プロローグ
「何で、アイツを殺した?」
清らかな白髪は汚れた赤で薄紅色。あぁ、今気づいた。アノ目の紅玉がその白い体を侵しているのか。
「ミア、オマエが何を企もうがオレの知ったこっちゃねェ」
私はあの白い少年が嫌いだ。
「オマエがオレを、死ぬほど嫌いなのは識ってるがなァ?」
いつも歯を軋ませ、無垢なる面に表情をナイフで刻み込むかの形相。歪んだ笑顔が不快だ。
「理の外に在るオレを利用して、みみっちィ糸口を必死に探してやがる」
偽りだらけで過去なんて無いくせに。
「かァア、分かっちゃねェなァ?あ~ハッキリ言って、オレの使い方を全く分かっちゃねェわ」
傷だらけで未来なんて無いくせに。
「オレに出来るのは〝終わらせる〟事だ」
なぜこんなヤツと関わってしまったのか。
「分かってるだろ?オマエが人を利用するのは、全部自分のせいにする為だ。誰にも〝助けて〟と言わず、独りで身に余る毒束抱えて壊死った心で泣いてやがる」
どうして突き放したいのに、いつもそこに居る。
「そんなに窒息死したけりゃ、弟もセレスティアも諦めろ。逆にアイツらが可哀想だわw」
頬を打つ乾いた音。思わず、私の手が出ていた。なおも紅玉は私を捉えて離さない。
「だったら言えよ。〝助けろ〟って」
あぁ、なぜ私はこいつに触れているのか。
「〝運命を二度と修復できねェくらいに壊せ〟と命じろ」
叩いた頬を優しくなぞり、閉ざされない紅い目へ。そこから私の指は、彼を感じ取ろうとする。
「〝私を脅かすもの全て、尽く、終わらせろ〟くらい謳ってみせやがれ」
私はこの紅い少年が嫌いだ。
いつまでもそこに居てくれる訳でも無いのに………。
「………結構ソレ、目が痛ェんだけど?」
「知らない。あと、カッコつけたかったの?アンタの恰好、メイド服で台無しなんだけど?」
「………今のシーンやり直してもいい?」