旅の空 襲撃 亜人の友
少し物語が進みました。
これから少しずつで進みます。
俺は王都を出た。
アラン達と共に来た道とは反対の辺境へと向かう馬車に乗っていた。
信じていた仲間に裏切られ、追い出された。 スミスさんが握らせてくれた金貨10枚も旅の必需品を買えば、半分になった。
お金が減った事でへこむよりも心が辛い。
そんな事よりも一人になった事が悲しかった。 一人も自分の肩を持ってくれないばかりか、寧ろ諦める事を進められたことが悲しかった。
「俺はいままで何をしていたんだ・・・?」
「思い詰めているようだけど、お兄さん、どこから来たんだい?」
「えっ?・・・王都から。 居づらくなってね・・・。」
「そりゃあ、大変だったね。 やらかしたんかい?」
「そうじゃないよ・・・。 仲間とね、仲違いをね・・・。 だから居づらくなったのさ。」
「そうかい。 それは難儀な事で・・・。 俺は商人だが、旅の空が多いからそんな事もあまりないが、この空をみれば、晴れてくるさ!」
馬車の中で声を掛けて来た男は、獣耳を持つ獣人の行商人だった。
俺が塞ぎ込んでいたのを心配で声を掛けてくれた。
そこで辺境の地で一人でも生活できる村がないか聞いてみた。 答えは辺境の村は殆どが魔物に蹂躙されてしまっていて、殆どない事を教えられた。
「でも、なんで辺境なんだ?お前さんならどこでも出来ただろう?」
「静かに生活したかったんだよ・・・。 魔物位ならある程度は倒せるからさ。」
「それなら余計に街が良いんじゃないか?」
「少し人付き合いをしたくないんだよ・・・。」
「そうなんかい?それn「魔物だぁ!!」なんだって!」
「少し運動はするか・・・。」
「何言ってんだ!魔物だぞ!」
「俺も冒険者だからな・・・ほら。」
俺の見せたギルドカードでAランク冒険者だと分かると、彼は止めなかった。
馬車から降りると、護衛役と思われる護衛数名が奮戦していた。
「さて、俺もやるか・・・。」
「おい!あんた!ここは危ないぞ!早く馬車へ!」
「俺も冒険者だ。 助太刀はするよ。」
俺は腰のバックから数枚の戦輪を出した。
それを魔力操作のスキルで、戦輪を操作する。 戦輪は俺を中心に高速回転を始め、徐々に模様が見えない程になった。
「さあ、やるか・・・。」
「何を言って・・・?」
護衛の冒険者が言いかけているうちに俺は戦輪を操り、周りの魔物を屠った。
戦輪は自身の意志があるかのように魔物が倒されていく。 シンもサーベルを振って、やってきた魔物集団を倒した。
「すげえ・・・。」
「あの人は一体・・・。」
「乗客にいたか?あんな実力者がいたなんて・・・。」
護衛の冒険者たちも手を止め、シンの戦いぶりをみている。 サーベルで戦いながら、自身の周りを飛び回る戦輪を扱い、敵を屠っていく姿は鬼神の如くの働きだった。
「ふう・・・。 少し鬱憤も晴らせたかな・・・。」
「あんたは・・・いや、貴方様は一体・・・。」
「よお、助かったかい?」
「ああ、助かったよ・・・。」
「ありがとう。」
シンはサーベルを収め、自身の周りを飛ぶ戦輪を回収した。
シンが振り返ると、馬車を守っていた者も他の乗客もシンを見ていた。
「皆さんは無事ですか?」
「はい。 ありがとうございます。 お陰様で助かりました。」
それぞれが口々にお礼の言葉を言ってもらえた。
それはシンにとっても仲間と別れて初めての礼を貰えたのだ。
シンも初めて再び役に立ったことを噛み締める事が出来た。
その後の馬車の旅は順調に進んだ。
シンも馬車の御者台の上に座り、警戒をした。 その他には何事無く、野営地に辿り着いた。
野営地では同じ馬車の人々に囲まれたシン。 シンも彼らの好意を受け入れた。 特に大きく反応したのは最初に声を掛けた行商人の獣人・チーノだった。
その喜びようは大きかった。
「いやあ!すげえな!あんた!まさか、あの群れをあっという間に蹴散らすとはな!」
「そんなことはないさ。 でも、護衛の人には悪い事をしたよ。」
「そんな事はないさ。 こちらとしても助かったよ。」
「ん?」
そこには戦闘時に声を掛けてきた男性がいた。
彼はワインを持って来ていた。 シンのタンブラーにそのワインを注ぐと、自身のカップにも入れ、チーノのカップにも入れたのちに再び、声を掛けた。
「君が参戦してくれたおかげで誰も亡くなることなく、生還出来た。 それは何より有難い事だ。 また同じ仲間で依頼をこなせる事は嬉しい。 それは感謝してもし足りないよ。 ありがとう。」
「感謝は受け取るよ。 こちらも少しむしゃくしゃしていたからな。 仕事を奪ったみたいで申し訳ないなと思っていたんだよ。」
「そこは気にしないで。 こちらは守ることが契約だから。 手伝ってくれた事は有難いし、それでこちらの給金は減らないから心配しないで良いよ。」
「そうか。 よかったよ。」
「君はこれからどうするんだい?」
「ひとまずは辺境の街で活動するよ。 それでどこか落ち着ける場所を見つけたらそこで・・・。 と、思っているよ。」
「それならこの馬車が向かう場所が『マジス』という町だ。 そこで活動すると良い。 俺らもそこで活動しているから。」
「ありがとうよ。 そうするよ。」
三人は互いのグラスをぶつけ合い、互いの友好を誓い合った。
放逐された男が、改めて出来た友情だった。
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