奴隷商館と俺。 仲間は怪我をしている戦士
少しゆったり目の進行をします。
主の案内で奴隷商館に入った。
応接室に案内した後で退室して一人になった部屋を見渡す。 高級そうな革張りのソファーが二つ、向かい合う様にあり、その間にこれまた高級そうなテーブルが置かれていた。
「流石にこれは・・・。 ちょっと奴隷の価格が高いか?」
「それはどうでございましょうか?まずはご覧ください。」
「ああ、スイマセン・・・。 よろしくお願いします。」
部屋での独り言を途中から聞いたらしく、少し不満顔であったが紹介の時間になると、そんな事もおくびにも出さずに紹介を始めた。
「さて、シン様に合うと思われる候補の女性を連れてきました。 自己紹介をしなさい。」
「名前はルル。 種族は普人族です。 職業は魔法使い。 元々、冒険者だった。」
「名前はキリエクス。 種族は熊獣人。 職業は守護騎士。 戦時捕虜だ。」
「名前はヤニス。 種族は山エルフ。 職業は魔法剣士。 冒険者をしていた。 左目が見えないのと右足が不自由だ。」
紹介された女性は3人。
普人の女性で22歳。 獣人の女性で32歳。 山エルフというか、ダークエルフの女性で180歳。 普人の年齢だと17・8歳くらいとの事。 価格も魔法使いが一番高くて金貨400枚。 一番安いのはやはり不自由なダークエルフの女性で金貨135枚。
予算からしてもダークエルフの女性しか無理だ。 しかし、回復魔法はまだ未収得だが、あのメンバーとのクエストで貰った高回復薬がある。 それを使えば、少しは改善するはず・・・。
それに片目は眼帯をしているが、綺麗な顔であったこともあり、彼女を購入する事にした。
「山エルフの女性でお願いします。 出来れば、今の服以外の物を着せてから引き渡して頂けると嬉しいんですが・・・。」
「分かりました。 支払いは?」
「すいませんが、小切手でも良いですか?」
「小切手でございますか?ええ、構いません。」
俺はガルーダさんから貰った小切手帳から一枚切り取り、金貨135枚と書き、彼に渡した。
少し訝しげにしていたが、支払者の欄を見て急に表情が変わった。
「ガルーダ紹介の商会長のサイン付き・・・貴方はあの方とどんな関係で?」
「ガルーダさんとは襲われていた商隊が襲われていた際に私が助けたことが最初です。 それから何度か話をしたり、取引をさせて貰ったんですが、今回の取引で代金が用意できないからと、この小切手を貰ったんです。」
「ほうほう・・・。 畏まりました。 では、新しい鎧下と下着上下と革鎧一式をサービスで付けます。 当然ですが、下着や鎧下は3枚ほどお付けします。 当然、ブーツも新品をお付けしますよ。 それ込みで先ほどの金額でよろしいでしょうか?」
「そんなにつけてくれるんですか?」
「ええ、構いません。 貴方と知古になった方が稼げそうなので。 これからもよろしくお願いします。 シン様。」
主は紳士的に頭を下げると、準備があるからと、彼女と他の奴隷たちを下がらせた。
その後は俺は最初の部屋で接待を受けた。 奴隷の首輪を付けた綺麗なメイドさん三人にお茶や軽食の接待を受けながら、彼女の準備を待った。
「君らも売りに出されているの?」
「はい。 お客様。 私が金貨20枚であちらのロングヘヤーの子が金貨18枚、ショートの子が金貨15枚で売られています。」
「へぇー。 これだけかわいいのなら引き取り先も決まりそうだけどね。」
「ありがとうございます。 ですが、私達を含めて売り物である私達が、お客様の世話をするのはないんですよ。 本当は。」
「えっ?なんで?」
「それは・・・「それは私がお客を見て、対応させているからです。」・・・ご主人様。」
「そうなのですか・・・。」
「貴方達は下がって良いですよ。 まあ、私が貴族が好きではないという事もありますか。」
主は奴隷メイドたちに指示を出して下がらせた。
その後は主殿と会話をした。 彼の裁量でお客の接待役を決めているらしく、貴族となると普通に従業員に対応させるそうで、奴隷を接待に回す時は売り込みと見本のような形で見せるそうです。
「という事は、私が彼女らを買うと?」
「その通りです。 貴方は大成する予感がします。 貴方からお金の匂いも強くします。 これから引き渡す彼女も貴方の一翼を担えると信じています。」
「・・・。 対した自信ですね?パーティー追放された冒険者なんですが。」
「今はそうですね。 『星雲の絆』のシンさん?今は元ですが。」
ガタッ!
「・・・。 なぜそれを?」
「私は奴隷商ですが、商人です。 貴方の後ろにはガルーダさんがいますが、その他にいらっしゃいますよね?情報は武器ですよ?貴方がどうしてここまで来たかは分かりませんが、追い出された事は知っておりますし、貴方があのパーティーで中心メンバーであると思っておりますしね。 いい加減、お座りください。 話しずらいです。」
立ち上がったままであることを思い出し、先ほどまで座っていた革張りの椅子に座り直す。
そして、俺のあのギルド本部での事には、緘口令が敷かれるほどの機密情報であるはずと、思案を始めたがそれを分かるかのように主が話し出した。
「貴方が出ていった後、彼らは貴方がいた時と変わらない状態で活動をしていました。 しかし、貴方の支援がなくなった事であなたの好意で提供されていた物が手に入らず、自身の稼ぎから出さねばならなくなり、支払っていましたが、今までのあなたの支援があるままのお金の使い方をしていますので、その分依頼を多く受けねばならず、それをこなすために疲弊していると、教えてあげますよ。」
あいつら・・・、どれだけだよ・・・。 甘やかせすぎたのか?少しは進歩していると思ったのに・・。
「まあ、シン様の懸念も分かりますが、彼らはそこまで自身の置かれた状況を理解している訳では無かったようですね。 実際問題、彼らには多くの思惑が絡み合い、彼らを徐々に逃れられない状況になっておりますし、シン様がそこに行けば、もはや今のような生活はなく、操り人形のような生活になります。 どうします?」
あの時に彼らは、自身の栄誉と保身のために俺を追放した。
当然、話から爺さんも同じような思惑があるのを知っていて、絡めとられる前に貰えるものは貰った後で出て行ったんだろうと、結論できる。 知らなかったのは俺だけ。
どうでも良くなった幼いころに身分も気にせずに付き合ってくれた親友も仲間もいない・・・。
俺は決断した。
「私は行きません。 もう彼らは・・・自分で決めないといけない。 私はここの生活をしていきます。 そして、自分が誇れるように努力します。」
「・・・。 その言葉待っていました。 これからも我が商館に御出で下さい。 貴方にあう奴隷を紹介させて頂きます。 あっ、ちなみに先ほどの3人も冒険者は出来ませんが、夜伽は可能ですので、ご購入をお待ちしております。」
「ぶっ!ごほっ!そういう事は聞いてません!」
「おや?そうでしたか?いや、女性冒険者をお求めになるので、それも目的かと?」
「そういう事は手順を踏んでします!」
「ですが、優良な主に当たる事は稀です。 継続して仕えたいと、思う奴隷は自身の身も使いますぞ?それに購入された彼女も夜伽も可です。 お楽しみください。」
「・・・。」
夜伽の言葉に頂いていたお茶を吹き出しそうになるが、せき込んでしまう。
主殿の奴隷であっても捨てられないように自身の体を差し出すことも厭わないことを教えられ、少し悲しい気持ちになったが、主に誇れる力がない者が体を差し出すというのも考えられなくはないが・・・。
「ですが、奴隷を大切にしてくれるお客様は我らも嬉しいです。 経緯はどうであれ、我らの元に来た者が買われた先で笑顔で、幸せに過ごすことは我が事のように嬉しいものです。」
「そうなる様に努力はします。」
「よろしくお願いします。 おや?準備が出来たようですね。 入りなさい!」
「お待たせしました。 今日より可愛がってください。」
「ああ、よろしく頼む。」
「お買い上げありがとうございます。」
こうして俺は一人の奴隷を手に入れ、商館を出た。
彼女の装備は皮製軽装鎧を装備とブーツを履いている。 しかし、武器は持っていなかった。 持っているのは着替えと鎧下の入っている小さな肩掛け鞄があるだけだった。
「それでアニス。 君はどんな武器を使うんだ?」
「そうですね。 力があまりないので、細剣と弓を。 それほど高い物ではなくても良いので、用意をして頂けますか?」
「・・・。 話しづらくない?」
「・・・。 なぜそう思われました?」
「なんとなく。 背中を預け合うから話しやすい方で良いよ。」
「・・・。 分かった。 じゃあ、よろしくお願いするわ。 でも、良いの?私は奴隷よ?」
「話しやすいほうにしないと、後でやりずらくなるからね。 これからよろしく。」
「はい。 こちらこそ。」
こうして少し垣根が下がった二人は、そのまま武器屋へと行き、アニスの細剣と弓、矢筒と矢を買った。当然、支払いはガルーダさんから貰った小切手で。
装備を受け取ったアニスは、俺と共に宿屋に向かった。
「お帰りなさい。 シンさん。 おや?仲間の方ですか?」
「はい。 彼女の部屋を用意できますか?」
「分かりました。 では・・「主様と同じ部屋でお願いします。」・・よろしいですか?」
「アニス、良いのかい?無理はしなくていいよ?」
「どちらにしても主の側を離れるのは参りません。 同じ部屋で。」
「そうか。 では同じ部屋で。 同じような形でお願いできますか?」
「分かりました。 ベッドは主人に運んで貰いますね。 これからも当宿をよろしくね。」
「「お世話になります。」」
こうして、彼女も同じ宿で同じ部屋を利用する事なった。
その日は彼女の必要な日用品や物資を購入していった。 必要な物であるから市場や商店を何軒も周り、生活に困らない様にした為、今日は依頼を受けずに準備に徹した。
「良かったの?奴隷だから私は覚悟していたよ?」
「準備は必要な事だよ。 依頼は明日からでも良いよ。」
「分かったわ。 明日から頑張るわ。」
「よろしくね。」
こうして彼女の必要な物を抱え、宿へと戻っていった。
夕食を食べて、彼女も入浴もしてきた。 そうして寝る時になる時に彼女から話しかけてきた。
「あの主様。 その・・・少し不安なので、今日は同じベッドで寝てよろしいでしょうか?」
「えっ?それは・・・。」
「奴隷ですが、寂しいんです。 人肌で安心したいんです。 お願いします。」
「あっ、うん。 分かった・・・。」
「ありがとうございます。」
アニスがそのままベッドに入ってくる。
アニスは着痩せするタイプらしく、双丘も立派なものがあり、安産型の体つきだがウエストは細かった。
当然、薄着である為に体の凹凸もくっきりと分かってしまう。 彼女自体も抱き着いているからそれは体全体で分かってしまう。
「おやすみなさい。 主様。」
「ああ、お休み。」
すぐに寝息のような音が聞こえるが、まだ動けずにいた。
俺も少しずつ動いて少し距離を取る。
「これが毎日はないよな?流石にそうなると、理性がヤバイ・・・。」
寝ている彼女の寝顔を見ながら少しでも休んでおこうと、目を閉じるが寝付けなかった。
最後は役得だと言わんばかりに彼女を抱きしめた状態で寝た。
寝れないと思いながらも不思議とすぐに寝ることが出来た。 久しぶりによく寝れたと感じるほどだった事は言うまでもない。
翌日は日の出と共に起きだして、準備を始める。
彼女も支給された革鎧を着こみ、購入した細剣と弓矢を装備して準備を終える。
「今日は依頼を受ける。 その際にアニスがどれだけ強いかを見せて欲しい。」
「畏まりました。 頑張ります。」
翌日、朝から依頼を受けるためにまず登録をする。
意外とあっさり冒険者登録が終わったアニスと依頼を受けてすぐに出て行く。 街から出てすぐに空を見たアニスに声を掛けた。
「どうしたの?」
「はい。 あそこに焼き鳥にしてもおいしい鳥が、飛んでます。」
「まさか、撃ち落とせる?」
「勿論です。 では・・・。」
ヒュン!ピィ!
「本当に撃ち落としたよ・・・。」
「ダメでしたか?」
「いや、大丈夫です・・・。」
こんな感じで彼女は売れる鳥や魔物を狩りまくった。
アイテムボックスがあるから問題はないが、それでも優秀であることは言うまでもなさそうだ。
「これ、俺いる必要ある?」
「そろそろ街に戻って、換金しませんか?」
彼女が少し不自由な足を引きずりながら戻ってくる。
いつか彼女のケガを直せる様に陰で回復魔法を習得し、上位魔法になるように努力をしている自分が中々に頑張るなと、思うのだった。 薬で回復させられれば、良かったんだがと思わないこともないのだが・・・と、思うのであった。
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