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一つ対応したらまた一つ?!

エルヴィーノとクレメンテの間でダンテは、言う、クレメンテが求めるものを。

それが終わり休息中のダンテに、予想外の客がやって来た──




「エルヴィーノ陛下。来ていただき感謝いたします」

「いや、婚約おめでとう、ダンテ殿下……」

 平静を装うとしているがぶすっとしているのが分かるので、私は心の中で苦笑した。

「エルヴィーノ陛下。そんなに私が四人もの人数と婚約しているのがご不満ですか?」

「!!」

 図星のようだ。

 さらに確信をつくついでに軽く説教をしてやる。


――まぁ、説教できる立場じゃないんだけどネ!!――


「ご安心を、私は四人とも大切にいたします。誰か一人を贔屓するような事は致しません」

「……そうか」

「ところで、差別した件は謝れましたか?」

「謝って……」

「謝っていません、貴方は」

 きっぱり言うクレメンテの発言に「クレメンテは謝罪されたと受け止めていない」事を再確認する。

「此処ではなんですから向こうで話しましょう」

 そう言って私はバルコニーへと二人を誘導する。



「では、クレメンテ。エルヴィーノ陛下に何故そう思っているか伝えましたか?」

 私の腕を掴んでいるクレメンテは首を横に振った。


――だよねー……――


「――エルヴィーノ陛下」

「何ですか? ダンテ殿下」

「クレメンテは、貴方が冷たい言葉をぶつけた事に今腹を立ててるわけではないのです」

「で、では何に?!」

「もっと単純です『ぶつけた事をしょうがなかったこと』にして『なかった』事にしようとしている事に怒っているのです、違いますか?」

 そうたずねると、クレメンテは小さく頷いた。

「で、では、どうすれば?」

「……クレメンテ殿下。此処迄言ってもお分かりにならないのですか?」

 若干私は呆れの眼差しを向ける。

「あった事をなかった事にはできない、ですから――」


「『アレは自分の罪だ』と認めた上で『罰を受ける覚悟』を持たないと駄目なのですよ」


 少しだけ嘘をついた。

 クレメンテはエルヴィーノ陛下に罰を与えたい訳ではない。

 それだけは嘘だ。

 私はちらっとクレメンテを見て、謝罪するように手を握って頷いた。

 クレメンテも察してくれたようで頷き、手を握り返してくれた。


「その結果、許される許されないはクレメンテ自身が決めることですので、これ以上は私は何かいう事はできません」

「……ダンテ、エルヴィーノ陛下……いえ、兄様と二人っきりにしてもらえますか」

「勿論」

「すぐ、戻りますから」

「分かりました」

 私はクレメンテの言葉を信じて、バルコニーを後にした。





「ダンテ」

「兄上」

「エドガルドで良いと……」

「おっとすみません、もう名前呼びでいいんですものね」

 婚約発表と、比翼副王就任は同時に行われているので、エドガルドを公で兄上と呼ぶ必要はなくなったのを思い出し、私は謝罪する。

「ああ、ところで……」

「どうしたんです?」

「クレメンテとエルヴィーノ陛下は大丈夫そうか?」

「大丈夫じゃなかったら、エルヴィーノ陛下の事を父上達に頼んで〆てもらいますから」

「そ、そうか……」

 エルヴィーノ陛下を〆るのは本当は私がやりたいのだが、まだ国王ではない私がやったら不味いので、父上にそれは頼んでおく。

 事情は既に説明しているし、理解しているのできっと、きっちり〆てくれるだろうと思っている。



 とか、のんびりしていると、個人的に聞きたくない声が耳に届いた。


「おお、そこまで派手な宴ではないな!!」

「サロモネ王の時よりは派手だが地味だ、宴は派手でなくては!!」

「でもでも、美味しい物はたくさんあるよ!」

「三人とも、今回ここに来たのはそう言う理由ではないでしょう?」


 びしりと硬直し、額から汗をたらしながら声の方を向く。


「ダンテどうした?」

「ま、まさか……」

 神様から聞いていたが、やはり心構えはできてないし、驚いてしまう。

「よぉ!! サロモネ王の後継者!! 婚約したんだってな!! 自国以外の連中と!! すげぇな!!」

 燃えるような真っ赤な髪に、褐色の肌に、赤い目の大柄の男が酒瓶を手にしながら陽気に声をかけてきた。

「あの……もしかして暴炎竜ロッソ様……でしょうか?」

 声を絞り出すように言えば、男は――ロッソはにっと笑った。

「その通りだ!!」

 酒瓶に直に口をつけて飲み干し、男はふぅーっと火を噴いた。

「な、何故暴炎竜ロッソ様が?!」

「俺だけじゃねぇぜ!! ビャンコに、ヴェルデ、ネーロ他の四大守護者全員来てるぜ!!」

 会場がざわめく。

「……何か嫌な予感がしてたと思ったらこれですか……」

 私は知らぬように呟く。

「ダンテ大丈夫か」

「大丈夫です、私は多分大丈夫」

「大丈夫じゃないではないか!! いいから座れ!!」

 エドガルドに促され、椅子に座らされ水を飲まされる。

 水を飲み干すとコップをテーブルに置いて深呼吸を繰り返す。

「あの……何の御用……」


「この酒うめぇな!! おいもっとくれよ!!」

「この果実水は良い……もっと欲しいのだが?」

「わーい! 料理っておいしいなぁ!!」


――話聞いてねぇ!!――


 好き勝手に動き始めている三人を若い女性が頭を叩いて首根っこを掴んで引っ張ってきた。

 雪の様な白い髪に、大地の様な褐色の肌、茶色の目に、うっすらと紅が塗られた唇の美しい容姿の女性。

「この姿では初めてですね、私はネーロ。後継者様、まずはご婚約おめでとうございます。そしてこの三名が申し訳ございません」

 女性――地母精霊ネーロはそう言って頭を下げた。

「お、お気になさらないでくださいませ……」

「いいえ、この三者全く学習しておりませんの。守護者の自覚があるのでしょうか?」

「ちょ、ネーロ!! 俺はちゃんと仕事してるぞ!!」

「私もしてますよ!?」

「僕だってやってるじゃないか!!」

「仕事だけすればいいってものじゃないのですよ、お三方?」

 ネーロ様がそう言うと、他三名は硬直し、その場に正座した。

「大人しくしていてくださいね」

 ネーロ様が笑ってない笑顔で言うと、三名は何度も振り込人形のように首を縦に振った。

「ご婚約と比翼副王任命の件、こちらにも届いております」

「は、はい……そ、それで……」

「ご婚約者様達と比翼副王様を見て確信しました、貴方様なら必ずサロモネ王の最後の願いを叶えられると」

「え、えーと……夢のその……『赦したまえ、救いたまえ』とかそう言うのと関係しておられますか」

「はい」

 私にしか聞こえない声でネーロ様は喋ってる。

 私もだから同じように言葉を返す。

「この休暇の後の学期の召喚基礎で貴方様は最も適した召喚すべき者達がいるべき場所へと転移します。そこでメーゼに対応する最後の守護の要となるものを手にするでしょう」

「え?!」

「そして悪意にはお気を付けを。貴方様しか生せぬことなのですから」

「……分かりました」

 そう答えると、ネーロ様はにこりと笑って、三人の首根っこを掴んで引きずりながら頭を下げて宴の場を後にした。



「「「ダンテ」」」

「ダンテ様」

 呆然としていた私にエドガルド達が声をかけてきた。

「一体何だったんだ? 四大守護者達が急に来るとか聞いていないぞ?」

「私とて聞いていない、ダンテどういう事だ?」

 説明を求められる。


――どうしよう――


 かなり重要なことすぎるが故に喋る事が良いのか分からなくなる。


『サロモネ王の話をしていったとだけ言え』


 神様の助言が来た。

 私はそれに従う。


「サロモネ王の話をされていきました……」

「それだけ?」

「はい」

「……まぁ、ダンテはサロモネ王の後継者とか超える者とか言われているからな……」

「ははは……」

 皆の言葉に、私は罪悪感が湧き、渇いた笑いを浮かべるしかなかった。







小心者でもありますからね、でも頑張ってますダンテも。

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