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ウッド・ダディ6

 

 さて、用も済んだから俺はここらで、と退散して宿に帰る。

 息子に強制的に入れられた宿だ。安いのはいいのだけど、別に人型で眠る気はなかった。しかしながら、せっかく屋根と布団があるのに使わないのもどうかと思うので人型で寝てる。


 そして起きたら別の場所にいた。

 寝過ぎて時代背景変わったのかと思った。たまにやらかすのだ。木なので、いちいち食事だの排泄だので起きる必要がない分、寝過ごして10年後とか時代が移り変わってましたとかよくやる。

 今回は違ったようだ。

 縛られている。おそらく誘拐。

 軽く身体を樹木化して枝を縄に引っ掛けて取る。縄からの脱出は簡単だった。


 それにしても犯人はただのおっさんに何の用だろうか。これが美少女美少年だったら需要は山のようだしエッチなお姉さんなら尚のことだが、今縛られていたのはペストマスクの成人男性である。


「突然の誘拐……流行ってるの?」


 声が聞こえたのでそちらを振り向くと、見覚えのある子が転がっている。

 カーバンクルのチビちゃんだ。

 そんなもの流行っていたら君のところの警備部は大変だろうなと思う。


「流行らなくていいですよ、そんなもの……」


 もう一人転がっていた。チビちゃんのさらに後ろから声がする。どうやら特異能力者のお嬢ちゃんのようだ。


 美人二人組が捕まるのはわかる。

 俺が一緒に捕まっている理由がわからない。


「やぁ、さっきぶりだな。チビちゃん」


「…お兄さん……こんにちは」


「あぁ、こんにちは」


「なに平然と挨拶してるんですか、二人とも」


 おねーさんは数日ぶり、そうやって挨拶すると少し素気なくどうもと返される。クールビューティーなキャラ、嫌いじゃない。ため息をついて、明日の仕事大丈夫かな、そもそもこれは無断欠勤にならないだろうかと心配する様はまさにサラリーマン。いや、女性だとサラリーウーマンだろうか。


「さて、美女たちの行動阻害は罪だよな」


 二人の縄を外してあげると、特に感激した様子もなく礼を言われた。なんという落ち着き具合。


 聞くところによるとカーバンクルの子は一度誘拐されたことがあるらしい。そういえば、それで子守番強化したんだったな。

 お嬢さんことドルチェは、普段から落ち着いたやつなだけだった。

 能力持ちは他のやつより感知できることが多い。つまりはわかることが多く知らないことが少ない。冷淡なのも頷ける。


「逃げる?」


「檻の中ですからね、鍵を探すなり、壊すなりしないと」


 私の能力ではあたり一面ペシャンコになるんで、あてにしないでください。彼女は真っ先に戦力外宣告をした。


「…僕のだと、巻き添えになりますけど……」


 チビちゃんは、両手を広げてバーンと可愛らしい仕草をする。ふむ、つまりそんな風に爆発する、と。内容は全然可愛くなかった。

 二人とも物騒なスキル持ちのようだ。俺のだと子株を量産するくらいで他にできることもない。


「すまんな、俺のもあまりこういったことに使えるタイプのスキルじゃない」


 詰んだ。三人揃ってどうしようかと首を傾げる。


「ぺしゃんこって耐え切れないくらいか?」


「運が良ければ身体の一部がシート状の肉塊にならずにすむ感じです」


「伸しイカかぁ……」


 伸しイカいいよな。美味しい酒のつまみ。

 それはさておき、流石にプレスされたらトレントさんも無事ではすまない。他二人は確実に死ぬ。それはまずい。


「チビちゃんのは……」


「えっと…一回試した時は、火傷を少々」


 火傷、爆発。つまりは火。

 木には天敵なので少々耐え切れる自信がない。どれぐらいかの規模にもよるが。


「試したんですか」


「前に捕まった時に……」


「そりゃ、痛かっただろう。よしよし」


 息子撫でる感覚で頭を撫でてみた。変態呼ばわりせずに目を細めてくれたチビちゃんは天使。


「俺のは攻撃……できなくもないけど、明らかに破損には向いてないんだよなぁ」


 子株はいわば言うことを聞く激弱手下だ。鉄の一本や二本捻じ切ることは出来なくもないが、地面に土がない分、成長に時間がかかる。ざっと年単位。

 そんなに待てない。二人が餓死する。俺も脱水で死ぬ。天井がなければ樹木化して木登りさせて逃げられるのに。

 待った。樹木化で壊せないか。

 この檻を壊すほどの大樹に……あ、無理だ。

 成れるか成れないかと言われれば成れるのだが、その際どう考えても加減ができない。周りも巻き込んで幹に埋まる。

 それはまずい。


 手詰まりだ。どうしたものか。


「脱出は無理そうですね。諦めて、何故捕まったのかでも考えましょう」


「諦めがはやいな」


「無駄な努力はしたくないだけです」


 死んだ目をして彼女は言う。


「私は売り飛ばすために一票」


「……売れる?」


 チビちゃんは小首を傾げている。この中で一番売値が高いであろう君がわかっていなくてどうするのだ。

 無論、一番安いのは俺。


「カーバンクルに特異能力者、売り上げは山のようだろうなぁ、俺なんでここにいるんだ……」


「……お兄さん、カッコいいから」


「そうか、ありがとう」


 顔見せてなければ幾分かカッコよく見えるものなのか。ただの平凡なおっさんだぞ、俺。

 その言葉に感謝は述べたが、本心では、お世辞だろうことが伺えて悲しくなった。


「……じゃあ俺は何か用事があるに一票」


「用事? 口頭で聞くなり、文書で送るなり方法が他にもあるのでは?」


 お嬢ちゃんは不思議そうな顔をしている。

 即答されたものだから、違うに決まっているだろと言われると思ったが、ただただ不思議そうな顔をしているだけなので、疑問に思っているだけだろう。


「世の中には直接聞かないと気が済まない奴がいるんだよ。内緒事なら特に」


 お嬢ちゃんは理解したようで頷いているが、チビちゃんは未だ首を傾げているので、わかりやすく説明する。

 子供にもわかるような説明ってどんなだろうな。


「例えば、悪い奴が盗みをするのに、鍵の場所をわざわざ正面から聞きに行ったり、教えてくださいなんて手紙、出さないだろ」


「あ、拷問」


 そうそう、拷問や恐喝の予定となると生かしたまま捕獲しておく必要がある。ただし、三人まとめて同じ牢屋にする意味は不明だが。


「でも、僕、世間知らずだよ」


「俺もどっかの御国の秘密を知っているわけでなし、なにが聞きたいのかが全くわからない」


「心あたりはあるけれど、知りたがる理由がわからない」


 心あたりがあるのがお嬢ちゃんだけな時点でおそらく違う。

 何か3人に共通点でもあるのか。




だんだんコメディ色強めになる予定です

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