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カラフル・アナグラム6

 

 お出かけをしている。

 メンツはクール系ボーイッシュとふわふわ甘ロリの双子、大人しくぼんやりとした雰囲気のチビちゃん、そして私である。


「チビちゃんは、何が好きなの?」


「えっと…はっぱとか」


「お野菜好きなんだ、珍しいー」


「……そうなのかな」


 双子に挟まれ手を繋がれているその子は、おどおどしていて小心者のようだった。そんな姿もキュートである。

 そういえば、あの耳横の癖っ毛。髪じゃなくて耳だそう。

 よく見たら尻尾もあった。この子はカーバンクルという種族らしい。


 バンダナで額の宝石こそ隠しているが、小動物チックなこの子は本当に小動物だった。


 後ろからそっとついて行く私は、側から見たら保護者か不審者だろうか。せめて前者でありたい。


「…君は何が好き?」


「何が、と言いますと?」


 やべえなんも聞いてなかった。

 焦りを綺麗に包み隠して、問い返す。


「野菜とか、肉とか食べ物じゃなくても、可愛いものとか薬とか」


「いろいろあるねぇ」


「とりあえず薬はないです」


 そうだろうねと真顔で返された。

 この一団『ニフェ』には何やら実験が好きな怖い研究者のような方がいるそうな。チビちゃんに教えてもらった。

 諜報部所属の人らしい。なるほど、道理で双子が諜報部の方相手に嫌そうな顔をしているわけだ。


「そうですねぇ……観察が好きです」


 主に色を見る人間観察とか植物に着いてる虫を眺めるとか、ぼんやり見つめることが好きだ。


「「あぁ」」


 双子は納得したような顔をしたが、チビちゃんは物珍しいものと感じたらしく不思議そうな顔をしていた。


「さ、着いたよ。ここは街一番の商店街、なんでも揃ってるんだ。貿易が盛んだから」


「我らが『一団』に囲われてるんだ。とーぜんでしょ」


 双子は自慢げに話している。財務部というのは、そういった街の貿易まで管理するらしい。大変そうだと他人事に感じたが、私も財務部所属である。


 まずは手頃な場所からと、雑貨屋に行った。

 頭が割れたクリオネのキーホルダーは売れないと思うから、堂々と店内にマスコットとして鎮座させるのはやめて欲しいと思った。双子は指差して笑っていた。


 服屋にも行った。

 孔雀柄の服はどこかの奇抜なおばさんがきていそうだった。

 豹柄や虎模様もあった。一番頭に残ったのは、絶妙に可愛くない魚のマスコットがど真ん中にインプットされた金のワンピース。Tシャツではないあたりで謎のセンスを感じたが、絶対に買わない。


 食料品を扱う店では、夜食用にドライフルーツを買った。

 チビちゃんは花屋の花束見てお腹を鳴らしていた。キミ、物理的に草食系なのね。

 先程買った干し葡萄で我慢してもらった。


「ところで、買いっぱなしなのは結構ですけど、お金どこから湧いて出るんですか? 経費で落としてるんです?」


 大量買いと洒落込む双子を呆れた目線で見る。

 チビちゃんは重いだろうと荷物持ちに徹している。もちろん私も。

 持つのは構わないのだけれど、単純に湯水の如く使われる金の出所が気になった。まさかちょろまかしてなんていないよね?


「自費だよ」


「休日だし」


「休日じゃなかったら経費ですか」


「「そりゃぁ、もちろん」」


 口を揃える二人に衝撃と呆れが混ざる。現代日本ならとっ捕まってる部類だ。


 見てみると、チビちゃんも私と同じような顔をしていた。



「ほどほどにして下さいね」


「思いの外、真面目なんだね、キミ」


「私はいつだって真面目ですけど」


 孤児院でニートのような生活をしていたじゃないかという文句は受け付けない。あれは仕方なしにだ。


「…はっぱ」


 ぷちぷちと何かを千切る音が聞こえてそちらを見たら、チビちゃんが雑草を引っこ抜いていた。


「チビちゃん、雑草は食べないで」


 代わりに乾燥デーツを口に詰めてやる。

 もごもご美味しそうに頬張る姿はまるでハムちゃんだった。


 このチビちゃんは野生の気が強すぎて人の形をしているってことを忘れているのではないか。




 長いようで短かった買い物が終わって、アジト内で別れる。バイバイなんて手を振るが、横には双子がいる。

 なんせ隣の部屋が双子の部屋だ。別れるもなにもなかった。


 部屋に戻って、買ったものの整理をし、色チャートをパラ見したり、ごろごろしたり、今日見た人物の色分析を思い返してから、さて寝ようと布団に入った。


 買い食いで腹は満たされているので、夕飯を食べに食堂へなんて行く気にもなれなかった。


 そこで乱雑にこじ開けられた部屋の扉。壁にぶつかりひどく耳障りだった。何事だろうかと目を向けると、双子の甘ロリの方がいた。

 元気いっぱいに寝巻きであろうモコモコあまあまワンピースをひらひらさせていた。

 寝るのにそんなに装飾が付いていて邪魔ではないのか。


 もう一人の方はどうしたのかとか、何事かとか、扉の鍵壊れた、とかいろいろ言いたいことがいっぱいあった。

 それを言わせず一言叫ぶように告げて、踵を返して帰っていた。せめて文句は言わせて欲しかった。


「明日の仕事。世界的犯罪者と会談だから、バシバシ観察してよね、頼むよ」


 寝る寸前に急にダイナミックお邪魔しますしておいて、言い逃げして行くのは勘弁して欲しい。


 それと……世界的犯罪者ってなに?


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