夫を侮辱された半魔の姫は激怒する
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「王太子殿下、これは一体どういうことですの?」
わたくしこと『スーザリア・ルフェリアス』は目の前に立つ『ラインハルト・エン・サザールス』王太子殿下に向かってそう問いかけた。
わたくしには今の状況が全く理解できない。
今日は年に一度の、王城で開かれる夜会の日。
わたくしは少し崩れてしまった髪を治すために一度この場を離れていた。そしたらいきなり従者がやってきてわたくしを呼びつけたのだ。
急いで会場に戻ると、そこには驚きの光景が広がっていた。
わたくしの、愛しの旦那様が王太子の前で跪かされていたのだ。
「おぉ!スーザ!美しき姫君よ!今、貴方を苦しめてきたこやつに鉄槌を下しているところだ!!待っていてくれ、すぐに貴方を解放しよう。」
王太子は大袈裟な身振りでそう言った。
今、こいつは何を言った?
我が愛しの旦那様に、王太子が鉄槌を下す?しかも、理由はわたくしを苦しめてきたから?
「殿下、何を言って——」
「こやつめは!!スーザリアを長年苦しめてきた!!茶会や夜会に行かせず、外へ出さず、あろうことか屋敷内では暴言を吐く始末!!こんなやつを許すわけにはいかん!!」
暴言?何を言っているの?屋敷内でも我が夫はわたくしに優しいわ。
外へ出ていないのも、わたくしが断ったからよ?
「殿下、お言葉ですが、そのようなこと、ございませんでしたわ。」
「おぉ!!可哀想なスーザ!脅されているのだね!?今すぐ貴方を解放しよう!こやつの魔の手から!!」
「ですから、そのようなことは———」
「女性を脅すなど言語道断!!このような下劣で、下等で、下賎で、———」
王太子は我が夫を侮辱し続けた。
会場内にそいつの声が響く中、わたくしの中で何かが切れた音がした。
「お黙りになって。」
「ス、スーザ?一体どう——」
「聞こえなかったのかしら?わたくしは、お黙りになってと言ったのよ。」
わたくしは夫の元へ駆け寄った。
「ご無事ですか、フェリックス様!!」
「あぁ。君こそ、大丈夫だったか?怪我はしていないか?」
わたくしの旦那様は立ち上がって、優しくそう聞いてきた。
やはり夫は優しい方ですわ。
「大丈夫ですわ。一体何があったのですか?」
「君がこの場を離れてすぐ、王太子に・・・というか、衛兵に突き飛ばされてな。何が何だかわからず困惑している間にこんなことに・・・。」
「衛兵に、突き飛ばされた?」
「あぁ。王太子殿下の命令が飛んで・・・」
わたくしはにっこりと笑って、王太子の方を向いた。
「殿下、これは一体どういうことですの?わたくしの、愛しの、旦那様を、衛兵に、跪かせた?説明してくださいな。」
「い、愛しの!?スーザ、君はそいつに苦しめられてきたのでは・・・!?」
「わたくしをその名で呼ばないでください。許可した覚えはございませんわ。そいつという呼び方も、許しません。それに・・・わたくしは、説明してくださいと、言いましたわよね?答えてくださいな。」
「き、君を助けたかったんだ!!」
わたくしはにっこりと微笑みつつ、首を傾げた。
「助ける?誰から、誰を?わたくしを、フェリックス様から、だというならば、お門違いですわ。」
「き、君はそいつに苦しめられてきたんじゃなかったのか!?」
「何をおっしゃっているの?」
「き、君の周りにはいつも見張りがいるじゃないか!!監視していた証拠だ!!」
わたくしは目を細め、魔力を少し放出した。
「あれは護衛ですわ。どっかの誰かさんが、わたくしにちょっかいかけてくるせいで旦那様と彼らの仕事が増えてしまったのよ。」
会場がパキパキと音を立てて凍っていく。
それを止めることができるのは誰もいない・・・一人を除いて。
「スーザ、よしなさい。」
「しかし、旦那様!!」
「君が手を汚す必要はないんだよ。」
「あいつは貴方を侮辱したんですのよ!?」
旦那様はわたくしに優しく微笑みかけた。
「私のために、君が手を汚す必要は、ない。」
「っ・・・!殿下、感謝してくださいませ、わたくしの夫の優しさに。フェリックス様、貴方がそう言うのならばわたくし、手を下すのはやめますわ。ですけれど・・・落とし前はつけるべきですわよね。ね、陛下。」
わたくしが目を向けた先にはこの国の国王陛下がいた。
「た、頼む!!我が国を見捨てないでくれ!!」
「いやですわ。それがものを頼む態度ですの?」
「お、お願いします!!息子は廃嫡させます!だからどうか!!」
「お断りいたします。本日をもって、我が公爵家から王家への援助を取り止めます。また、我らが魔族とこの国の同盟も破棄します。」
国王は、この世の終わりのような顔をした。
「安心してくださいませ。別に、この国を襲うと言ってるわけじゃありませんもの。」
「我が国を、私を、見捨てないでくれぇ!!」
「わたくしはね、怒っているんですのよ。夫を侮辱されたことに。これだけで済んだこと、感謝してくださいましね。さ、旦那様。わたくしの実家に行きましょう。」
「あぁ。」
二人は楽しげに会場を後にした。
数日後、王家の借金が明かされ、公爵家からの援助により王家が存続してきたことが国民に知れ渡った。
そしてそのまた数日後、王家がなくなり、国民たちによってその国は魔族の配下になることになったが、それは全くの余談である。
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