幕間〈けっ、真面目かよ〉
その白い部屋には大樹が描かれていた。
黒い部屋の外。
未だ何にも染まらぬ空間。
世界の裡で、雄牛の頭蓋骨を被った燕尾服の男は溜め息をつく。
「照合先を一億規模から七十億オーバーに切り替えてはみたが…『該当データ無し』……か」
大樹を間近で観察すると、それは蝋燭の日の様に揺らめく文の群れであることが分かる。
「なら、何故だ?何故私はアレを〝主の種〟であると認識した?」
文字は二対の蚯蚓が、まるで水を求めて蠢く有様だ。
それら一つ一つは〝慟哭〟であり、総じてそれらは〝祈り〟であった。
「〝転生者〟……?」
魔人は対象の言葉を脳内で再生する。
「何を表している?………輪廻転生か……
バカな〝宙〟と〝時〟と〝人〟は皆同一だ。どれも概念上の流れであり〝柱〟に成り得ぬ……。
〝間〟が何か要素を残したまま次の生命に還元されるなど………」
そんな事が可能であるならば、何もかもが無駄でしかない。
いや、そんな事は今更だ。間もなく〝一柱目〟がこの地へ降り立つ。
興味深い対象ではあるが、計画に懸念が出る様では排除の必要があった。
「オマエは一体……どこからやって来た?
桜丸彼岸丸 」