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戦輪の戦士  作者: KY
32/41

災い去りて、災い帰す?!

陣幕内は凄まじい程の沈黙が流れる・・・。

その中心に居るのは、独断専行をした悪ガキの頭になっていた男。

貴族のみでありながら横柄な態度で、進めようとしたが失敗し、捕虜になった。 その後、俺らの支援の下で父親がつけてくれた傭兵団に助けられた。 惨めとしか言いようのない為か、彼も項垂れていたのだが、陣幕にいた他貴族の方々が口を開く。


「貴殿はこの失態はどうなさるおつもりで?」


「・・・・。」


「黙っていては始まりませんぞ?欲にかられ、独断専行した上に虜囚の辱めを受けた上に救出されたのにも関わらず、何も言わないとは・・・。 情けない。」


その後も口々に罵声を浴びせられるが、彼は言い返さなかった・・・。 いや、言い返せなかった。

事実、自分らの独断専行で戦線を崩壊させる危険を大いに出した上に、敵対した相手に救出の手助けをして貰った上にその彼らの手によって、相手を撤退させるほどの手柄を立てさせてしまう原因を自身が作り出したからだ。 本来は自身が立てる予定の手柄をだ。


「いつまで黙っているつもりだ!何か言いたまえ!」


「うっ、五月蝿い!俺の、俺の作戦は完ぺきだったんだ・・・!なのに・・・なのに!他の連中が不甲斐ないからこんなことに・・・。 だから、だから俺は悪くないんだぁぁぁぁぁ!!!!」


「まだそのような事を・・・。」


子供様な主張をする彼を貴族の方々は、哀れな目で見ている。

そんな中で1人の男性が、彼に1枚の紙を手渡した。


「えっ?なんだそれ?」


「読んでみると良い。 君の家からだ。」


拘束の解かれた手で、その紙を見る。

封蝋が解かれ、自身で広げると、そこには衝撃的な内容が記載されていた。


「はっ?離縁状?なぜ?どうしてだぁぁぁぁ!!!!」


「今回の事を含め、貴殿のここでの事は書かせてもらった。 その結果がそれだ。 出迎えも来ているから帰り給え。」


「やだっ!嫌だァァァァァ!!!!」


実家から来たと思われる騎士や兵士の方々に押さえつけられ、再び縄で縛られていく彼を周りにいた人々は黙ってみていた・・・。

彼がされた事は、寛容な対応がする限界を超えていたらしく、誰も助けに入らなかった。

彼が去った陣幕には、静まった。 そこで俺らをみて、話し掛けられた。


「シン。 この度の助力を始め、これまでの助太刀、感謝しても足りない。 だが、少し対応を考えなくてはならない事態となった。 良いか?」


「はっ!して、どのような・・・?」


「うむ。 敵の『姫将』についてだ。」


「拝聴いたします。」


話は衝撃だった。

彼女はすでに死亡した事になっており、母国に帰還する事が出来なくなった事が伝えられた。

相手側は、先鋒軍の壊滅と彼らの保証に多額の金銭を用意せねばならず、それらを食いつぶすであろう『姫将』の存在が、邪魔になった。

多くの手柄を持つ彼女も元をただせば、身分の低い女性から産まれた女性で、継承順位もかなり低い。 が、手柄や人望が厚いために捕虜としての価値は高い。 そんな彼女1人の為に兵士や騎士の保証を削れば、国が傾くと判断した国は、彼女を抹消した。

その事実が彼女にとっては、かなりショッキングな事実だった。

その為に彼女は膝をつき、泣き始めてしまう。


「そんな・・・私は・・・私は祖国の為に尽くしたのに・・・なぜ・・・?」


「お嬢・・・。」


「貴殿らは完全な捨て駒にされたようです。 ご家族も保証の為に供出を促されており、その捻出に苦慮しておられます。」


「そんな・・・そんな・・・。」


「それどころか、そちらの壮年の騎士殿も戦死した事になっています。」


「やはりですか・・・。 まあ、仕方がないでしょうな・・・。」


「落ち着いておられるのですね? 驚きませんか?」


「驚いてはいますが、お嬢でそれなら我も・・・という事です。 で、この後はどうなりますかな?」


「・・・。 ひとまずは我らが身柄を預かります。 その後は領主様達の指示待ちです。 当然ですけれども拘束や拷問等はしませんので。 行動の制約はしますが・・・。」


「それくらいは仕方がありません。 よしなに。」


姫将の守役の男性騎士は、俺に頭を下げるとヤニス達の案内で陣幕にお連れする。

当然だが、姫将殿は姉妹と同じ陣幕に入り、男性騎士殿は俺の陣幕に入っていく。 虚脱気味の姫将と対照的な騎士殿。 領主様達は彼らから切り取った領地をどうするかの議論が交わされていく・・・。

俺はそれには呼ばれずに、自身の陣幕へ・・・。


陣幕には鎧を脱ぎ、軽装になった騎士殿がいた。 名をグラインさん。

聞けば、幼い姫将殿の後見を先代様より拝命してからずっと彼女の守役をしていたとの事。


「捕虜になったのに我儘かもしれませんが、お嬢と同じ場所に居させてほしい。 駄目であろうか?」


「・・・。 もし、処刑と言われたらどうなさるおつもりで?」


「無論、同様に私もしてほしい。 お嬢より先に。」


「・・・。 凄い忠誠ですね・・・?まあ、処刑はありえませんね。 命の危険のある沙汰は、出ないと思いますよ?」


「我もそう願う・・・。」


沙汰はすぐに来た・・・。

ひとまずは切り取った領地の方が重要らしく、彼女と騎士殿は俺の里預かりとなり、兵士達はそのまま捕虜交換の際に引き渡されることになった。

予想通りの結果に溜息をつきつつも、順当な対応に安堵した。


「またお世話になりますな。 シン殿。」


「・・・。 なにやら分かっていたような対応ですね・・・?」


「これだけ歳を取っておりますと、何となくですが予想が出来ますゆえ・・・。」


「ですか・・・。 それで姫将殿は?」


「お嬢はやはり母国に見捨てられた事が答えているようです。 貴殿の従者達の対応で少し持ち直しましたが・・・。」


「ひとまずは私の管理している里に軟禁させて頂きます。 ただ、亜人の里なので差別があると困りますが。」


「それは心配ありません。 お嬢の従者は猫獣人。 お付きメイドは狐獣人ですので。 問題はありません。 我も部下に熊獣人の兵士がおりましたので差別はありませんぞ。」


「わかりました。 ですが、場所は内緒にしたいので、途中で目隠しをします。 里に入った後は、里の中にいる際は、行動は自由にしても大丈夫にします。 まだ細々としたモノはありますが。」


「委細はそちらにお任せします。 よろしくお願い申す・・・。」


「畏まりました。」


俺は領主様に断りを入れ、召喚兵を最少人数にしてから帰還して行く事に。

姫将殿は、ヤニス達と共に俺らの乗ってきた馬車へ。 まだショックから立ち直っていないようで、2人に支えながら乗り込んでいた。

一方、来た時と変わらないのが騎士殿。 今も召喚馬に跨って馬上の人になっている。


「やはり馬は良いですなぁ!風も気持ち良いですぞ!」


「お元気ですね・・・。」


「我は戦場にずっとおりましたので。 ですが、お嬢の守役を拝命してからは、余り出なくなりましたので、物足りんですなぁ。」


「まあ、結局は軟禁になりますから退屈ですよ?」


「まあ、何か見つけますよ!がぁはっはっはっ!」


ゲラゲラと、笑う騎士殿に少し引きながらも一行は、一路里へ。

それぞれの思いを抱えながら帰還して行く・・・。  


≪隠れ里≫ 


里を見張る見張り所。

そこにいる自警団は3人。 ダークエルフ2人と狼獣人の3人。

見ていると、20名程の集団が歩いてくることを発見した。


「?! おい!あそこ!」


「なに?」


「なんだ?」


同じ場所にいた2人も同じ方向を見る。

そこには確かに20名程の人影が動いていた。 そして、その中に見慣れた人物が歩いている事に気が付いた。


「シン様だ!お帰りだ!」


「急がねば!」


見張り所からの連絡に俄かに慌ただしくなった里内。

自分らの窮地に手を差し伸べてくれた方の帰還を全員で待った。


「「「「お帰りなさい!!!」」」」


救世主をお迎えするために里の皆で出迎える。

そして、その彼の後ろに2人の人物が付いて来ていた・・・。


<シン>


里が近づくにつれ、懐かしさと帰ってきた様な気持ちになった。

そうしているうちに遠目に監視所が見えて来た。 遠目にも自警団だろうと思われる人影が、動き回っているのが見える。


「気づいたようですね。」


「ああ、今頃は里の入り口に皆いるな・・・。」


「そうでしょうねぇ~。 でも~、嬉しいですねぇ~。」


「ああ、そうだな。」


こうして俺らは里の入り口を通り、里に入る。

捕虜の2人は、馬車ごと里へ。 最初は小型のモノしか入れられなかった巻き上げ機も今では人の入る籠付きで余裕で上げられるほどになったようだ・・・。

そして、皆に言う。


「ただいま!皆!」


「「「「「「お疲れさまでした!シン様!!」」」」」」


里の皆が、笑顔で、それでいて、頭を下げて迎えてくれる・・・。

有難い事だ・・・。

俺は帰ってきた・・・。 不安要素を伴って・・・。

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