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滅ぶ前にゃー叫ばなやめれんッ!!!  作者: シ流つっけ
レグナトール家〈前編〉
22/42

かば(河馬)いた(居た)ち(地)の朝


「取りあえず、ミアに付いてたメイドがァ、だいたいのところ、〝ガウディが銀髪美少女メイドに転生した件〟なのは良く分かった。そんでェ、行方が分からなくなってから今日で十日目。噂じゃァ、砦の外の橋から飛び降りたァ……と」


「いや、変な要約の仕方しないでっ!転生とか変な事言ってんの、アンタだけだから。……ともかく、仕事のついでに彼女を探して来てよ」


「探しに行けって、もっとこォ情報ねェのかよ?」


「イマミア様は他の方から疎遠にされてしまっているんです。………聞かされる話も悪意のある物だけで……」


「ツバキ達、執事やメイド達の間では、どういう話になってるの?」


「私もここでは異質な方ですので、周りとの交流が多いわけではありませんが………どうやら〝彼女が橋から落ちた〟自体は本当の出来事の様です………。どういう経過かは、情報が錯綜していてどれが真実やら………」


「アノ橋の下なァ……。全然谷中が見えなくて、さらに何かやべェ雰囲気が満々だったんだよなァ………」


「で、ですけどっ!落ち込む事ばかりではございませんっ!!その後、実は屋敷のあっちこっちで、彼女の目撃談があるんですよっっ!!!」


「……それってよォ、〝おわかりいただけただろうか〟方面の目撃談なのでは?」


「………まだ、死んだって決まった訳じゃ無い」


「……彼岸丸…デリカシー0……スー…一つ賢くなった……」


「そ、そうですよー!みんな口をそろえて〝ハッキリ見た訳じゃないけど~〟って言いますがっ……あ、あれ?〝なんかそれらしき影だけ見た〟とかー………〝何かㇲって消えてゆく〟とかー………声だけ………」


「……………」


「………」


「…」


「え、え~と………大丈夫ですっ!きっとセレスティアなら、お化けでも可愛いですっ!!」


「……ツバキ…天然地雷……スー…また賢くなった……」


「はぁ、この際もうお化けでも何でも良いよ………。取りあえず会って〝ミークを探す必要は無くなったから戻れ〟って伝えといて………」


「……何だよ?弟も迷子かよォ?」


「……………」


「弟様のミークシス様は重い病で、確か屋敷の地下にて療養なされていると………」


「こんなだだっ広い屋敷(?)の地下ァ?どっからどう入るんだよ?湖に飛び込むのかァ?」


「さぁ?私には存じ上げませんが……ただ、地下へはご主人様と、ご尊父様しか行く事が出来ないとか………」


「………?情報が違うのか、前提が違うのか、それだと、ご主人様がわざわざ病人の世話焼いてる事になんぜェ?随ィ分と妙な話じゃねェか?」


「そうですっ、妙なんですよっ!私もセレスティアから話を聞くまでは、弟様の存在も聞かされていませんでしたし………」


「……………」






 ①「ま、そっちは追々、まずはセレスティアを探しますかァ……なァ?スーさん」

 ②「……気になんなァ…。弟の方を探ってみるかァ……なァ?スーさん」






「ふぉっ!?」





 スーは突然の現象に、△の口から何かを噴き出して困惑した。(注:当然表情筋は死んでいる)



 何かさっきからみんな、半透明のシルエットで会話ばっかりだなー、とは思っていた。


 でも、今はそういう時代なのかもしれないなー、と特に気にはしていなかった。


 どーせこれも彼岸丸のオフザケで、自分が何もしなくても進んで行くのだろう、と胡坐で転がっていた。



 そう、最近のスーはいつもそうだった。


 多忙な日々。

 それを言い訳に、都合の悪いものから目を背けようとする。


 いつも自分に関係無いとの言い訳を探し……。

 平常という、何もしないだけの殻に閉じこもる。




 その〝ツケ〟がとうとう回ってきた……。

 これは、それだけの事だったのだ。



「……スーも…焼きが回ったもんだぜ……」




 彼女は、まだ情熱に燃えていた頃の自分を思い返す。



 あの頃は〝真実〟というものがあるのだと、信じて疑わなかった。



 その〝答え〟を得る為の潜入はいつも過酷を極めた。

 必要とあらば、自分はたこ焼きにでも、団子にでもなった。

 揚げられる事もあった。甘醤油をかけられる事だってあった。



 けれど、その道の先に結局〝答え〟なんて無かった。



 いや、最初からそんな潜入……。

 きっと意味すら無かったのだ。



 こうして彼女は、心すら失った。



 そう、自分に残されているものなど……。



 ………。


 いや、本当にそうだろうか?

 本当に自分はもう何も無いのか?


 ならば、目の前の選択肢は一体何だ?

 自分にはまだ残されているのか……?




 〝選ぶ〟という権利を……?




 その時、記憶の中の、かつての自分が、今のスーに喰らい付いた。

 (※ただし、どちらも表情は変わらない)



 ならば………!



 だったら………!!



 今度こそ逃げない!!!



 今度こそ見つけてやる!!!!



 〝真実〟と言うヤツをっ!!!!!





 だから、自分の答えは


 〝スー〟という存在の答えは!







「……とりあえず……セーブで!」












「いや、無いからそんなん」




 我に帰るスー。目の前にはハッキリ姿のあるミアが居る。


「……あれ?………皆の衆は?」


 

 スーは口を△にして辺りを見渡す。ミアの小屋にはスーとミアしか居ない。



「……朝の務めに行った。屋敷の動力源になるスライムの捕獲」


 ミアが腰掛けるベットの横で、四角いカバがブルブル震えている。




「……選択肢は?」

「①」




 ブルブルブルブルせわしないが、その瞳には一切の曇りなく、何とも澄んだ色をしているではないか。


「………そっかー…………」




 虚無を見つめるジト目で、漏れた言葉は〝そっかー〟しか無い。




 〝そっかー〟だけしか無かったのだが……。



 〝そっかー〟とスーは人生で一番強く思った………今日この頃だった。






 そして、四角いカバは震え続ける。


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