新天地①
かなり間が空きましてスイマセン。
変則と早朝勤務で更新どころか、パソコンに触れませんでした・・・。
獣人やドワーフらの一団を受け入れ、シンの隠里(?)も大いににぎわった。
最初に遠慮気味の彼らも一月・二月と経つと、それぞれが機能し始めていき、ここの探索を進んでいく。
その最中に幾つかの洞窟もある事が、分かった。
洞窟生活になれたドワーフを中心に捜索をすると、金属の鉱脈があることが分かった。 詳しくは試掘をしないと分からないらしいが、ドワーフの一団はここを鍛冶場にするようだ。
ダークエルフは、この囲まれた岩場の上を捜索しているらしく、その最中に彼らが監視所に使いたいといくつかの大木の上を指定してきた。 断る理由もないので、そのまま許可をすると、近隣の森から木を切り出して、ツリーハウスを建築した。 それを監視所にするらしい。 さっそく完成と同時に彼らは、獣人の若者たちと監視任務に就いた。 当然、獣人の人達もサボっているわけでは無い。
ダークエルフたちのツリーハウスと並んで彼らも持ち込んだテントやゲルの様な物を建てて、そこで生活を始め、日の当たる立地の場所に用意した農具を使って種や苗を植えた。
「俺しかいない時ではありえない速度で進んでいきます。 凄い・・・。」
「なに、シン殿が移住をさせて頂けなければ、今もあの苦しみの中ですよ。 ありがとうございます。」
「いやいや、そんな事は・・・。 ですが、協力はしていきますので、言ってください。 出来るだけの事はしますから。」
「これ以上はお世話になるのは恐縮ですが、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。 これからもよろしくお願いします。」
互いに頭を下げ合いながら笑いあうシンと獣人の長老。
可笑しくなり、笑いあってしまう。
良く見れば、そこかしこに笑顔があった。 いままで抑圧された生活をしていた彼らからすれば、ありえない程の大らかな時間が流れている。 何もない場所を最初から開墾せねばならないが、全員の顔には笑みがはっきりと浮かんでいる。
「主様。 ダークエルフの長老より先日の調達品についての礼を伝えて欲しいと言われてきました。」
「そうか。 あれだけのロープをどうするんだろう?」
「どうやら入り口近くに設けた監視所の所に荷物の荷揚げ用のものを作るために長いロープが必要だそうです。 滑車はドワーフの方に作って貰ったそうで・・・。」
「なるほど・・・。 確かに持てるだけでは賄えないからね・・・。 むしろ、ありがとうだね。 本当にさ。」
「彼らからしたら大型の魔獣が入ってこないここは安全ですが、多くの荷物を持ち込むには不便ですし、そこを改善していくのも彼らにとっても必要な事ですから・・・。」
「感謝はしないとだから。」
「そうですね・・・。 それでこれからはどうなさいますか?」
「うーん。 ひとまず皆から売り物として渡された物を売りに行くか?調達してくるモノもあるし。」
「お供します。」
首肯定する俺に付いて来てくれるヤニス。
森に出るための出口に向かう俺らに手を振って、見送ってくれる獣人達にこちらも手を振り返してから外へ出る。
「さて、これからも支えていこうな!」
「はい!」
シン達はその後も自身で依頼を受けたり、獣人達の獲物の牙や爪を売ったりしたのちに石鹸を生産を始める事が出来た。 それをガルーダ商会に卸す事で新たな金策が出来た。 その石鹸はガルーダ商会を通して街の中へ浸透して行くと、その石鹸は領主の知る所となる。
<ある領主館>
私は思い悩んでいる・・・。
中央から離れている街で特産物もない街にガルーダ商会がいるのが、唯一の街の自慢である。 ガルーダ商会は、キャラバン商隊で売り歩く商法で売り歩いていた。 商会長であるガルーダは、街に様々な物を齎してくれた。 他にも奴隷商も居を構えているので、少し複雑ではあるが発展に寄与していると、割り切って考えることにした。
「私の街が発展する事が出来ないのであろうか・・・。」
「領主様・・・。 ガルーダ様を始めとして、発展に寄与してくれております。 今は・・・今は耐え忍ぶ時期です。 ご辛抱なさいませ。」
「うむ・・・。 しかし、このままでは・・・。」
「ご心中、お察しします・・・。」
「今は・・・頑張るしかないか・・・。」
領主は外の街の風景を眺めていたが、執事の老紳士にいわれるがまま、再び執務に戻った。
そうした日々が過ぎた頃に突然、ガルーダ商会の商会長のガルーダがやってきた。
「領主様、この度は面会の許可を頂き、ありがとうございます。」
「堅苦しい挨拶は良い。 今日はどうしたんだ?」
「はい。 この度はある冒険者殿が御作りになられた『石鹸』というものを献上に参りました。」
「なに!都でも流行っているあれか?!しかし、勝手に作れば処罰されるぞ?大丈夫か?」
「ご心配に及びません。 最初に生産を始められた方がこちらに来て、作られていますので。」
「なんと!しかし、なぜ私のとこに?ガルーダよ、貴殿は・・・。」
「お察しが早くて助かります。 伯爵様の方で石鹸の製造を認めて頂きたいのです。 勿論、毎月決まった数の石鹸を献上いたします。 税金も私を通してお支払いします。 いかがでしょう?」
「こちらとしても資金繰りは大変だからそれは有難い。 都でも石鹸で洗う事で病気にかかりにくいとの報告を聞いている。 民の為にもなるなら認めるし、保護もしよう。 しかし、良いのか?」
「都でも同様に私共の様な商人を窓口に卸していたとの事。 販売はこちらに完全に委託されておりますので、お任せください。」
「分かった。 よしなにな。」
シンの知らない所で商人ガルーダの采配で、自身の保護が決まった。
当然彼はシンの最初の取引相手ある商人にも手紙を送った。 しかし、これが招かざる者達を呼んでしまうが、それは後ほど。
俺はヤニスを連れ、森の中を探索した。
薬草や獲物を狩って、ギルドに卸す。 そのお金でガルーダさんの店で隠れ里に必要な道具を買い、皆に渡していく。 皆は石鹸や食べられない獲物の換金部位や獲物を渡してくれる。
そのサイクルでこなしていると、いつも担当しているアンナが声を掛けてきた。
「シン様。 ヤニス様。 申し訳ありませんが、ついて来て頂けますか?」
「どうかしました?」
「ギルドマスターよりお話がありまして・・・。 よろしいですか?」
「ギルマスが?俺に?」
「私もですか?」
「ヤニス様はシン様の相方なので、ご一緒にとの事です。 よろしいでしょうか?」
「・・・。 分かりました。 よろしくお願いします。」
「畏まりました。 こちらへ。」
アンナの案内でギルマスがいるという上の階へ。
アンナがある部屋の前で止まり、扉をノックする。
「アンナです。 シン様とヤニス様をお連れしました。」
「入ってください。」
「「失礼します。」」
「ようこそ。 シン殿、ヤニス殿。 当ギルドギルドマスターのマリアです。 よろしく。」
「ご丁寧にありがとうございます。 私達が呼ばれた理由は何でしょうか?」
「まずはこれまでの貢献に対しての昇級と領主様からの渡して欲しい物があるので、その引き渡しです。 あとは私との雑談に付き合ってください。」
「分かりました。 とはいえ、領主様とは関りがないのですが・・・?」
「まずはそこからお話ししましょう。 まずは・・・」
そこでガルーダさんに持ち込んだ石鹸等の話が出た。
ガルーダさんが、それらを領主様に献上して、今後の保護や隠れ里の自治と承認を得るために話を付けてくれたらしく、その書類がギルマスを通して引き渡される事になっていた。 その為に必ず来るギルドに届けられたという事。 その他にも納品する薬草や討伐した魔物の換金部位も状態が良いために高額査定が続いている事に対してのお礼を言われた。
「・・・。 まさかそこまで話が進んでいたとは・・・。」
「ガルーダ氏もやり手の商人です。 貴方のやる事に商機を見たのだと思いますよ?領主様も民を第一に考えてくれる方。 ガルーダ氏もそれで領主様に渡りを付けたんだと思います。 ちなみにこちらがその書類です。」
「あっ、ありがとうございます。」
封蝋で閉じられた2つの書類を受け取り、開封する。
『自治承認書』と『製造品の承認許可書』だった。 共に生産し、販売するためにどうしても貰わなければいけない貴族側からの書面だった。
普通は高額で販売され、月の払いも儲けをすべて払うような法外な物が多かったが、こちらの領主様はそこはない様で、ガルーダさんを通して既定の割合の税金を納める事が記載されていた。 それも規定内の金額で。
「これからも活躍を期待しております。」
「過ぎたる期待にならぬよう精進したいと思います。」
「そこは大丈夫だと思いますが・・・期待しております。」
「分かりました。」
「私からの話は以上です。 今後も当ギルドに貢献をお願いしますね?」
「はい。 分かりました。」
ギルマスの執務室を辞して、ギルドの受付へと降りていく。 階段を降り切った場所にアンナがおり、こちらを見ると、声を掛けてきた。
「ギルドマスターとの話し合いは終わりました?」
「ええ、先ほど。 まさかギルマスから頂けるとは思いませんでしたよ。」
「そうでしょうね。 ですが、ここには商業ギルドの支部ではなく、出張所程度しかないですので、仕方ないですね。 まあ、支部に昇格する話もあるので今後は少し変わると思いますが。」
「そうなんですね?まあ、これからも同様な状態になりそうですがね・・・。」
「それでもですよ。 期待しております。 ギルドカードの更新もしますので、提出をお願いします。」
「分かりました。 ヤニスも?」
「はい。 お願いします。」
「はい。 お願いいたします。」
「はい。 受け取りました。」
ギルドカードを渡した俺らは里の皆から預かった様々な採取品や魔物の換金部位を買取に出した。 自分らの討伐した魔物も提出して査定にかけていった。 里の採取品や魔物の換金部位、石鹸をそれぞれに提出してからガルーダさんの店で必要物資を買い漁った。 それをアイテムボックスに詰め込んで里へと帰るのだが、お土産に屋台の食べ物や甘いものも買い漁る。 屋台の店主もそれを狙って、ギルドに入る前に呼び込みをして、俺に買って貰おうとする。 俺も持ち込んだ鍋や籠に購入した購入品を詰め込んでいくから郷に帰る頃には、ほぼ現金が残らない。 まだ里には必要物資が多く必要でそれも消耗品や数が必要な物だから大いに使った。
街の人も大枚を叩いたり、大量に注文していく俺らを諸手で喜んでくれた。
最初の頃に食料が足りず、ある商店に入った。
そこの店は立地が悪かったために客の入りが良くなかった。 しかし、店主の拘りで物の質が良かった。俺はその商店内の商品をすべて買い占めた。 金額は金貨3枚。 しかし、売られていた商品はどれも良い物だから迷わず買った。 当然、店主は驚きながらも代金を受け取った。 それを数回繰り返すと、店主は表通りとはいかなかったが、その次位の通りに店を移すことが出来たという。
街の経済を廻し捲っている俺自身は、まったく自覚なしで購入していった。
それでも一人で数百人近い人を支える為にはいまだに足りないが、生活環境は整いつつあった。 彼ら自身も生活を良くしようと、それぞれで手段を講じている。
里の入り口には荷物用の滑車が取り付けられて、運び込みが容易になった。 しかも里の人で編成された自警団で害獣が入り込まないように監視をしているから安全に生活が出来るようになった。 狩りもしているから自分らでも肉を手に入れられるようになった。
今では、道具やロープ等の消耗品が主力仕入れ品となっている。 それでも多くの小規模店主たちの商品も買っているために彼らにとってもシンは、お得意様になっている。
「今日も良い物が仕入れられた。 さて、帰ろう。」
「はい。 主様。 子供達にもお菓子を配りましょう!」
「そうだね。 子供達も頑張っているからご褒美は必要だしね。」
「はい!」
俺らは街を出て、森へ。
森からは出来るだけ追跡されないように移動していく。 一度、追跡者が来たが、森の魔物を利用してして躱した。 今回はいないようだが、念を入れて戻る事に。
これからも応援をお願いします!