5 決着 vsフローラ&フラーラ 後編 アース&アクアvs獅子の主 ①
「かはっ」
フラーラは血を吐き出す。
空間に対しての付与魔法だ。
非効率極まりない為、生命力を消費したのだろう。
「ぐう……やってくれるじゃねえか!」
そう毒付く。
ただ、虎の子のフラーラはもう居ない。
確かに影気の底はついたが、自然回復で3分待てば影纏位は使えるようになる。
少し時間を稼ぎながら、フローラの相手を……!?
残ってる?
1回分だけ影神龍の咆哮を撃てる。
これで……
虎の子のフラーラを完全につぶす!
「影神龍の咆哮!」
フラーラが漆黒に染まる。
何もかもを塗りつぶすような色だ。
レベルが上がりました。
「フラーラぁあ!」
「おい、お前らの大黒柱であるフラーラが死んだぜ?はっ!まだまだだなぁ!妹を守れなくて?無様だなぁ!」
悪役ムーヴと言うやつだな。
だが、不思議と性に合っている気がする。
「許さない!絶対に許さないいいいい!」
フローラは発狂する。
ははっ、こいつ頭に血が昇っているな。
闘いは冷静さを失った方が負ける。
「“怒りの狂化”」
何だ?この怒気は?
質量が変わり空気の質が変わる。
フローラは熱を発し始め、湯気が漂う。
空気が震撼する。
「あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁああああ!」
“雄叫び”いや、“産声”だ。
もはや新しい生物に生まれ変わっている。
狂ってるな!
「獣化ぁ……」
突如フローラが巨グマになる。
「へぇ……まじか?」
ここに来て更に奥の手を……?
た……だ……俺はさっき、レベルが上ったおかげで影気が全回復している。
「影神龍化!」
その状態になったせいで、深淵ノ鎧が解除される。
「深淵ノ鎧」
再び、深淵ノ鎧を装備し、暴れ熊がいる場所へと向かう。
「があああ!」
拳を振り抜いてくる。
それは非常に単調だが、それを補うほどの速さと力強さを得ている。
まともに受けたら深淵ノ鎧が砕けてしまう位には、強力である。
ただ、
「避けたらどうって事ねえな!」
自らの体に直撃する寸前のような拳を、半身を回転させるようにして避ける。
当たらなかったはいいものの、空気が衝撃を伝えたせいで、体が衝撃を受けてしまう。
「かっ……はっ……」
あまりの威力に首が揺れてしまう。
正直言って、このレベルの突きを放ってくるのは予想以上だ。
そして“期待以上”だ。
「影気解放、第二門、影天歩」
軽く、全力を使おう!
軽く?
まあいいか。
正直言って、足場が黒く染まってしまうところ以外は完璧だ。
いざとなると、結界にも応用する事が可能だしな。
「古代ノ解放」
その瞬間、古代ノ漆黒が複数の属性を持ち始める。
まるで、神秘が秘められているような神々しい雰囲気を纏う。
「古代ノ炎」
煌々と金色に輝きながら燃える炎片手に持ち、振るう。
司会が金色に染め上げられ、何もかもを飲み込んだ。
「ぐ、がああ……」
その瞳は絶望一色に染められる。
“敵わないよ”
そう言っている気がしたならない気がした。
そして今、目の前で放つ。
「龍の咆哮」
レベルが上がりました。
〜
アリティニー視点
〜〜
3人称
〜〜〜
一方変わって、アースの所では血の気が早い獅ノ宮に攻め立てられていた。
「いやっべぇなぁ。こりゃあ……」
アクアとアースが2人がかりで仕留めに向かっているのにも関わらず、飄々としている獅子の主にアースは舌を巻いていた。
一方アクアも、龍宮であるアリティニーと戦ってきたが、更に強く感じてしまっている。
いや、アリティニーは別に全力ではなかったが……
クリムしか気づいていないが、主には、能力値の上昇補正が付く。
だが、それは普通は気づくものではない。
要は、強い奴が主になり、そこから成長補正がつくことになり、更に強くなるという現象だった為、ほぼ循環していたのは別の話。
「大地の怒り」
床に亀裂が入り、“先程まで獅子の主がいた場所”が爆裂する。
足場が消える。
しかし、獅子の主は何故か空中で楽しそうにステップを踏んでいた。
頭の中で“プツン”という音が、アースの中でなってしまったのはいうまでもないだろう。
「ふざっけんなあああ!貫く大岩!」
「あんたぶちぎれてるんじゃないわよ!水嵐」
突如として、割れ目から大量の岩が飛び出してくる。
更に極大サイズの渦巻が獅子の主を襲う。
それらは獅子の主をピンポイントで狙い飛んで行く。
しかし、一本も当たらない。
何故か獅子の主の足元で大岩が砕け散っている。
アースは、あまりにも不自然な光景に眉を顰めてしまう。
「どういう事だあ?」
「何よ?これ?」
アクアとアースが思わず漏らしてしまう声は疑問だった。
それもそうだろう。
アクアだって、技も撃っている。
アースだってそうだ。
それなのに、足元で弾かれる。
下手をしたら、自らの主、“影神龍アリティニー”より強いのでは?という、湧き出てはいけない感情が溢れ出す。
その気持ちを否定するかのように、首を横に振っているが……
「アース(アクア)、俺達(私達)は本気を出す(わよ)」
その瞬間、その言霊は完成す。
「水古王龍種族特性、神の聖水」
「地古王龍種族特性、大地を統べる将軍」
神聖な雰囲気に包まれて、しかしながら、その瞳孔は爛々と輝きながら瞳は細まっていく。
アースは配下の龍達を復活させることに成功する。
しかも、配下の地龍達は位階上昇したかのような強さを得ているのだ。
余り言う事は無いが、奥の手と言って差し支えないものを出す。
「GAAAAA!地龍の雄叫び!」
そう言った瞬間?に、大合唱が巻き起こる。
アレは、地龍達への合図だった様だ。
獅子の主は思わず耳を塞ぎ、頭を抱えてしまう。
「神聖なる大波」
何もかもを飲み込もうとするその大波は、獅子の主と拮抗する。
予想以上の威力だ。
「地古王龍の怒り」
それは、空気を割った。
比喩表現では無い。
その空気が破れたのだ。
そう表現することしかできないほどの力の塊だった。
「くっ、対龍結界、対地属性付与!」
しかし、寸前の所で弾かれる。
これこそがアースの真骨頂だ。
圧倒的な火力による蹂躙。
龍達にも得意分野がある。
対個人戦最強格である、アース。
懐刀であるスキア。
対軍最強のクリム。
持続性最高峰のシルフ。
遠距離火力最高峰のアクア。
そして……
全てにおいて最強の“影神龍アリティニー”。
止まる事は無い。
止める事はできない。
そんな事をすれば、自らが滅ぶ。
これは、
後に暴れ龍であり、神龍と呼ばれるようになる、アリティニーの英雄譚である。