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戦輪の戦士  作者: KY
31/41

救出される者

さらりと進めました・・・。


乗り掛かった舟・・・

言葉にすれば、人情や人助けの言葉になる・・・。

今回は違う。 勝手の暴発した連中を連れ戻す事が、今回の任務になった。

アニスの召喚兵を二手に分け、弓兵の部隊と前線の部隊に振り分けた。 そして、出来るだけ派手に前線部隊を攻撃を加えて、注意を引き付けてから傭兵団で救出する手はずになっていた。


「うまく行きますか?主様。」


「どうだかね。 前線部隊の方には、軍楽隊を配しておいて。 派手にね。」


「分かりましたぁ~。」


「あっしらも向かいやす!」


「ああ、武運を!」


「そっちもでさぁ!!」


召喚兵軍団は二手に分かれる。

俺らと同じく前線部隊に向かう部隊と闇夜に隠れて弓兵を始末する剣や短槍、ナイフの部隊の二つ。

そして、傭兵団。

それぞれに目的の場所へと進んでいく。 

闇夜を進む事、2時間で配置に着いた。 偵察に出た偵察兵が見せてくれたのは、規律のだらけた兵士の姿だった。 任務中にもかかわらず、深酒する兵士。 ご法度になっているはずの賭博の元締めになり、兵士達から金銭を巻き上げる騎士。 春を売りに来た流しの女性を囲う指揮官と、もはやどうしようもない。 だが、彼らの人数はやはり多い。 油断は出来ない。


「主様ぁ~。 配置に着きましたぁ~。」


「我らも大丈夫です。」


「傭兵団の方は?」


「配置についたと、姉さんの兵が見ています。」


「はい~。」


「・・・。 そうか。 では、始めよう。 行くぞ!」


「「はい。」」


隠れていた茂みから這い出ていき、静々と相手に近づく。

警戒すべき見張りは、酒と同僚との会話に夢中で近づいた俺らに気が付かない。 大外とはいえ、警戒はしておくべきだが、先の奇襲を防げたことに気を良くして、警戒を怠った。 それが彼らの落ち度。

あっという間に10名の兵士が始末され、5つの警戒点が消えた。


「よし、太鼓を鳴らせ!笛を吹け!派手に暴れろ!」


「行きます!」


颯爽と切り込むヤニス。

彼女を追いかける様に召喚兵達が進んでいく。

重装兵の後を長槍兵が進む。 彼らの進撃速度が速まる。 その上で軍楽隊の音が鳴り響く。

作戦開始の合図がなる!


<侵攻軍サイド>


俺らは思いのほか、少ない防衛勢力に勝利を確信した。 が、それからまもなく現れた大軍に警戒をしたのだが、戦略が拙かった部隊があったせいで時間を稼ぐことが出来た。

先鋒の俺らと、後続の本隊ではまだ数日の距離の差があるからだ。 ひとまずは捕虜を使って、時間を稼いで起き、本隊との合流を図るというのが先鋒軍司令部の方針だった。

 その為、やる事がないのだ。 奇襲をするにしても敵部隊はかがり火を方々において、厳重警戒をしているので、行わなかった。 やる事は捕虜の見張りと周囲警戒しかなかった。

だからだらけてしまう。 元々は金のない人達を臨時の兵士として、招集しているために小金持ちになった彼らは、現地や行軍途中の村や街で、様々な買い物をした。 酒であったり、食料だったり、女であったりと。 今はその金や食料、酒に嗜好品を掛けチップにして賭博の真似事をしている騎士様もいる。 歩哨も酒を飲みながらしているくらいに気が緩んでいた。


「ん?なんか音がしなかったか?」


「そうかぁ?それよりお前もどうだ?一口。」


「任務中ですよ?先輩。」


「お前は真面目だね。 本当に・・・。」


「ん?先輩?」


歩哨警備をしていた2人の先輩後輩コンビが、ふと先輩の声が途切れた事で振り返ると、先輩の喉が掻っ切られる所だった。 叫ぼうとした彼もすぐに後ろからのナイフに先輩同様に切られた。

2人共が、僅かに苦しんだがまもなく倒れ、事切れた。 わずかに残る意識の中で隣を守っていた連中も同様に倒れている事を知り、敵襲だと知った。 通報する事も出来ないが。


<シンサイド>


召喚兵が進撃点にある歩哨を5組倒した事を聞いた俺は、静かに進む。

そして、相手の警戒最深部付近で軍楽隊の演奏を開始させた。

闇夜に響く楽器は、さながら死神の到来を示すようなものだ。 酒を飲んでいた連中も酔いが回った状態でも起き上がり、剣を抜く。 寝ていた者はそのままの状態で剣や槍を持って音のする方へ。


「出迎えが来たぞ!突撃ぃぃぃ!!!」


「出ます!」


おっとり刀でもワラワラと、現れる敵を俺らは打倒していく。

戦輪が唸りを上げ、ナイフが敵の体に生える。 召喚兵の盾に押しつぶされる者、長槍の振り下ろしに頭をカチ割られる騎士、槍の付きだしに鎧ごと貫かれる兵士・・・。

阿鼻驚嘆のるつぼと化した戦場に冷静さをまだ残していた騎士が叫ぶ。


「弓隊は?!弓はどうした?!早く支援攻撃をさせろ!」


「急報!弓隊陣地に急襲あり!支援を!」


「何?そっちもか?!護衛隊はどうした?!」


「目下、対応中ですが、取り回しの良い武器のみで攻めて来ており、こちらが押されております!」


「こちらも対応中で出せる兵力は・・・近衛しか・・・。」


「ならんぞ!近衛は!我らの護衛が減る!」


「ですが、指令!このままでは・・・。」


「ならん!このまま相手を打倒したのちに返す刀で、あちらを叩けばよい!」


陣幕から出て来た豪華な鎧を着た男は、そのまま吐き捨てる様に進言した者に伝えると、再び引っ込んでしまう。 そんな上層部に溜息をつきながら伝令兵に伝えた。


「すまない・・・。 出せる兵はない。 代わりに私の部隊を連れていけ。 済まない・・・。」


「はっ、ありがとうございます・・・。」


伝令の男は、唇を噛み締めて血が出ていたが、気にせずに先ほど乗ってきた馬に飛び乗る。

怒りで血が出ている事も忘れていた。 その後を追う様に騎馬が10騎と歩兵40名が後に続いた。

先頭をいく騎士は、進言した少し小柄の人物に目礼をして走り去る。


「すまぬ・・・。 許せ。」


去り行く騎士や兵士達に呟くようにぼそりと、つぶやいた。

彼らも死出の旅路へと、進んでいった。 弓兵陣地でも同様ではあったが、幹部たちは自身の保身に走っているためにそこは無視した。 そんな幹部連は、撤退の準備をしていたがすでに部隊は損害が多い中で態勢が取れなかった。 近衛を投入すれば、立て直す時間が取れたが、幹部連は投入するタイミングを見失ってしまい、完全に兵力が損耗していた。 すでに予備中隊を投入しており、撤退も前も後ろも攻撃を受けており、すでに組織的撤退が厳しくなっていた。

そこで先ほどの人物が、幹部連に呼ばれた。


「お呼びとの事で参りました!」


「うむ、お前に任務を与える。」


「はっ!なんでしょうか?」


「それはだな・・・。 我らの撤退を支援せよ!だ。」


「そんな!すでに兵は損耗しております!近衛でも投入できなければ、撤退は無理です!」


「近衛は我らの護衛として連れていく。 残存兵力で対処せよ。 これは命令だ!」


「くっ!拝命しました・・・。」


「厳命である。 必ず成功させよ。」


「はっ!」


幹部連の陣幕を出ると、走り寄ってきた従兵に命じた。


「幹部の撤退を支援する・・・。 残存をかき集めよ。」


「はっ。」


戦闘は継続していたが、夕方が近くなり、戦力の分散を恐れた防衛側が撤退を開始していた。

捕虜たちも奪回されたと、報告も来ている。 弓兵陣地もすでに陥落して、残った弓兵部隊と共に残余がこちらに合流すべく、移動を開始している。 近衛はそうそうに幹部連を連れ、本隊への合流をすべく、退却した。


「隊長、残余部隊の長達が来ました。」


「すまない。 では行こう・・・。」


集まった隊長は5人。 明らかに平民階級の小隊長や分隊長しかいなかった。

彼らからの聞き取りで、残った兵員は50名。 これが前線部隊の残余だった。 本当はもっといたのだが、すでに幹部連たちと撤退してしまった。 その為にこちらが激減した。 むしろ捨て石にされた部隊だ。 そこへ弓兵を引き連れた部隊が合流して来た。


「お嬢。 あちらも駄目でした。 弓兵部隊は壊滅し、魔術師部隊はそうそうに退却し、護衛部隊も全滅に近い被害が出ました。 ひとまず残余30名だけです。」


「そうか・・・。 殿部隊が100人にも満たんとは・・・。 我が国の威光はどこに・・・。」


「では、こちらに降伏をしませんか?悪いようにはしませんよ?」


「誰だ!」


突然の会話に割り込んだ男の声に、近くで警戒をしていた男たちも一斉に声の方向へ向く。

ゆっくりとした足音の後から現れたのは、皮鎧の上下を身に纏った若い男だった。


「貴様は?」


「おっと、名乗るのが遅くなりましたね。 私は領主軍の者です。 名前をシンと言います。 今回は皆さんに降伏を勧めに着ました・・・。」


「降伏?笑わせるな!我が国の威光にかけて、降伏はありえん!幹部たちが本隊に向かった!早晩、貴様らは潰される!そちらが降伏すべきだな!」


捲し立てる様に言い切った私を目の前の男は、笑い始める。

周りを取り囲んでいる兵達も困惑をしているようで、互いに視線をかわし合っていた。

その様子に私も怒鳴った。


「なにが可笑しい!」


「いえ、申し訳ない。 良いでしょう。 新しい情報をお教えします。 貴方方が待っている救援は来ませんよ?なぜなら幹部の方々?でしょうか・・・。 我らに撃破・討ち取られています。 数名は

生き残ったようですが、あなた方の戦死報告をしていましたよ。 姫将というのは、あなたですか?」


「そんな!・・・では、我らは・・・・。」


「完全に捨て置かれたようですな。 本隊とやらはすでに撤退を開始して、今は貴国の国境まで退きました。 ここからではまず追い付けません。 ここにいるのであれば、玉砕覚悟になりますよ?」


「ならば、貴殿を討ち取るまで!」


「動かない方が良いですよ?すでに狙ってますから。」


「なっ!」


突然に焚かれる無数のかがり火と松明。

彼らを幾重にも包囲する具足を纏った兵士の群れ。

無数の弓や弩が彼らを狙っていた。 その様子に兵士達は次々と、武器を下へ落とし、諸手を上げた。

彼らも不利であることは、理解した。


「・・・。 私はどうなっても良い。 彼らには・・・手を出さないでくれ・・・。」


「お嬢!それは・・・!」


「何も言うな。 それしか、彼らを守れん。」


「何を勘違いしておられるか分かりませんが、危害を加える事はありませんよ?今回の手柄は私の方が高いので。」


「・・・。 貴殿があの軍勢の長か?」


「まあ、そうですね。 ひとまずは我らの指示に従ってください。」


「ああ、無論だ。」


俺は彼女らを連れて、領主様の待つ陣幕へ彼らを誘導した。

お嬢と言われた姫将と彼女の守役と思われる壮年の男性騎士を領主様の元へ。

兵士の人達は、衛兵隊長さんに引き継ぎ、見張りと手当てを依頼する。 隊長さんも快く引き受けてくれて、彼らを手際よく収容してくれた。

あとは先の二人と共に領主様の元へ向かうだけだ。 


ついでに捕虜になった悪ガキ連中とその頭を伴って。 

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