表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅ぶ前にゃー叫ばなやめれんッ!!!  作者: シ流つっけ
レグナトール家〈中編〉
42/42

夏のホラー2021


 あれは、いつ滅んだ国だったかなぁ?まぁそれは置いといてね、西の方の島国にイバラ姫とボタン姫っていう〝かくれんぼ〟大好きな双子姉妹が居たんですよ。そんで、一週間に一度お友達のクルン、チム、スー、イトが集まれば、お城はたちまち〝せかいたいかいかいじょー〟になっちゃう。


 〝今日の鬼はクルンの番!〟ってね、順番に役を回して遊んでるんですねー。さっそく、クルン以外は百を数えている声から、胸を高鳴らて赤い絨毯の階段を駆け下り、逃げてっちゃう。みんな迷わず廊下を駆けていくから、慣れたもんですよ。


 けれど、今日のイバラ姫とボタン姫のドキドキはいつもの万倍だった。なぜなら、新しい隠れ場所を見つけていたからなんですよねー。ガチャで新しいキャラが出たら、皆さんも早く使ってみたいと思うでしょう?そんなものですよ。


「私たちはコッチ、チムはアッチっ!」


 と、大きな声で途中まで一緒だった友達と別れちゃう。そんで一階で別れてから十秒後、コソっと双子姫だけ階段に戻ってくるわけですよー。どうしたんでしょうね?階段のあるエントランスには、立派な女神像が三つ。それが並んでたって全然、開放感は損なわれない。そんだけ広い玄関なんですよね。


 三つの女神様は、それぞれ〝過去〟〝現在〟〝未来〟を司ってるっていうんだから、そりゃお偉い方々だ。大事にしないといけませんよーって、って言ってるそばからどうしたんだい?双子姫は〝未来〟を司るやわらかい表情の女神像に近寄っていくじゃないですか。すると、二人でよいっしょよいしょって、それを横にクルクルと、バレリーナのように回し始めるんですよ。


 そ~れ一回、二回、三回転と、回すたびに、何だろうな?離れた場所から何かが引きづられて、擦れる音がするんです。ズルル~ズルル~ってね。聞いていた感じ1メートルくらいかな?いや、ものが引きづられてたとしたらね?それくらい分、摩擦音を聞いたら後は像を回しても、何も聞こえない。もう全然音はしなくなるんです。


 そしたら、双子姫は白い段の陰までトコトコトコ~って走ってって、真っ赤な敷物をフワっとどかすんです。そしたらソコにあるんですよ。地下へと続く黒い階段が!


 どこまで続いているかは、全然見えない。だって明かりも何もありゃしませんから、真っ暗ですよ。だけどね、一段目にマッチとランタンが置いてあるんです。こりゃ双子姫が事前に用意していたんでしょうね。すぐに灯を点けて、たんたんた~んっと降りてっちゃいます。


 そうするとね、不思議なんですよ。双子姫はどんどん暗闇の先進んじゃって、白い階段の裏はもう誰も居ない。誰も周りに居ない入り口は、地下からはジメジメ~っとした嫌な風が吹いて来てたんですよ?下から上へ。なのに、めくってた赤い絨毯がね、パサっと入り口に覆いかぶさるんです。まるで元に戻るようにですよ?普通逆じゃありません?


 何か嫌だな~、怖いな~、イバラ姫とボタン姫大丈夫かな~って心配になりますよね?でも、彼女達はかくれんぼに夢中だから、お友達から〝隠れ上手〟っておだてられてるもんだから、石造りの暗闇の中で、お友達が最後まで見つからない自分を探し続ける想像に目を輝かせて、構わず、ずっと階段を下りってちゃうんですよ。


 でも残念。結局先にあったのは、行き止まり。総なめするようにね、辺りを照らしたところで、湿った石積みの壁が、三方向を囲っていますから、もうこれ以上はどうしたって進めない。それでも、多少の隙間はあるんでしょうね?生暖かい風だけは、いつまでもまとわりついて離れないんですから。


 当然、イバラ姫もボタン姫も〝なんだー〟ってそれはもうガックリです。地下迷宮のような、立派な隠れ場所を期待してたんでしょうね。いつかは、お友達と一緒に冒険することも楽しみしていたんでしょう。


 しかし、項垂れている訳にはいきません。ここが、下り階段の一本道しかないとしたら、どこにも隠れられないんですよ。双子姫の頭の中では、絨毯はめくれて入り口が見えたままです。そんないかにもな所、絶対、鬼役は探しにきちゃうじゃないですか!


 双子姫は、慌てて来た道を戻ろうと振り返ります。するとバッと人の顔が照らされるものですから、もう〝きゃぁぁぁぁぁぁ!〟って尻餅ついて〝わぎゃぁぁぁぁぁ!〟って跳ねて壁まで逃げて…。それと、目の前のものを否定したかったんですかね?首を横に振りまくってしょうがない。


 そんな狂乱の双子姫だったんですけどね、そんな彼女達にかけられる声は、とっても優しいおじいちゃんの声だったんですよ。


「おう、おう、おどろかせて済まぬな、イヌヌ姫と、ポッケ…うぉほんっ、スイッチ姫よ」


 おじいちゃん、ボケが始まっているんですかね~。二人の名前が全然違うものになっちゃってる。でも当の本人は、優しい声に安心しているから、もう〝なにそれ~!〟とゲラゲラと笑い転げちゃいます。怖い目思いをした後だからですかね~。その動転した気分の勢いなのか、肝が冷えた分を払しょくする為なのかは分かりませんがね?すごく笑っていましたよ。


「ふむ、何をそう笑うかは分からぬが、元気を取り戻したようで何より。しかし姫々よ、何かお困りのようであったが?」


「あっ!そうなのっ!早くしないと鬼が来ちゃうのっ!!どこかに隠れないとっ!」


 おじいちゃんの問いかけに、双子姫はかくれんぼのことを思い出すんですね。


「何?姫々よ、汝は鬼に追われておるのか?」


 けれどもその言葉で、おじいちゃんの声色が険しくなっていくんですよ。


「そうっ!隠れなきゃっ!でも、もうそこまで来てるかもっ!!」


「それはいかんっ!…しかし鬼から逃れることは、神仏を欺くに等しい。……ならば、この秘宝を汝に預けよう」


 するとおじいちゃんが、ブカブカにゆったりとした袖から、どういうわけか、小さな香炉を取り出すんですよね。しかしそれが、黒くて、歪で〝何時代のもの?〟ってなるような重々しさがあるヤツです。


 結局、香炉ってお線香を焚く箱だから。まーるい金属の取っ手が付いてて、そこを握ってぷらーん、ぷらーんって、中のより黒いガランドウがね、見えたり、見えなかったりを繰り返すのがすごく不気味なんですよ。


「…何………?…それは………?」


 イバラ姫がゆれる黒を瞳に映してね、恐る恐る訊ねるんです。


「ここに、その灯りの火を入れてごらんなさい」


 そう促されてね、その中の漆黒が嫌で不安で仕方がなかったイバラ姫は、すぐに橙色の火を香炉に入れたんだです。ところが、光を吸うとはあのことですね。彼女は火を入れれば、香炉の中の影なんて、パッとたちまち、消えるもんだと思ってた!いや、誰だってそうですよ。火は明るいんだもの。


 ところが入れた火は、影だまりに沈んでって見えなくなったものだから…。あれれ?風のせいで消えちゃったかなってイバラ姫は思ったんです。けれども、不思議なんですよね。確かに、煙が出てる。その何も見えない闇から、紫色の煙が漂ってきているんです。


 そして、その煙がおじいちゃんを包めば、その姿は煙と伴にスゥっと消えていくではありませんか。


「わわっ!」


 双子姫は手を取り合ってびっくりしましたねー。けれど、直ぐにそれがもう一回繰り返されまあすよ。〝わわっ!〟って。カポッて何かを蓋しちゃう音がしたら、今度は何もないところからおじいちゃんの姿がまた現れるんだから。


「これなるものは、如何なるものからも観ることが出来なくなる秘宝である」


「すっ、すっごーいっ!」


 イバラ姫は、不安だった目が天地一転ですよ。とたんに、その香炉の黒がカッコいいものに見えてくるんですねー。一方のボタン姫はまだ心配そうですが、イバラ姫が〝何も怖くはないわ〟と手に取っちゃう。


「ただし、これを使いながら眠ってはいけないよ。必ずこの蓋で、中のお香を消すんだ。分かったかな?」


「大丈夫っ!使うのはお昼だけよ」


 さっそく、紫煙を焚き始めてモクモクと姿を消すイバラ姫。見えない手がボタン姫をぎゅってつかむと、不安そうだった彼女の姿も消えちゃう。


 おじいちゃんの見送りを後にして、二人はトコトコ一本しかない階段を上っていっちゃた。


「ニンジャだっ!絶対、イバラ姫とボタン姫はニンジャになれるっ!!」


 クルンが見つけた順に、チム、スー、イトを合わせた四人がかりでも見つけられなかった双子姫。クルンの賞賛に、イバラ姫はお鼻をにょきにょき高くしちゃってまぁ。思わぬお宝を手に入れた、イバラ姫は〝もっとどうしようか〟とわくわくした気持ちが止まんなくなっちゃう。だから、その晩の大好物のハンバーグもうわの空で口に運ぶもんだから、いつの間にかなくなっちゃってたんだってね。


 そうなっちゃうと、イバラ姫は〝早くこれ返しにいこうよ〟と言うボタン姫がうるさくてしょうがない。だから、イバラ姫は〝これで隠れてお外に行こう。踊りを見に行こう〟とボタン姫の好きな物で釣るわけだ。


 ボタン姫は踊りが大好きだけど、それは踊り子さんの月の下、松明の炎とともに揺らめく艶な踊りだったんだね。そんなの見れるのは、子供が出られない夜の街ん中だ。確かに、何者にも見られなくなる魔法の香炉がある内は、またとないチャンスだったんですよね。


 それでも中々くびを縦にふらなかったボタン姫。それをさらに説得するもんだから、とうとうボタン姫がおれちゃう。二人は透明になって夜の街へと出向いちゃう。


 まぁでもお城育ちの双子姫にとっては感動ですよ。途中で暗くて腐臭漂うところもあったけれど、活気のある明るい方へ。そこには、星にも負けない灯りが散りばめてあった。喜びの歌が肩を組んでくるように聞こえて、悲しみを慰める詩が囁かれてくる。嗅いだことのない香ばしさ、蜜でも煮詰めたかのような甘い香り。通り過ぎていき、また目の前にあるものが宝石でもあるかのように、心奪われてっちゃう。


 そんで、灯色の宝石箱の中心にお目当てのものがあったわけです。月下の石舞台で、淡い布を竜のようにたなびかせて、くるくる舞う踊り子さんが。歓声の中、そりゃ二人は夢中になって観てましたよ。


その後だって、感受性の高い子供だ。その場の興奮にのって透明な踊りをクルクルぴょんぴょんと、酔っ払いと一緒に歌っったりもしてましたね。え?それで居る事がバレなかったかって?まぁ相手は酔っ払いですからね、妖精が一緒に歌っているって喜んでましたよ。


 夜が更けるまで遊んじゃった子供がどうなるかなんて、まぁご存じのとおりでしてね。まぁちょうどそこに、フカフカに積まれた牧草もあったもんですから、双子姫は透明になったまま眠っちゃったんです。それはダメだと言われたのにねー。


 

 で、どうなったかって?ケガとか病気とか起きてないかって?



 それはご心配なさらず。

 きちんと起きた二人には、昨日と同じ明るい朝がやってきます。



 いつの間にか、自分たちのお部屋のベットで寝ていた双子姫。なんだか、二人は夢でも見ていた気分になっちゃてる。でも、香炉は自分たちの横で煙を出し続けているから夢じゃあない。とりあえず、見えない線香を消したらいつもの朝支度。召使さんたちがイソイソとやってきます。


 そんで、お友達のクルン、チム、スー、イトが集まれば、お城はたちまち〝せかいたいかいかいじょー〟になっちゃう。




 毎日毎日、双子姫はみんなとかくれんぼを楽しみました。




 毎日、お空は変わらず晴れていて。




 一週間に一度のはずの楽しみが毎日で。




 なんだか、みんなのお話しも、毎日同じようなもので…。




 そういうオフザケかなって、最初は面白がってたんですよ、双子姫も。だけど、何回も続くと途端に奇妙に思えてくる。だから、がまんできずに聞いちゃうんです。


「どうしたの?それ昨日と同じ事言ってるでしょ?」


 そしたらみんな、目をパチクリですよ。〝昨日は会ってないでしょ?〟って。みんなは冗談だと思って笑うけど、双子姫だけはそうはならない。だって違和感に気付きはじめたんだもの。だから心が落ち着かない、不安なんだもの。


 何だか分からない。だけど、自分の身に何か良くないことが起きてる。そんな不安ですよね。そうなると、人って初めて自分のことを省みるもんです。


 みんなが帰った後、ここで双子姫は魔法の香炉をおじいちゃんに返しにいくわけですね。

 昏い一本の隠し階段。不安な気持ちで下りてくと〝あのおじいちゃんはどこから来たんだろう?〟〝一体誰で、どうしてこの香炉を貸してくれたんだろ?〟って冷静なことを考え始めるようになってね…。〝あれは悪い幽霊だった〟とか良くない想像がどんどん膨らんで、途中で二人とも足が止まっちゃうんですよ。


 すると、目の前にボウっと影が冷たい床から浮かび上がってきた!


 二人はもう、声すらでない。詰まった肺の息を懸命に押し出す行為が悲鳴になった。影は人の形をしてるんだけどね、黒い紐がしわくちゃに絡まったような模様があるばかりで顔も何もあったもんじゃない。それでも、ボタン姫は勇気を出して、口から吐くものに音を持たせるんですよ。


「…お…遅くなって……こ……ごめ…な…さ………ごめんなさいっ!」


 ボタン姫が必死に、黒い香炉を影に差しだします。すると、双子姫は人型の影に犇めく模様の中に、優しいおじいちゃんの顔を見つけます。よくあるでしょ?不規則な柄の壁を見つめてると、色んな人の表情を見つける時が…。


「おう、おう、姫々よ……?なぜ、それを汝らが?」


「え?何故って、アナタから借りたのよ?」


 以前あったときの、優しいおじいちゃんの顔になって安心したのか、イバラ姫が不思議そうに答えます。そうしている横で、あれ何かおかしいな?何だか石壁の均一な線が、ちょっとずつ曲がっていく?歪んでる?そこを見てると、一体どこが真っすぐなのか、分かんなくなっていくんですよ。


「あぁ、あぁ、なんという事だ…。さては、眠ったのだな?それで隠れながら眠ったのだな?」


「ごめんなさい。眠ってしまいました。隠れながら眠ると、どうなるんですか?」


 恐る恐る、できれば聞きたくない予感しかないけれど、堪らずに問いかけるボタン姫。そんな彼女たちが立っている階段は、こんなにも曲がりくねった造りだったかなぁ?


「その香炉は〝災い〟から逃れるための物だ。〝災い〟とは神に目をつけられし者に降懸る。ならば、神の目から隠れればと…」


 神様から隠れる。災いから隠れる。ならば神様から隠れて寝て何が悪いんだろう?


「しかし〝未来〟を司りし神は、どうして見えぬ者を明日へと運ぶ事ができよう?」


「……私達が隠れて眠っている間に、明日は行ってしまった?」


 それはまるで船のようですね。今日という島から、明日という島に出るたった一度の舟。


「その通り。汝たちは、いつか来ていたハズだった明日に置いていかれたのだ。災いと奇跡は表裏一体。城育ちの汝らにとって当たり前だった〝明日〟は、案外〝奇跡〟だったのやもしれぬぞ?」


 ボタン姫は、夜に外を出た時嗅いだ腐臭を思い出したんです。そうか、だから街はあんなにも光輝いていたのか、って。


「そんなっ!どうすればいいの!?」


 イバラ姫は、どこが地平かも分からなくなった床を四つん這いで、どこかを向こうとしますが、もう方向すらここは失いつつあるのかもしれません。ボタン姫は地に伏しつつも、何かを考え込んでいます。


「もうここは、時の墓だ。未来に繋がらない、存在を否定された〝今〟。ここで明日を迎えようとしたって叶わない。同じ時が繰り返されているわけではない。神に見定まれなかった可能性が、行き止まりの中を亡霊のように彷徨っているだけだ。だから小生の手を…」


 存在しない島は、沈みゆくだけ。


 曲がりくねった波に呑まれて、影が溶け沈む。すると、どうすれば真っすぐ立てるのかも分からない床から、たくさんの亡霊の手が、まだ溶けてない二人を掴むように飛び出てきた。



 そんなんだから、イバラ姫は一目散に逃げだした。どっちが上かも分からない階段を進んで、進んで、やっと外らしいところに出た!そしたら、みんながちゃんと居て、よかったって駆けて寄っていく。けれど振り向いたみんなは、顔が無くって、そこには、ただ、ただ、ぐちゃぐちゃな模様しかなくて……、でも、見つけようと、思えば、クルンの表情は、この中にあるようで……、あぁ良かった。あるよ。ここに。そこにも。あ!あっちにも。わぁいっぱい。どれ?どれにしよう?どれなんだろう?〝今〟のクルンはどれなんだろう?迷っていく間にも増えていく。増えて、もっと増えて見きれない。目を複眼にしたって、自分の目を増やしたって見きれない。クルンの顔に自分の顔を潜らせてみたけど、脳がボコボコと拡張して破裂しそうだ。決められない。決められない間に増えていく。〝今〟が増えていく。そうして、沈んでいく。そんの怖い、恐い、畏い、コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ。




 コワイモノは嫌だ。




 だから、私がコワイモノになりたい。




 だけど、どうしたら良い?




 この、コワイモノにはどうしたらなれる?




 分からない、ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイコワイモノコワイモノコワイモノコワイモノコワイモノコワイモノコワイモノコワイモノコワイモノコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ


 棘の魔獣は万華鏡のように目まぐるしく、事象が転じて増えていく沼で、どこまでが自分で自分で無いかも分からぬ体で必死に藻掻いた。


「おぉ、このムタ目、感情の芽生えた魔獣なぞ、初めての眼識的刺激にございます。あぁアァアリガタヤァ、アリガタヤァ!そう、人目も恐怖の克服こそが発展の源に御座いました……故に惜しいですな、貴殿は方法を間違えた。ボタン姫…もといポッケルガトラ殿は無事、この()()()()()()()から脱出なされましたぞ!なぜ勘違いとはいえ、一度〝災い〟から救おうとされたあのお方を信じようとなさらなかったのか?それは、貴殿が〝恐怖〟の表層ばかりに気を取られておられたからです。そのような可哀想で哀れな魂は、生憎、この守護精霊ルアクと呼ぶには悍ましき、悪食〝繁栄王ベルゼブブ〟の好物につきましてェ。それではそれでは、お辛そうなところ、大変恐縮ではございますが…」



〝いただきます〟



 棘の魔獣は消えゆく意識の中でさえ、ついに〝恐怖〟からの解放はなかった。翅の生えた毛深き悪魔が最期の最期まで、その魂を貪り尽くしたからだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ