互いの協力
更新が遅れて申し訳ございません。
ストックの案が少なくなり、更新が遅れております。 スイマセン。
奴隷商館で買った奴隷、ヤニスは優秀だ。
近接戦闘となると、片足が踏ん張りが効かないためにそこは俺が受け持たないといけないが、それ以外の戦闘は彼女の魔法である風系の魔法と弓で大いに活躍した。
彼女も売られないようにしているだろうが、少し無理をしているように感じた。
「ヤニス、お前は少し無理してないか?」
「いっ、いや、そんな事はないわ。 何を言ってるの?!」
「無理はしないで良い。 逆に無理をして倒れられるのはこっちが困る。 使い捨てにするつもりもないのに潰れられても困る。 後輩を買うかもしれないからその時は、ヤニスに頼むからな。 しっかり頼むぞ?」
「はい・・・。 ありがとうございます。 実は少し無理をしていて・・・。 少し辛かったんです。」
「ほらな。 互いに協力しないと無理だぞ?互いに声を出して、サポートして行こうな。」
「はい。 畏まりました。」
少し渋い顔をしていた彼女の顔に笑顔が出た。
彼女の彼女なりに自身の能力を売り込んでいたらしい。 まあ、俺も仲間が欲しかったから別に急ぐ必要がないと思っていたが、彼女はそれを急いでいたらしい。
それからは互いに声を掛け合い、依頼をこなした。 最初は遠慮もあり、うまく行かなかったが、繰り返し討伐や採集をしていると、うまく行くようになった。
その際に俺も『異次元収納』と『回復魔法』のスキルを手に入れた。 ヤニスも『魔弓術』『鷹の目』を手に入れた。
『魔弓術』は矢を番えずに魔法を矢として、放つことで矢の消耗を減らすことが出来る。 『鷹の目』は文字通り鷹の様に遠距離の敵を見つける事を出来るスキルだ。
「主様、そろそろ戻りませんか?収納があるにしてもそろそろ戻りませんか?」
「そうだな。 いくら何でもそうだな・・・。 戻ろうか。」
ヤニスの提案に乗り、街へと戻る。
街ではいつものようにギルドに向かい、依頼の達成をカードで確認してもらう。
受付に並ぶと、順々に呼ばれていき、順番が呼ばれる頃になった頃に突然、割り込まれた。
「主様、次です。」
「ああ、すいませ「悪いな。 俺らが先だ。」・・・ちょっと!」
「あん?俺らは忙しんだ。 少しは雑魚は黙ってろよ。 良いな。」
「そんな事がまかり通るか。 後ろに並べよ。」
「ああん!手前、俺をバズール様と分かっての物言いか?良い度胸だ!訓練場に来い!少しここでのルールとやらを教育してやる!」
「ばっ、バズールさん!喧嘩をするなら罰則を与えますよ!」
「うるせぇ!殺すぞ!アマァ!黙ってろ!」
「ひっ!」
バズールという男が無理やりねじ込んだことを注意したシンをドスの効いた声で、脅す。
受付嬢も勇気を出し、注意をするもその太い腕でテーブルを叩いたためにテーブルが変形し、その音に悲鳴を出した。 その様子を見ていたシンは仕方がないと返事した。
「はぁ~。 仕方ないですね。 付き合いますよ。」
「当たり前だ!泣き言いうなよ!付いてこい!」
「主様・・・。」
「大丈夫だよ。 平気だから。」
彼女をギルドに置いて、鍛錬場に向かう。
鍛錬場はギルドの受付や事務を行う管理棟と解体を行う解体棟の間に設けられているのが、鍛錬場だ。
そこに辿り着くと、バズールが大声で話す。
「これから俺に逆らった愚か者を成敗する!見たい奴は見ていけ!ただし、見物料は貰うからな!」
「おいおい、なんだそれ?タカりか?」
「俺様の戦いが見られるんだ。 当然だろ?当然、お前にも払ってもらう!そうだな・・・。 あの奴隷を寄こせよ。 俺が可愛がってやるよ!がはははっ!」
「あん?舐めてんのか?殺すぞ?」
「・・・!なに、脅しか・・・?良い度胸だ・・・。」
偶然いた冒険者から彼のパーティーメンバーが、少額ではあるが、徴収している。
その横でヤニスを要求するバズールに切れたシンは、威圧をした。 相手は少しビビったようだが、持ち直して虚勢を張り直し、得物を構えた。
あちらは大剣。 こちらは無手で挑むことにした。
「あん?お前、やる気あんのか?」
「別に。 アンタに武器を使うまでもないと思ったからね。 どうぞ。」
「・・・! 舐めんな!オラぁ!」
バズールは大きく振りかぶり、大剣を俺に振り下ろした。 俺にはその振り下ろしが止まって見えた。
振り下ろした腕を叩いて、軌道を逸らして彼の膝を支点に横面に蹴りを叩き込んだ。
「てい!」
「ぐふっ!」
ドンガラガッシャン!
バズールは振り抜いた足で吹き飛んだ。
振り抜いた先にある壁にめり込んで動かなくなった。 周りの連中はただ茫然としている。
審判を担当している受付嬢も固まっている。
「あの、判定は?」
「はっ!はい!・・・えっと、勝者!シンさん!」
「とりあえずもう良い?」
「はい!大丈夫です!お疲れさまでした!」
「ん。」
俺自身はくだらない戦いではあったが、彼女を守る意味をあり、叩きのめした。
自分でも彼女を仲間以上の感情を持っていた事を知った。
俺もやはり仲間が欲しかったんだな・・・。 彼女と、これから会う仲間を大切にしたい・・・。
「さて、この間覚えた回復魔法でヤニスの怪我の回復に使ってみよう・・・。」
「主様!大丈夫ですか?!」
心配そうな顔をして、不自由な足を引きながら隻眼のダークエルフの女性が近づいてくる。 彼女に笑顔で見ると、心配がなかった事が伝わった為か、彼女の顔から不安が消えて笑顔になった。 俺はそのまま窓口にいる受付嬢に声を掛け、処理してもらうはずだった素材や依頼を処理してもらう。
「今回は派手にやったんですね?シンさん?」
「貴方は・・・アンナさん。 でしたっけ?」
「はい。 覚えてくれてありがとうございます。 処理はしておきますので、私と共に来て頂けますか?そちらの女性も一緒に。」
「分かった。 行くぞ。」
「はい。 分かりました。」
ヤニスは俺の後に続き、アンナさんについて行く。
そのまま二階へと上がり、扉を叩く。
「失礼します。 アンナです。」
『おう、入れ!』
「失礼します。 シンさん、どうぞお入りください。」
「失礼します。」「失礼します。」
入室した部屋は少し豪華な作りになっていた。
その中にある立派な造りの執務机に座っている壮年の男性が座っている。 その机には山のような書類に埋もれていた。
「すまんな!もう少しで緊急のものが終わる。 少し待ってくれ。」
「マスター、いつも言っているじゃないですか!後回しにしないでやってくださいと!だからこうなるんですよ?!聞いてますか?」
「小言は良いから手伝えよ!アンナ!」
「まったく仕方ないですね・・・。」
溜息をついたのちにマスターの横に立ち、マスターを怒ったり、褒めたりしながら書類をこなしていく。
小一時間ほどで落ち着いたらしく、マスターと名乗る男性が応接セットの相向かいのソファーにどっかり座り、アンナさんが入れたままであったお茶を飲み干して、アンナに言った。
「おい!アンナ!俺のはぬるいぞ!」
「当たり前です!小一時間も放置したんだから当たり前です!」
「ちっ!仕方がない。 お代わりをくれ!」
「はいはい。 分かりました。 マスターは話をして下さいね?」
「無論だ!」
アンナさんはお代わりのお茶を入れるために退室していった。
扉が閉まる音がした後でギルマスがこちらを見た。
「さっきは悪かったな。 話はな。 今回の騒動にうちらが関わらなかった事に対する謝罪だ。 まあ、それだけではないんだが、謝らせてほしい。」
「謝罪は良いです。 ですが、荒事が多いギルドに受付嬢位しか注意が出来ないというのは、マズイと言うより危ないですよ?管理できなくなります。 ギルドで元冒険者はいないんですか?」
「ここの職員にもいるが、魔法職と斥候職だった者しかいないんだ。 バズールの様な前線を張れる奴には対応が出来ないんだ・・・。 すまん。」
「それではもし同じことがあれば、対応できないという事ですか?それはギルドとしてもこれは早急に対応する案件では?」
「そこで頼みがある。『イヤです。』・・・まだ何も言っていないが?」
「これからその対応を俺に依頼したいとかいうんだろ?めんどくさいよ。 そこはギルマスである貴方が対応するべきでは?」
「出来るならしている。 ただ、来た時だけで良い。 引き受けて貰えないか?頼む。」
「・・・・。」
「主様・・・。」
ギルマスは、椅子に座った状態であるが、頭を下げた。
その様子に俺もアンナさんに入れて貰ったお茶を飲んでから瞑目して考える。 その様子を見ているヤニスは瞑目する主を見る。 彼女も心配だった事は事実だ。 自分もその被害に会っているからだ。 瞑目した俺も思案はしていた。
俺はどうすれば・・・。 しかし、このままではヤニスの二の舞が・・・。 ここは・・・。
「分かりました。 ただし、いた時だけになりますよ?それ以外はギルマスが対応してください。 それが条件です。 それ以外は私も無理です。 他の保安要員も確保は続けてくださいよ?」
「引き受けてくれるか!すまんな!その代わりお前から買い取る素材や魔石は色を付けて買取をすることにするからな!よろしく頼む!」
「分かりました。 こちらこそ。」
ギルマスと握手をして今後の関係を確かめ合って退室した。
その後は受付のある一階へ降り、そのまま受付にいるアンナさんに声を掛ける。
「話は終わりました?」
「ええ、話は引き受ける事にしました。 ですが、そちらも探してくださいよ?俺も必ず毎日来るとは限りませんからね?」
「それは続けます。 それまでよろしくお願いしますね。」
「ええ、分かりました。 買取はお願いしても?」
「構わないわ。 こっちよ。」
アンナさんの案内で買取所に行き、そこの係りの職員に買取の増額を伝えた。
最初は驚いていたが、ギルドカードを見ると、納得したようでこちらに笑顔を見せて対応してくれた。
俺は収納していた買取品をカウンターに出すと、係員が少し引きつっていたが笑顔で対応してくれ、買取金額も本当に色がついた価格で買い取りをして貰えた。
そのお金を見て、あの拠点にさらに物資を持ち込むべく、ガルーダさんの所を始め、色々なお店で買いものをして、収納していった。 当然、手形も使う程、買い捲った。
その様子を見ていたアニスが心配そうに声を掛けた。
「主様、そんなに買い物をしてどうするんですか?」
「うん。 これから向かう場所は隠し砦の様な場所だよ。 まだ、建物も一つしかたっていないんだ。 一人で始めているからまだ足りないんだ。」
「それで私を買われたんですか?」
「まあ、それもあるけど、一番は一緒に進んでくれる仲間が欲しかったからだよ。 おれは一度、幼馴染と仲間に裏切られているからね。 ギルドの連中と組むにはちょっとね・・・。 だから冒険者経験のある人にしたんだよ。」
「そんな事が・・・。 分かりました。 私も怪我をした途端に売られたので、同じですね?」
「それもキツイね・・・。」
「お陰で主と会えましたから。 これから改めてお願いします。」
「こちらこそ。」
俺らは宿に向かって歩いていく。
明日も良い日であることを願いながら・・・。
これからも頑張りますので、応援をよろしくお願いします。