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カラフル・アナグラム2

 

 彼ら双子は、ある一つの街の自警団のような何かに所属しているのだと知った。

 その名も『ニフェ』

 意味は知らない。語感がパフェに似ていると思った。

 アジトとする街を中心にその周辺の治安を守っているそうで、自警団と呼んで差し支えないだろう。傭兵業も営んでいるとも聞く。自由な警察と考えるのが妥当か。


 そして、この孤児院がある街の丁度一つ隣だ。思いの外近所だった。


「それでさー、その事件についてもーちょっと話して欲しいなぁっと思って」


「……この前話したかと思うのですが」


「赤い以外に何かないの?」


「特には……あ、白もあった気がします」


 双子が数日後にまた来た。

 話すことがないと言っているのに聞かないのだ。面倒だなと思う。そういうことじゃなくて、と会話が続く。


「そもそも赤いって何が?」


 何が、と言われるとは思わなかった。

 服装とか髪色とかデタラメを言えれば良かったのだけど、あいつは生憎さまそんな色の服や髪ではなかった。

 素直に色が、といえば、だからなんの色なのだと聞き返される。色は色だ。少なくとも私にとっては。


 いや、この双子に通じるように喋らなくては帰ってくれないかもしれない。どういう風に表現しようか言葉に詰まる。


「……性根が?」


「……え、本当にどういう意味?」


「性根って……えぇ……」


 全く伝わらなかった。こうなるから喋るのは好きじゃない。どうしようか。


「心の色、みたいな。本質というか、なんというか」


「……それが見えるの?」


「視覚として?」


「そんな感じですね……特異体質って知ってます?」


 二人はお互いに目を丸くして全く同じ反応をした。まさに鏡合わせだった。


「「……嘘でしょ」」


 見事なまでのシンクロで二人がつぶやく。

 特異体質の単語だけで状況を察するあたり、相当頭がまわるのか、はたまた情報通なのか。


「……調べたのに、出てこなかったんですかね……我が家は『視覚の家』だって」


 特異体質とは、五感のどれかに超能力のようなものがある者の通称だ。私の場合は目、つまりは視覚にある。

 さてでは視覚の家とは何か。率直にいうと視覚の特異体質者が生まれる家系のことだ。


 他に触覚、嗅覚、味覚、聴覚があるが、そのうち二つくらいはもうとっくのとうに滅んだ家系。


 有名なのは嗅覚の特異能力者だ。五家の中で一番繁栄している。私の家は滅ぶ寸前といったところか。なんせ、残りが私と姉しかいない。

 私には結婚願望もないので、将来は姉に託されている。


「…あぁ、つまりは『色』って……」


 視覚の家は、どうにも排他的なところがあって、情報を秘匿していたのかもしれない。その状況下でも私の言うことを信じられる精神がわからない。

 嘘だとは思っていないと色で判断できる。私の反応を見てそう思った可能性もあるが。


「私自身の感覚なので、言語化するのは難しいんです」


「何が見えてるの?」


 言語化できないといっているのに、それを話せと言われる。本当に話を聞いていたのだろうか。


「……色が見えてます。命の色が、感情や根本、本質が色で見えてます」


 言葉にしても伝わらない感覚だ。一回成り代わるとか憑依してもらえればきっと伝わるのに。

 黙ったままの双子に、私は言葉を続ける。


「考えていることがとてもアバウトにわかったり、その人の性質がなんとなくわかるだけ」


 ピンとこないだろうから、説明のために実例を挙げる。

 双子は目を細めて、本気モードとばかりに真剣そうな顔をしている。


「例えば、貴方達は見た目年齢よりおそらく歳が上ですね。童顔というどころじゃなく、種族の差か、何か原因があるのか。大幅に違うようで………先ほど、犯人さんが赤と白だと言いましたけど、貴方達も十分に赤が混じってますよ。黒もあるのでまぁ、明るい方なんだろうなと思うだけですけど」


 赤は凶楽、白は恐怖、黒はポジティブだ。イメージと全く違う当て嵌めのように見えるが、私ならではの感覚なので、仕方ない。

 一般的な色のイメージと私のイメージは全くの別物である。


 あ、ちょっと白が混じった。


「私のこと気味が悪いとでも思いましたか? 事実ですので気にしないで下さい」


 これ、見えたもの全部そのまま喋るととんでもなく気味の悪い何かを見る目で見られるのだ。家族内でもそうだった。姉以外は真っ白だった。あんたらも能力あるんだから五分五分だろうに。


 姉に関しては正直言ってよくわからない。

 色だけで判別するなら、明るくて少し後ろ暗いことを隠している優しい姉なのだが、いかんせん何を考えているのかさっぱりだった。

 根本が見えても、心の声がわかる訳ではないと、姉の存在が教えてくれた。


「……いやぁ、凄いね。特異体質」


「聴覚の特異体質者の知り合いはいるけど、盗み聞きされまくるくらいで考えてることまでバレないし」


「……アイツ超お調子者だよね」


「ね」


 聴覚の家系は残っているらしい。盗み聞きとはつまり聞こえる範囲が広いとか音波がわかるとかだろうか。耳が痛くなりそうだ。


「考えていること全てがわかる訳ではないんですけど」


「……初対面で年齢バレは初めてだったよ?凄いよ、ソレ」


「すごいすごい」


 褒められるのは悪い気はしない。

 もう白色は消えていて、黒が強くなってきた。どうやら楽観的思考をすることにしたようだ。


 ほっと一息。これで帰ってくれるだろうか。


「その能力を生かして、ウチに就職しない?」


 突然の勧誘。

 衝撃的すぎて、間抜けな顔を晒していたであろう自覚はある。この双子の考えてることもよくわからなかった。


 わからないことは恐怖を抱きやすいと言うが、私の場合物珍しく、目を惹く存在だ。

 少し彼らに興味が湧いた。


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