民の逃亡・・・ 労働力
遅れてしまいました。 最近は早朝や延長勤務をすることが多く、更新が出来ないままで寝ないといけない日があり、更新が出来ませんでした。
スイマセン。
<とある貴族家>
屋敷内は悪趣味とは言わないが、豪華な調度品が置かれている部屋で豪華な食事をしている人、いや一家がいた。 彼らのテーブルには村ではまず食べる事の出来なかった食材が多く並んでおり、彼らはそれを何のためらいもなく、食べていた。
そこへ扉を開ける音にその屋敷の主らしき肥満体の男が目を向けた。
「どうした?我らは食事中だぞ?」
「申し訳ございません。 徴税に関して報告したい議がありまして・・・。」
「どうした?また、税金が回収しきれなかったのか?それならいつものように適当な女か、男を奴隷落ちさせてでも回収して来いと、言っていただろう?」
「いえ、そうではなく・・・。 実は亜人共の村が3つ、住む者がいなくなりました。」
「馬鹿者!それを早く言わぬか!」
「ひっ!申し訳ございません!」
「ええい!兵を用意しろ!馬を引け!・・・いや、馬車だ!急げ!」
「「「はっ!」」」
領主らしき男は食事を中断して亜人の村へ行く準備をした。 彼なりには急いでいるらしいが、屋敷内での動きは歩いているようにしか見えない。 明らかな太り過ぎと運動不足で馬にも乗れないらしく、馬車での移動となった。 当然、斥候として私兵を先に放った後で自身も向かった。
2,3時間で就く所を5時間かけてたどり着いたのは、獣人の村だった。
「村の中には人っ子一人いません!」
「くそっ!似非人種のくせに人のいう事を聞かんとは・・・探せ!そんな遠くにいないはずだ!」
「「「はっ!」」」
領主に命じられた兵士達は、すぐに馬に飛び乗り、駆けて行く。
馬の機動力を使った捜索は短時間でも広範囲を捜索出来た。 しかし、すでにシン達の移民団は3日前にここを立ち去っているために例え馬を使っても半日程度では、見つかるはずもなかった。
「おのれぇ!見つけたら強制労働の刑にしてやる!」
領主の言葉は空しく辺りに木霊した。 だが、それだけだった。
シン達移民団は、すでに数十キロ先を進んでいたのだから。
<移民団サイド>
シンを先頭に移民の群れは進んでいる。
年寄りを若い者が担ぎ、赤ん坊はそれぞれの母親が。
手すきの者は、狩りで使っていた槍や弓、剣を持って群れを害獣から攻撃を受けないように見張って、安全にそして、確実に進んでいた。 かなりの距離を進んできたが、皆の顔は笑顔だった。
新天地に対する不安はあるだろうが、生活を大きく圧迫していた税がなくなる事や他にも各自で思う事があるだろうが、それも踏まえた中で良い事が多かったらしく、笑顔で進んでいく。
数日の道のりも最終となり、新天地の入り口まで来た。
「よし・・・。 着いたぁ!」
「ここが目的地ですか?岩場しか見えませんが・・・?」
「ここから少し狭い所を通ります。 そこを抜けると、本当の目的地です。 ただ、一人ずつしか入れませんので、ゆっくり進んでください。 滑りやすい場所や足場が小さい場所もあります。 子供や赤ん坊を抱えている人は前後の人が支えながら進んでください。 高齢の方は誰かが傍で支えると安全です。」
「分かりました。 まずは若い者を出して、危険な場所に先回りで配してから進ませます。 どうでしょうか?」
「狭いとはいえ、多分それくらいは出来たはずです。 身体能力の高い獣人の方ならどうにかなると思います。」
長老はロビさんを筆頭に20代くらい男女を選別して、先に入る事を指示。 ロビさんを筆頭に次々と狭い入り口に入っていく。 20分ほどしてからロビさんが出てきた。
「長老!危険と思われる場所に若い連中を配しました。 気を付けてお入りください。 明かりは必ず持って下さい。 明かりがほぼないので。」
「分かった。 よし!皆の衆、行こう!」
「「「「はい!」」」」
狭い入り口から少しずつ進むと、ロビさんの指示で待機している人が危険な場所におり、そこを手助けや声掛けをして進む。 軽く1時間はかかったが、無事に全員が辿り着いた。
先頭でたどり着いた人は、開けた土地に驚きながらも希望の目で見ていた。 他の種族であるドワーフやダークエルフの面々も近くの岩や木を触ったりしている。 他の種族の面々も思い思いの行動をしている中で、俺に向かって走ってくる者がいる。 ヤニスだ。
「主様!お帰りなさい!」
「ああ、ヤニス。 ありがとうな。 大変な事はなかった?」
「勿論です。 普段はリリさんに料理や近隣の探索をしたり、ロロちゃんと散歩したりして過ごしておりました! 探索の中で一つの洞窟に金属系の鉱石と思われる石を発見しました。 確認をお願いします。 それと、少し離れますが耕作地に良さそうな場所も見つけました。」
「おお!それは大収穫だ!鉱石の事はドワーフの人に聞くかな?耕作地は獣人の長老に聞けば良いかな?まあ、相談だね。」
「そうですね。」
「ひとまずは何事無くて良かったよ。」
「はい!何も問題がないようにする事が目標ですから!」
小さくガッツポーズをする彼女に微笑ましい顔を向け、彼女の頭を撫でてしまった。
当然だが、少し不貞腐れているように頬を膨らました。
「・・・・。 主様?私は子供ではないのですが・・・。」
「いや!すまない!そんなつもりではなかったんだが、つい!」
「いえ・・・辞めなくても良いです・・・。 どうぞ・・・。」
「あっ、そう?じゃあ・・・。」
「はい・・・。」
少し照れている様ではあるが、怒っていない様なので再び撫でさせてもらう。
微笑ましい光景に周りの人も温かい目で見ている。 他の人も一応に満足そうな顔をしていた。
しかし、生活をするためには雨風を凌げる場所を作る必要があったが、彼ら自身がその準備をしてあったらしく、最初に建てた小屋の周りに彼らの天幕が立ち並んだ。 種族別に色々あるらしく、それぞれのテントや天幕が立った。
「様々な物があるんですね・・・。 ですが、それも改善して行かないと・・・。」
「シン殿。 我らにここいらの探索をやらせてもらって良いかの?」
「あっ!はい!お願いします。 私も出来るだけ参加しますが、皆さんの為の物資を用意するために街へ行かないといけないので・・・。 お願いできますか?」
「勿論じゃ!我らの住み分けもあるしの!これだけ広い場所じゃし、なにかあるじゃろう。 明日からでも始めるぞい!」
「よろしくお願いします。 ですが、無茶や無理はしないで下さいね?」
「おう!良い報告を待っておれ!」
シンに話し掛けたドワーフの男性が、離れていく。
話を聞いていた様々な種族のグループが、あちらこちらで小グループを作って、会議を始めた。
共通してどこを攻めるかというものらしい。 ひとまずは探索に必要な物を用意する必要はありそうだ。
俺は皆用の食料としての魔物の肉と野菜、調味料や食事に必要な道具やさしあたって持っている探索道具をあるだけ置いていった。
街に行く事を告げて、アニスと共に拠点を出た。
「主様。 移住はうまく行きそうですね?」
「ああ、そう願いたいよ・・・。 拠点として構えたあそこも全容は見えないし、捜索をする必要があるのは分かっていたんだけれども彼らの加入は有難い。 新しい発見がある事を祈ろう。」
「それは大丈夫ですよ。」
「・・・それはなぜ?」
「主様は半分飢餓民も同然の彼らを受け入れました。 その優しさが神が見放す訳がありません。」
「・・・そうなると良いね・・・。」
「はい!大丈夫です!きっと!」
拠点から街に向かう鬱蒼とした森をどことなく笑顔で進んでいくふたり。
それは新たな一歩を踏み出した彼らの始まりだった。
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