7 獅子の主達(兄弟)vsアクア&アース&シルフvs??? ③ 大罪の力と新たな乱入者
〜
アース視点
〜〜
3人称
〜〜〜
憤怒。
それは7つあある大罪の一つ。
己の興奮度合いによって、ステータスが上昇する。
それは、“限られた者”にしか与えられないスキル。
その条件は……
“他の宮を侵略し、合併すること”
その宮の主人に相応しい大罪が与えられる。
それが……
「憤怒って事ね……」
シルフは少し焦った様にして、そう呟く。
何故なら、数的優里を作ったにも関わらず、敗北の懸念があるからである。
しかも、アクアからの龍の通信によって入ってきた情報では、ブラフがあるらしい。
アース以外は使える便利魔法だ。
まあそんな事を、敵が知っているわけないが。
そんな事より焦るのは、ブラフがブラフとバレると短期決戦を終わらせようとして来るかもしてないからだ。
唯一の希望だったと言っても過言ではないので、緊急で一時的に対応できる策を考えながら、指示を出すには流石のシルフでもきつい様だ。
「龍巻」
“轟”
風は一瞬で巻き上がる。
「湧水」
その龍巻の中心部にアクアが無条件で大量に水を出す代わりに威力がない、湧水を撃ち込む。
そのお陰で、シルフの龍巻は水龍巻になる。
お陰で風刃の一つ一つのキレは増す。
ただし、その龍巻は動かない。
そんなのは当たり前。
動く前提の技だったら、最強だ。
ただ、そんなものは現実にない……はずだ。
ここにいるのが龍ということが最も重要だ。
アース。
それは地を司る古王龍。
地を動かすのは“誰よりも慣れている”
「地の動き」
地面が割れたかと思った瞬間急激に大爆発した。
その威力と土台の移動により、上手く獅子の主の弟を吹き飛ばそうとするも後続につづけるようにいく。
その圧倒的の力には惚れ惚れするもののさえいるだろう。
「地古王龍の怒り」
割れ目に向かって圧倒的な力を解き放つ。
その割れ目は爆ぜた。
そう、爆ぜたのだ。
「へえ、アース、あんた意外とやるじゃないの」
「龍宮様の話では近接戦闘に限っては俺でも負けることがあるかもしれないって言ってたほどだものね。でも、身内贔屓かと思ってたもの。正直期待以上ね!」
二人は仲良くそうつぶやく。
常では考えられないほどの剛力を持っているアースに感服したのだ。
これが全力か、といった風に。
古王龍筆頭のクリムよりも腕力だけは上だ。
まあ、腕力だけなので……
よくある、柔をもって剛を制すという奴である。
アースは脳筋と言うわけではないが……ん?本当にそうか!?
冗談は置いておき、脳筋ではないのだが、余り武術というものに興味を持たないのだ。
強いていうならば、“パワーこそが正義であり全てである!”と言うことだそう。
つまり、頭は悪くないし戦闘中もブラフや駆け引きなどの、相手とのやり取りも苦手ではないが、いかんせんそれ以外が頭が悪い……脳筋と言うことだ。
因みにアースが習得していない龍の通信もアースは“魔法なんてちゃちいものに頼るな!”との事である。
これにはアリティニーやクリムも頭を悩ませているとの事。
「級長戸辺命の大風」
シルフが堰を切った様に魔力を垂れ流す。
それには風に込められた意味がある。
「風纏」
その大風がシルフの体に纏わり付く。
シルフの周りでは“轟轟”と吹き荒れ、地に穴は空き、大気は割れた。
ただ、それだけでは終わらない。
「級長戸辺命の剣」
それを一言で表すには風剣。
眼には見えない。
しかしながら今も、そこに存在する。
“2本”も。
それの存在感はあまりにも桁が違う。
「シッ!」
かけ出す。
その間、僅か5秒。
その時、アクアは……
詠唱をしていた。
『大いなる水の神、水神よ、我に清く神聖なる水を与えたまえ!大いなる海龍よ、水を統べる力を与えたまえ!』
地から水が噴き出す。
湧水とは比べ物にならないほどの圧倒的な量。
神の権能を一時的に借り受ける事の凄さは誰にも分からない。
測る事のできない。
押し潰された。
誰もがそう思った。
思わずにはいられない。
神の力を防げるものなど神の名を冠するもの以外に居てたまらない。
金獅子、銀獅子、2体が全力を出したとしても……だ。
“どごおおおおおおおおん”
なってはいけない、音が鳴る。
それは……防衛に成功した音。
「共闘よ!」
そこには、半人半鳥がいたのだった。
〜
〜〜
〜〜〜
アースもアクアもシルフも、全員が全員焦っていた。
ここにきて、神鳥が現れたのだ。
この神鳥はは真っ赤な色にして、彩度の違いや濃ゆさの違いで鮮やかなグラデーションを描く。
其奴は鳳凰。
そう、鳳凰だ。
摂氏300℃。
急にまわりが暑くなる。
『シルフッ!アレの相手は私がっ!』
『相性から考えて、それしかないわよね……』
アースに行く情報ゼロ……
まあそれは置いておいて(置いておくべきではないが)風は熱を守る事が出来ない。
かろうじて吹き飛ばすことはできても、味方へ行く被害はゼロではないのだ。
アースは飛ぶ相手に対しては相性最悪だ。
それらを鑑みても、アクアしかまともに相手できないのだ。
「行くわよ!水乱打!」
「百の翡翠」
大きな攻撃で攻勢に出ても、1vs1の時は後手に回るだけなため、手数で勝負に出ることにしたアクア。
しかし、あまり有利は取れない。
最初からわかっていたことだが、そもそもの話で、技量で負けているのだ。
相手は風と火を司る。
どうして2つの権能を司っているのかはわからないが、主に敵を見て技を選んでいるからだ。
「聖水雨」
出来るだけ下に居る獅子の主達を巻き込む様に雨を降らす。
ただの雨の百倍の威力降って来るため、一粒で木は貫かれる。
しかし、鳳凰はまともに相手をしない。
「炎傘」
真っ赤な日傘がそこに出て来る。雨はそれに触れた瞬間空気に散る。
摂氏300℃、それを余りも舐めすぎた。
しかも単純に言えば、そこには大量の魔力が込められているので、600℃はある。
「くっ……」
アクアの絶望的な戦いは、今、始まる。
〜
〜〜
〜〜〜
一転変わって、シルフは、銀獅子を追い詰めていた。
「ふふふ、結界の魔力はどうしたのかしら?」
「クククッ、保険だよっ!」
その言葉とは裏腹に物凄く焦っていた。
保険を作らないといけないくらいには余裕がない。
鳥ノ宮が救援に来てくれたのは、実はものすごく安心する要素だ。
「シッ!」
その剣を振るう。
銀獅子は横に飛ぶ。
実際に後がなくなっている。
虎の子の金獅子はもう出てしまった。
隠れてシルフの相手をして貰っていたのだ。
それも失敗だ。
「グッ……」
初めて傷を受けてしまう。
級長戸辺命の剣を振るう時の風圧によって押し潰されかける。
切り傷もある。
弟に助けを呼べる状況じゃない。
手一杯だからだ。
つまり……
「詰みってことか……」
級長戸辺命の剣は頭上に迫って……