6 獅子の主vsアクア&アース ② 乱入者
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三人称
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「はあああ!地古王龍の貫く大岩」
マウンテンと言うべきだろう。
そのレベルでの大きな岩が“大気の中”に発生する。
何故こんなことができるのかと言うと、岩の成分だけを辺りの空気から凝縮した為である。
アースは地に関しては最強で地を行く存在なのだ。
ん?決して駄洒落では無いが……?
余りも大きすぎて天を貫いてしまった大岩(山)。
天を貫く大岩の方が合っている気がしなくも無い。
「天から落つる涙」
その瞬間、雨?涙が大量に降ってくる。
しかも、龍に当たる前に消えているので、フレンドリファイヤー無効機能もついている様だ。
いや、調整していると言った方が正しいのか、完璧な精度を誇っているアクアの力が凄いのだろう。
天晴と言うほかない。
「地古王龍の怒り!」
その時、大地は震撼し、大気は割れた。
ただ、そんな高威力の攻撃も“当たらなければ意味がない”のだ。
やはり、空中に逃げている。
「ごるうあああああ!降りてこいやああああ!地龍の雄叫びいいぃぃ!」
その瞬間、耳を劈き、鼓膜を破る音が聞こえる。
余りにも考えられない様な、音だ。
目に見える様にぐらりと揺れる。
そう見えてくるから不思議だ。
「聖なる水砲」
その瞬間、まるで蛇の様な水のホースが撃ち放たれる。
それは蛇蝎の如く結界を避けながら、獅子の主の下へ向かう。
「破あぁ!獅子の咆哮!」
獅子の主が叫んだ瞬間、水砲が破裂する。
雨が降る。虹が映る。
「聖なる泡沫」
地面から大量の泡が浮き出て来る。
ただ、これはアクアがアース対策で足の踏み場をなくす為に作り出したもののはずなのだ。
しかし、今は味方が不利になるだけだ。
敵は宙に逃げられるのだ。
この様なデメリットはあってない様なもののはずだが、それを理解して尚、これを使っている。
その理由は……
「土壇場でこれかよ!地龍の地団駄!」
そう言いながら、言霊は完成した。
足に込める力が、魔力が上昇する。
その足を全力で踏み抜く。
“どおおおおおん”と不協和音で空気が振動する。
地で波ができる。
そうして……
「泡沫が飛び上がる……かぁ……土壇場で良い性格してるよなあ……」
“やれやれだぜ”と言いながら、独り言ちる。
何せ、あの泡沫には、乱魔の意が込められているのだ。
まあ、影気なのだが……アリティニーは強力な力を持っているのだ。
その力は他者にも大きく影響を与える。
何人たりとも影響を与える事は叶わない。
そう、これこそが“神”の力なのだと思い知る。
決して超ゆることの叶わぬ壁。
比較すること自体が烏滸がましい。
それが神なのだ。
フローラとフラーラは異常な力だった。
双子とは言え、神クラスの力を同時に2人も得ることが出来たのだから。
「海神の汗」
突如発生したのは巨水。
その上には湯気がたちのぼり、一瞬にして、温度が倍になる感覚に陥る。
それは余りにも違和感のある感覚だ。
身体からも熱が発生し始める。
そうして……
獅子の主と接する。
「ぐっぎゃあああああああああ!」
余りの暑さに断末魔をあげてしまう。
救いを求める声を贈るも、獅子達は返事をできる様な状況ではない。
いや、1体だけ、返事をできる奴がいる。
「はああ、兄上は情けないですねえぇ……私は折角、風古王龍を撃破したと言うのに……」
そう、金獅子の登場だ。
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三人称
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アース
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ふう、やべえなこりゃあ……
いや、まあな、なんと言うか、こう、既視感を感じちまうって言うかなんつーかな……
この1大ピンチな状況に危機感を持てずにいるんだわ。
そんなの決まってっけどな。
「っ……まじかよっ!アクア!時間稼ぎだけで構わない。もうすぐつく!ってクリムが言っているぜ!」
さあ!ノレ!
相手をブラフに引っ掛けるためにはお前が不可欠なんだよ!
「そうね!タンクに変更よ!」
よしっ!ノった!イケるぜ!
「地古王龍種族特性、宮の大楯!」
その瞬間、黒々とした大楯が目の前に現れる。
更に、己の体が遅くなった気がした。
シルフが回復するまでの時間稼ぎとしてはもつだろう。
「黄金の爪痕」
「守護の大楯!」
金色に染まっている爪が眼前へ迫る。
そこに出て来るこの大楯!
“ガギイン”と、拮抗の音がする。
「食べる盾!」
その瞬間、大楯の中心が空き、牙が生えて来る。
そうして、金獅子の爪を喰もうとする。
それに気づいたのか、すんでのところで引いていく。
「金の弾幕!」
「硬化!」
真っ向から撃ち合い、弾き合う。
一撃の重さは力を込めた時と桁が違う。
少ないと言う意味だが。
ただ、数が違う。
毎秒100発は撃ち込められる。
ただ、全て弾く。
弾いて撃ち込んで。
弾いて撃ち込んで。
弾いて撃ち込んで。
弾いて撃ち込んで。
弾いて撃ち込んで。
弾いて撃ち込んで。
弾いて撃ち込んで。
弾いて撃ち込んで。
ただ、作業の様に繰り返す。
集中し続ける。
「金の一撃」
“ドゴオン”!
余りの威力に吹っ飛んでしまう。
今までとは違った。
数だけじゃなく、質に尖らせてきやがった。
ただ……
「そりゃあ、込められてる力が違う。未熟者のお前なんかより」
「ハッ!どうとでも言いやがれっ!」
ラッシュは続く。
永遠と。
そう思えて来るほど長い攻撃。
「黄金の爪撃!」
「地古王龍の大顎」
漆黒の盾から地龍の顔面が生えてきて、その黄金色に煌々と輝く3つの斬撃を噛み砕こうとする。
その、黄土色の顔面は爬虫類の瞳の様に爛々と輝いている。
クククッ、いやはや、おもしれー戦いだ!
「あ"ーあ"ーあ"ー!いらっらいらするぅうう!黄金の一撃!」
「漆黒の盾弾き!」
ここに込められた権能っつーのはえげつねーな!
ぷはははっ!
流石龍宮様だぜ!
俺達の権能と龍宮様の権能を込めた古代ノ漆黒程じゃあ、ねーがな!
「級長戸辺の吐息」
“煌”
その音は耳を揺らした。
皆一様に、その方向を見る。
ハハッ……
遅かったじゃねえかよ……
「シルフッ!このノロマめっ!」
「ふん!一昨日きやがれです!」
漸く……遂に……か……
俺も全力を出す時が来た様だ。
「地古王龍種族特性、地を司る剣の王」
俺の右手には魔銀で作られている大剣が握られる。
「地属性付与」
比較的魔力がを通しやすい素材だ。
龍ノ宮ではそう言う素材がよく取れる。
「始まりだ!第二ラウンドのな!ここでお前らには消えてもらう」
「ふん、アースに言われるのは癪だけどまあ良いわ。龍宮様にも褒めてもらおうか!」
「フフフッ!手土産としてはちょうど良い。何日慰めてもらおうかしら?」
1大ピンチ。
そんな状況下で2人共不敵に笑う。
「クククッ、じゃあ兄上、俺達も……本気を出させてもらおうか!」
「ハハハッ!おう!」
ただ、獅ノ宮は昔、白馬ノ宮を滅ぼしたことがある。
「「獅子の憤怒!」」