合間(真っ白け)/ → / Reborn(真っ赤か)
くるり、くるり、と回ります。
白いお部屋で、また、くるり。
二束のましろな髪が、尾の永いともえを舞って
そのまんなかで、ワタシは、くるり、くるり………。
あの〝虫さん〟はワタシのことを〝アイちゃん〟と呼びました。
ワタシは、いない子なのですが
ワタシが、いないとみんなが困るものだから
こうして誰もいない場所で
くるり、と回り続けて〝ゆめ〟を見ています。
ゆめの中には、ちゃんとみんながいて
みんな笑ったり、怒ったり、悲しんだり、誰かを好きになったり、嫌いになったり
ワタシはそんなみんなが、こころいっぱいに愛おしくて………。
でも、そろそろ目をさまさないと。
たのしいゆめは、もうおしまいです。
けれどその前に、まいごの子たちを探さなきゃいけません。
ゆめの子たちが〝まいご〟になるなんて
はじめてのことで、ワタシは困ってしまいます。
とっても久しぶりに、体をつくってみたけれど
〝虫さん〟が持ってちゃって、なかなか返してくれません。
さっきも、返してくれるのかと思ったのに
〝あの子〟が呼ぶもんだから
〝まだだァア!!!〟
って突然大きなこえをだすんです。
ワタシ、びっくりしちゃいました。
ほんとに、いじわるな虫さんです。
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「何をやっている!?イマミア・アルティシムスッ!!」
スーが吠えた。
ミアはそんな事知っていた。
ツバキが躱せる事も知っていたから、ミアは思いっきりロケットハンマーを振るった。
ただし、ツバキもいつ崩れるかも分からないモノと一緒には動けない。だからその〝白い体〟は、翠の渦とともに木々を薙ぎ倒して吹っ飛んでいってしまった。
「アレが何かは、キサマも識っている筈だ!!」
スーが噛みついてくる。
「ウルサイなー……。どっちにしたって壊せばいいんでしょ?」
「壊せばいいんじゃないッ!!完全に消滅させる必…」
「だったら、無くなる前に殴らせてよッ!私こいつのこと、大っ嫌いだったからさッ!!」
ブースターが爆ぜて、ミアが〝白い体〟を追う。
「バカな……」
スーは眉間を狭めた。ミアの意図が分からない。あの〝白い体〟を消すのに彼女が邪魔になっている。
〝このまま両方消すか……?しかしそれでは………〟
スーは空間を揺らめかせ転移するが、既にミアの追撃は始まっていた。
「好き勝手やりやがってっ!この世界何だと思ってやがんだっ!?テメぇのくだらねぇ三門芝居の舞台なんかじゃねぇぞ!!」
翡翠の一閃。亀裂の奔った体が軽々しく浮き上がる。
「テメぇには絵空事だったかもしれねぇが、私たちはここで生きてんだッ!!生きてんだったら死ぬのも当然だろッ!?それを部外者がギャーギャー喚きやがって………」
地面に叩きつけられ肉が割れる。すぐに崩れていった。既にボロボロだったのだ。
「何がしてぇんだテメぇ!その体で賢くやってりゃ、こんな世界でも良い思いができただろうがッ!?」
土ごと、抉り掬われまた宙へ。
「何で笑ってやがった!?何で戦った!?何で付いてきた!?何で怒った!?何で励ました!?何で泣いていた!?」
殴られ音速越え。残る肉が灼ける。
「何でだよッ!?ワケ分かんねぇーんだよ………どうして!?何?何なの?テメぇには関係ねぇだろッ!?……ねぇ!?
何で………私を助けたの?」
碧い石畳の跡に、白い骸骨を叩きつけた。
「なぁ!?答えろよぉ! 〝彼岸丸〟ッッッ!!!」
ミアはもう一度〝スロンガトロン〟を振り上げる。
「っ!?」
打ち付けた鉄槌が、骨の脚に軌道を逸らされた。
態勢が崩れるミアを、骨の腕が支え、そのまま涙に赤らむ幼顔を自分へ寄せる。
「ひゃ!?」
ミアの顔から紙一重前。そこで再び開いた紅玉は、ミアの姿をその中に映し込んだ。
「関係無くねェ……オマエが、オレが〝ここ〟にいる理由の全てだ」
「………へ……?」
「オマエが美しかった………オレは、オマエに惹かれて〝ここ〟に来た」
白い頭蓋骨の中に赤い紅玉。そこから、紅い筋が口を軋ませ、彼岸丸の声。
何か言っているが、その内容が頭に入ってこない。むしろ、頭よりも先に体が、わなわなと落ち着かない反応をしている。
ミアが顔が、赤らむどころか真っ赤に染まった。
「へぇ?……へッ!?へぇえ!?」
彼岸丸の肉が、勢いよく再生していたところだったが………。
顔に昇る熱にたまらず振り落とした、ミアの鉄槌に、また爆ぜ飛んでしまった。