4 激突 vsフローラ&フラーラ 前編
「深淵ノ鎧」
「単騎で攻めてくるなんて中々すごいね!」
フローラは、一気に飛び込んでくる。
「影気解放!」
取り敢えず、影気を解放し、敵に圧力を与えていく。
中々どうして、戦いとは難しい物なのだろう?
「剣神龍剣術、龍撃20連撃」
恐らく剣神龍剣術1級クラスの剣術だ。
しかし、流れる様にハンマーで受け流してくる。
……それどうやって使ってるん?
「影気解放、影神龍剣術ニノ型、影喰ライ」
「はぁ!重力倍増!」
影龍の形をした剣が、フローラへ迫る。
そこで使ってきたのは……
「重力魔法か……こりゃあ厄介者だな」
そう、重力魔法。
己が触れているもののみ、幾らでも重力を変えられる。
ただ、一定値を超すと、詠唱と魔法力を消費するのだ。
「うりゃっ!そんなこと言わんでよね!」
「うっせえ!ちびっ子ども!」
「あーあ、地雷踏んじゃったの!許さないの!」
地雷を踏んでしまった様だ。
構わないがな。
しかし支援魔法はどれだけの影響を与えているのかが分からんが、相当優秀だな。こりゃ。
色々とアンバランスん極まれり、みたいなところはあるがいいパーティーだ。
しかし、雑魚相手に眷属召喚が持っていかれちまったのが本当に痛い。
「龍の咆哮」
ギリギリでフラーラに当たる様に調整する。
まあ避けられるだろうが。
「きゃっ!」
「ラーラ大丈夫!?」
は?当たんのかよ?
まあそれよりも……ククッ、おいおい、戦闘中は……
「よそ見は禁物だぜ?」
決めてやるよ!
「影気解放、影神龍剣術一ノ型、空虚」
「!?低重力魔法」
成程、そう来たか。
無理やり砕くものかと思っていたが、逃げるとはな。
「おいおい、背中を見せて逃げるなんてとんでもねえなぁ!」
「この私が逃げるわけないでしょ!」
ハンマーが投げられる。
“そう来たか”と思う。
こいつ自体の重さもなんだかんだ言って十分だ。
古代ノ漆黒に魔力を込める。
「龍爪」
ハンマーが3つに寸断される。
俺の爪を使った武器は相当優秀だ。
古代の力が込められている刀も中々だ。
「影ノ拘束」
「くっ」
捕まっちゃたなあ!
これで終わり……
「じゃだめだよな!」
「はあ!“凶暴化”!」
「……!?姉様!?だったら、私も!“凶暴化”」
それは、種族固有能力!?
大抵の場合は自動型*だと思っていたのだが……
《自動型とは、常に発動する能力。ON/OFF切り替え可能。影龍の場合は“影気解放”を媒体にして発動している》
くっ、力負けしそうだぜ……!
さすがは熊といった所か!
「中々強いじゃないの?でも……」
戦闘中に精彩を欠いた戦い方をしちゃいけないって知ってる?
知らないんだろうけど。
「影気解放、影神龍剣術ニノ型、影喰ライ」
影龍の様に剣が唸る。
蛇蝎の如く、目指す場所はフローラ一直線。
「はああああ!重力魔法!」
こりゃまた面倒な。
魔力補助までかかってるから、3日3晩かかるだろうな。
さっさと蹴りをつけなきゃ、クリムの時間稼ぎが無駄になっちまうかもな。
「影気解放、影纏、対象、“古代ノ漆黒”」
爬虫類の瞳は細い。
その瞳が更に細まってくる。
「第二ラウンドと行こうか!」
「あんた!こんだけ戦力持ってきたら、龍ノ宮が大変なことになるよ!」
あ、そんなこと気にしてたのか!
「問題ねーよ!主戦力の半分の古代の地龍と、古代の風龍と、古代の水龍が、いつでもスタンバイしてるからな!」
「な……!?」
暗にお前らなんて全力の半分で仕留めれるんだよ!舐めるな!
といっている様なものだから失礼極まりないな。
「影気解放、第二門」
「はあぁ!」
フラーラまで戦ってくるから、結構面倒だな。
“凶暴化”してるからか、先ほどのフローラクラスの戦闘力がある。
熊を二体相手するのは非常に面倒である。
「はあ!」
フラーラが単純な一撃を打ち込んで来る。
単純だ。余裕だな。フローラを警戒するだけで……!?
「がっ……」
避けた俺に強力な拳が打ち込まれる。
「阿吽の呼吸だ」
酷い位に、痛みつけてくるじゃないか。
死線を潜り抜けて来た自信が粉々になっちまうよ。
「天影歩」
第二門、それは常時影気解放をする事で、身体に与える負担を半減させ、普段は使用できない影気術を使用することができる。
しかし、普段使いするには負担が大きすぎるし影気の消費も大きすぎる為、常時発動は今までしてこなかった。
だからこそ、全力で相手しないと勝てる相手ではないことを把握した俺は、己に課していた制約を取っ払う。
天影歩は、重力を無視しながら活動できる。
だからこそ……
「はあ!」
空中でバク転して途中で地面につき、全力で飛び跳ねながらフローラ一直線に古代ノ漆黒を振るうことができるのだ。
「ずるいわ!」
「アタオカなの!」
結構散々な評価を受けている様だ。
しかしまあ、影気が切れてしまいそうだ。
たーだ、これがある限り問題ない。
「スキア、影気足りなくなっちゃった」
『もう、龍宮様は直ぐそうやって……私よりも影気の量が少ないんですからあんまり無茶しないでくださいよ?』
「おうおう、わかってるぜ」
「あんた、誰と会話してんのよ?」
再び俺に足りなかったものが体に充填されていく。
満たされてゆく感覚が心地よく感じる。
「これで全力が使えるぜ!」
そう、今まで出来なかった全力が今、使える様になった。
解放されてしまった。
“影神龍”が……
「影神龍固有能力、“影神龍の怒り”」
そう、神龍、それは神に匹敵する龍達を総じてそう呼ぶ。
神の力、いや、真の力を出した時、熊などは相手になる事は決してないのだ。
「影神龍の咆哮」
それは考えられないほど強力な力の放出である。
漆黒に染まった一筋の線だ。
しかし、その線は力強く太い。
そして森を吹き飛ばす。
しかし、凶暴化した熊は力の差を理解できない。
できるわけない。
「悲しいな」
思わずそう呟く。
“窮鼠猫を噛む”、“三寸の虫にも五分の魂”と言う様に弱者に対して決して油断はしてはいけない。
「があ!」
“反射魔法付与”
次の瞬間、俺は膝をついたのだった。