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エヴィル・スネーク3

 

「…つか、俺らさっきまでソイツに捕まってたってことだよな?」


 僕は頷く。逃がすことができる段階で助かった。

 実験室送りだったら、僕にはもうどうしようもない。

 兄がズボラなので、一纏めにして檻に入れられていたことも功を奏した。とても助けやすかった。


「つまりは顔覚えられてるってことだな。そうなると、チビちゃんたちはアジトの敷地内にいて捕獲されたってことになる。一団も安全とは言えないよな」


 ぼっち案件になってしまって一人慌てていた僕を放置して、タートルが話を進める。

 カメレオンちゃんがため息をついた。


「……なんか勝てそうな人いないんですか。治安を守ってくれる勇者みたいな」


「そんな都合の良い存在がいたら、真っ先にけしかけて兄の抹殺を目論むよ」


「いないのか……」


 兄抹殺を口にする僕になにも言わないあたりが、優しさだと思っている。みんなのスキルで殺してきてよと言ったら、そんなチートスキル持ってないわ阿呆と殴られた。

 タートルはどうも怒りっぽい気がする。



「スキルといえば、皆さんはどんなスキル持ちなので?」


 興味本位で、と言った風に尋ねたカメレオンちゃん。

 ちなみに私は色呼び出しです、と全くよくわからないスキルを教えてくれる。


「なにそのスキル」


 心の中をそのまま口に出してしまった。


「色彩を再現して、呼び出します。具体的には、青色でちょっとでかいわんこが出てきます」


 色彩の再現とか青色とか僕らには伝わらない表現がある。

 特異能力者はもう少し自分の感覚が他人に理解されづらいことを自覚して喋ってほしい。


「さっき檻が潰れると言ってなかったか? ちょっと?」


 タートルの言葉でなんとなく察した。

 多分それ、ちょっとじゃない。

 テレビ置いてダブルベットやマッサージチェアも置けるリビングほどの大きさの牢屋を潰せるって相当でかい。


「チビちゃんは?」


 ヤバげな気配を察知して、別の人に振ることにした。


「えっと、宝石、作る……」


「おっ、カーバンクルらしいのがきたね」


 カーバンクルは金になるスキルを持っているとよく噂になっていた。伝承にも近いそれは真実だったらしい。

 売れば金になる珍しいスキルだけども、今必要なのはこれじゃない。


「さっきそれで火傷したって言ってた気がするのですけど」


「うん、爆発する」


 思っていた宝石と違う。爆発する宝石ってなんだろう。

 ゲームのアイテムにありそう。

 宝石のフリした爆発物では売れそうにない。


「罠になる……トラバサミ、拘束トラップ、えとせとら…」


「二人とも良い感じに使えそうなスキルだな。俺なんて子株生成して分身作るしかできない」



 使えそうにないと思っているのはお前だけだ、タートル。

 その分身がスパイだの追跡だのをしてくる。追跡された僕だからわかる。その分身も只者じゃない。


「お前は?」


 当然僕にも話が流れてくる。

 タートルは知っているけど、喋らないのはアンフェアだと話をこっちに持ってきたようだ。言われなくても、ちゃんと喋るのに。

 僕のスキルはだいぶ厄介だ。当たりスキルではあるのだけども、使いづらい。


「悪魔召喚、召喚した子に戦ってもらったり、能力借りたり、生き血啜られたりする」


「最後が酷い」


「一番戦えそう」


「……かっこいい」


 トカゲちゃんだけ褒めてくれた。優しい。


「それが、強いの呼ぶとその分代償に腕もらうねとか心臓をよこせとか契約させられそうになるから、戦えない」


 流石に腕取られたくないし、心臓は命が危ない。何か要求すると必ず対価を強請られる使い勝手の悪いスキルだ。

 おい、タートル。使えねぇって顔をするな。仕方ないだろう。生まれつきのものなんだから。


 僕はつくづく運が悪いらしい。

 名前ガチャ、兄弟ガチャに続いてスキルガチャも外している。もっと殺傷力をアップさせて尚且つ僕も安全なスキルが良かった。



「ところで、しょーもないこと聞いていい?」


 タートルは僕の目を見て聞いた。



「あだ名が誰が誰だか分かりづらいんだけど、(サーペント)はお前でいいんだよな? そんで、俺が(タートル)?」



「そうそ、トカゲちゃんがチビちゃんで、カメレオンちゃんはドルチェちゃん」


 お前は木だから行動遅いんだろうなって、亀にしたの、そう言ってやれば無言で一撃、足の脛を攻撃された。

 痛くて転げ回る。

 それを見てなんの反応もしない皆。

 トカゲちゃんは相変わらずぼんやりしている。君くらいは心配してくれそうだと思ったのに、何とも不思議ちゃんで読めない子だ。


「私が色彩からカメレオンになったのはわかるんですけど、トカゲ……?」


 カメレオンちゃんはトカゲちゃんをチラリと見た後、どうにもつながらないと首を傾げた。


「その子、逃げ足の速さが、まさにトカゲの尻尾切りってくらい速いの。脱獄も得意だし」


「種族柄、仕方ない……」


 珍種族(カーバンクル)だからあちこちからラブコールもらって大変なのはわかるのだけど、それにしたって、有名商人から二度も脱獄できるその能力の高さは伊達じゃないはずだ。本人の自己肯定感が少ないだけで。


 本人はけろりとしていて、別に得意じゃないのにと顔に出している。得意じゃなかったら今頃君は生きていない。



「さて、状況の擦り合わせができたところで、現在発動されているミッションはあのクソからどうやって逃げるかってことなんだけど」



「ムリゲー……」


 一瞬で諦めたトカゲちゃん。諦めが早すぎる。

 まぁ、熱血的に、僕らなら倒せるんだって言い張る阿呆よりは余程ましな選択なのかもしれないが。


「殺せない、チート級スキル使い、捕まったら実験道具確定案件か………捕縛とか封印は無理か?」


「封印できる道具に心当たりはない」


 転生者探しついでに探してはいるが、未だ見つかっていない。眉唾ものの噂程度の品がいくつかといったところだ。


「ターゲットのスキルってどんなやつなのですか?」


 対策が取りたいとカメレオン。対策なんてできないよと前置きした僕。


「生き物の改造ができる。僕以外の転生者の記憶呼び寄せたのもアイツ」


「マッドサイエンティストに一番持たせちゃダメなスキル」


「転生者四人に増やした元凶か」


 どうしようもないでしょ。

 僕としては、話のわかる知り合いが増えて嬉しい気持ちもある。それを実験台にされることが嫌だから逃げているだけで。そう考えると僕も兄と同じクズなのだろう。


 そういえば、僕だけ転生理由がわからないな。


「やっぱり一団を頼った方がいい気がしますが……あー、でも有り寄りの無理か……」


 カメレオンちゃんはよく考えてくれる。そうそう、出来そうでできない。なによりもあそこはセキュリティーがガバガバだ。のんびりゆったりしていて雰囲気だけで見たらとんでもなく居心地が良いのだろうが、安全性がなんともいえない。


 団員の強さ、団結力、実績、団としての性質、どれをとっても良いものなのに、セキュリティーだけが悪い。

 特別悪いというよりも、アレから逃げるという目的だけで考えた場合の話だ。商人がカーバンクルを盗めたのは、あの商人の手腕といったところだ。普通の犯罪者相手だったら良い逃げ場だったのに。


 まぁ、相手が悪かったのだ。しゃあない。


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