当てようぜ!」

「お、おい、初心者なんだから落ち着けよ!」俺が止める前に、カウンターの少女が声をかけてきた。ショートカットの黒髪に、好奇心たっぷりの緑の瞳。名札には「エマ」とある。「新人さん? ふふ、ずいぶん騒がしいコンビね。初クエストなら、薬草採取はどう? 簡単だけど、最近森が魔物だらけで油断できないわよ。」

エマの視線が、なんか俺を値踏みしてるみたい。ステータス画面で彼女をチェックすると、レベル3の魔法使い。才能はあるけど、体力が低いらしい。「なあ、エマ。お前、魔法使いだろ? 俺たちと一緒にクエスト行かないか? 俺のスキル、めっちゃ使えるぜ!」俺はニヤリと売り込む。

「へえ? どんなスキル?」エマが興味津々。俺は胸を張る。「他人を1時間だけ無限に強くできる! 試してみねえ?」カイルが横で「マジすげえんだから!」と煽る。エマは半信半疑だが、面白そうに頷く。「いいわ、やってみる。ただし、失敗したら笑いものよ!」


森の試練と、依存の第一歩

エルグランド郊外の森。木々の隙間から漏れる光が、地面にまだらな影を落とす。薬草採取のはずが、さっそくスライムがウヨウヨ出てきた。緑のゼリーみたいな体が、ヌルヌル動いて気持ち悪い。カイルが剣を構えるが、動きが鈍い。「くそ、ゴブリンより弱いはずなのに、俺、こんなもんか……」

「カイル、焦るな! 【筋力無限強化】【スピード爆発】!」俺の声に、光がカイルを包む。彼の剣が疾風になり、スライムを一瞬で切り刻む。「うおお、最高だぜ、太郎!」カイルの笑顔が弾ける。次に、エマに目をやる。「エマ、お前もだ! 【魔力無限増幅】【詠唱速度加速】!」

エマの体が金色の光に包まれ、彼女の杖が輝く。「え、なにこれ!? 力が……溢れてくる!」エマが試しに呪文を唱えると、普段なら小さな火花しか出ないのに、巨大な火球がスライムを焼き尽くす! 森に焦げた匂いが広がり、カイルが「すげえ!」と叫ぶ。エマも目を丸くして、「信じられない……私、こんな魔法使えるなんて!」

クエストは順調。薬草をカゴいっぱいに集め、ついでにスライムを全滅させた。だが、時計の針は無情だ。ステータス画面に【残り時間:5分】の警告。俺が叫ぶ。「急げ、街に戻るぞ!」でも、その時、森の奥から低いうなり声。でかい影が動く。狼型の魔物、フォレストウルフだ! しかも5匹! レベル5相当の強敵だ。

「マジかよ、時間ギリギリなのに!」俺が焦る中、カイルが突っ込む。「任せろ、太郎のバフがあれば余裕だ!」だが、バフの効果が切れた瞬間、カイルの剣が重そうに揺れ、エマの魔法が火花に変わる。狼が飛びかかり、カイルが押し倒される。「ぐっ、太郎、助けて!」

エマが叫ぶ。「私、こんな弱いままじゃ……!」彼女の声には、恐怖と悔しさが混じる。俺は歯を食いしばる。俺自身にバフはかけられない。剣を握っても、ただの貧弱なレベル1だ。だが、放っておけない! 「エマ、落ち着け! 【魔力再増幅】! カイル、【耐久力強化】!」残り時間わずかでバフをかけ直す。

エマの火球が狼を吹き飛ばし、カイルが立ち上がって剣を振り回す。なんとか狼を撃退したが、時間切れで二人は地面にへたり込む。カイルが息を切らし、「太郎……お前がいなかったら、死んでた……」エマが震える手で俺の袖をつかむ。「私、こんな強い力、初めてだった……でも、なくなると、怖い……また、強くしてよ、ね?」

その瞳に、俺はゾクッとした。感謝と、依存の色。ステータス画面に新たな警告が点滅。【依存度上昇:対象者の精神的依存が確認されました】。チートのはずが、なんか重い責任感じるな……。


絆の始まりと、冒険の予感

街に戻り、ギルドで報酬を受け取る。エマが正式に仲間入りを申し出る。「太郎、あなたのスキル、すごいよ。私、もっと強くなりたい。一緒に冒険して!」カイルも笑う。「だろ? 俺たち、太郎と一緒なら無敵だぜ!」

俺は苦笑い。「お前ら、俺のこと頼りすぎだろ。俺だって、弱いんだからさ……」でも、心のどこかでワクワクしてる。チートは時間制限付きで、俺自身は貧弱。でも、カイルの熱い拳とエマのキラキラした目を見ると、冒険が楽しくなりそうな予感がする。

ギルドの掲示板に、気になる依頼が貼り出されていた。「東の森で魔物異常発生。調査依頼、報酬高額」。エマが呟く。「なんか、最近魔物が増えてるって……」カイルが拳を握る。「よし、太郎! 次はでっかいクエストだ!」

俺は頷く。「よし、行くぜ! でも、バフがなくても、ちょっとくらい戦えるようになっとけよ!」二人が笑い、俺も笑う。依存かもしれないけど、これが俺たちの絆の第一歩だ。次はどんな試練が待ってるんだろうな?

(続く)

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