籠もる者が知らぬ食事には・・・
新しい拠点(仮)に住民を誘致します。
少し村の様相を呈してきます。 頑張ります。
「それでは会議の決定を行う!」
全ての村人がかたずを見守る中で、発表される村長会議の結果。
決定は絶対だから不服でも逆らえない所がある。 その為、全員が見守る中で決定権を持つ村長が重苦しい空気を破った。
「村の移転の話じゃが・・・不確定な事が多すぎる為にm・・「何を言っとるんじゃ!馬鹿者が!」・・婆さんや、これは決定・・「ここまでしてくれる方を差し置いて、何が不確定じゃ!」・・だから、会議の決定じゃぞ!婆さん!」
「阿保抜かせ!ええ加減にせんか!なら今すぐに食料をお前さんらで何とかして来い!それも出来んくせに偉そうにするな!馬鹿もんが!」
村長の言に割って入ったのは村長の奥さんだった。
村長の決定に割り込んだどころか、決定を覆すことをいってきた。 それどころか、反対するなら今すぐに食料を調達して来いと、長達にいっていた。
村長を始めとした長達も村長の奥さんに目線を合わさず、逃げる様に視線をずらしていた。
その後で村民の前でありながら、奥さんは長達をなじっていた。
「これは・・・一体?」
「ああ、やっぱりこうなったなぁ・・・。」
「どういうことですか?村長は偉いんでは・・・?」
「それはね・・・。」
近くにいた中年の女性がため息交じりに話した。
なんでも今の村長は今は亡き義父である先代から引き継いだ村長で、奥さんが先代の娘で今代は入り婿らしくて、立場が家では奥様が上らしい。
今代も頑張っていたが、食料調達や移転計画も会議ばかりで何も進展がなかったらしく、前回の移転地捜索が行われたのも数か月前。 失敗してすぐに次を計画したら良かったらしいが、それをせずにダラダラと会議という名の食事会をした。
食料調達も元気な者が多いうちに保存食づくりに精を出せばよかったが、それもしなかった。 村長は夫であるから細々とした調達であるが、我慢をした。 しかし、幼子や妊婦の流産、餓死した者が出た所でやっとロビさん一家に捜索の命を出させた。 無事にロビが食料と移転地の確保をした事で、奥さんはやっと落ち着けると思った矢先に亭主が妄言を吐いて切れた。 が、今らしい。
「しかし、あれはよろしいんですか?」
「ああ、あれは・・・。 うん。 少しほっとこうかね?多分、あんたにはその方が良いよ。」
「そんなんですか・・・?」
自分の前には、奥様に村長を始めとして取り纏め役の人達が、杖外交をされていた。
特に村長が強い杖外交をされている為か、どこが耳だか分からない程になっている。 その影響は大いにあるらしく、顔をボコボコになった村長たちが俺に頭を下げてきた。
「じんどの。 よごじぐおねがいじだじまず・・・。(シン殿。 よろしくお願いいたします。)」
「あっ、はい。 分かりました。 出来るだけの支援を致します。 当然ですが、私の方の事も手伝って頂ければ、有難いです。」
「まずはばしょ・・・「はい。 勿論です。」・・婆さん、わしは・・・「貴方は黙って。」・・はい、分かりました・・・。」
長老さん達は、あちこち顔がヤバイことに。
しかもまとめ役の人達も後ろに奥さんと思われるご婦人が、余計な事をいうなと言わんばかりにそれぞれの夫の後ろにいた。
男性陣は、奥さんに言われるがままに頭を下げた。 村長だけは余計な事を言ったために追加でコブが出来たのだが、そこは気にしないことにした。
こうして、ロビさん達を含めた村の人達すべてが、移住を了承してくれた。
まずは提供した食料を食べようと、先ほどから煮込まれて味の沁み込んだ煮込み肉や串焼きが村人たちに振舞われた。 そんな中で奥様から追加の話があった。
「実は他にも移住を希望している部族がいるんです。 そちらの方々も移住は出来ませんか?」
「どうでしょうか・・・?ちなみにどれくらいいますか?種族もですが・・・。」
「はい。 コボルト族とドワーフ族、山エルフ族の3つです。 人数は全部で我らと同じです。 お願いできませんか?」
「うーん?どうでしょうか?まあ、多分大丈夫ですが、もしかしたら少し住み分けをしないといけないかもしてないです。 それで良ければ・・・。」
「ありがとうございます!我らも良き隣人だったので、頼られてもどうにもできないのが、歯がゆかったのです。 ありがとうございます!」
「とりあえず移住に賛同してくれる方々のみにして下さい。 無理は駄目ですよ?」
「はい。 分かりました。 明日にでも呼んできます。」
今晩はそのまま村に泊まって明日に備えることにした。
明日は移住の準備をしながら隣人たちを待つことになった。
早朝から村人たちは準備を始めた。 シンから許可が得たとの事で、3つの部族に向け、使者となる獣人が出発した。 帰りは昼頃になるらしい。
「ついて来ますかね?」
「そこは分かりませんが、彼らもかなり追い込まれているように見受けられたので、前向きに検討すると思いますよ?」
「そうだと良いですね・・・。 どこまで力になれるかわかりませんが。」
「それは出来るだけで良いですよ?あとは我らも努力しますから。」
「ありがとございます。」
午前は保存食を作る作業を手伝ったり、移動に必要な道具を製作したりして過ごした。
昼食を取っていると、村の入り口にずんぐりむっくりした人がこちらに向かって歩いてきた。
俺を見つかると、その人はずんずんと近づいてくる。
「お前さんがシンか?」
「そうですが。 貴方は?」
「わしはドワーフの長で、ドードルという。 今回は新天地への誘いを貰えて有難く参加させて頂く。 これからよろしくな。 準備はこっちもしているから今は挨拶だけでもとな・・・。 まあ、他の連中も来るじゃろうからな。 噂をすれば・・・。」
「ドワーフのドートルが一番手ですか・・・。 私も挨拶をしても良いですか? ダークエルフの長をしておりますナーフと申します。 よろしく。」
「コボルト族のオルトです!長老は御歳なので、代わりに来ました!これからよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。 改めて名乗る。 シンです。 どこまで支援が出来るかわかりませんが、出来るだけ支援させて頂きますので、よろしくお願いします。」
「「「よろしく」」」
ドワーフの方はやはりひげが立派な男性で、ダークエルフの男性は美男子だった。 コボルトの人はどことなく少年の様な印象だった。
彼らの話を聞くと、話が来た時点で全員が移住に賛成しているとの事。 獣人の誘いに乗り、住み分けも受け入れるとの事。 もちろん、シンの手伝いもするともそれぞれの長の言として、誓ってくれた。
しかし、シンが気になっている事を聞いてみることにした。 それは彼女の事だ。
「ときにダークエルフの。 実は俺は奴隷の女性を旅の相棒にしている。 それもダークエルフだ。 そこはどうする?」
「虐げている訳ではないですよね?」
「それはないな。 今もこの村のロビさんの奥さんと娘さんの護衛役として、皆さんが移り住む場所で留守居をして貰っている。」
「ならば、問題はありません。 寧ろ同族がいるのは有難いです。 どうしても不安があります。 それがその方のお陰で軽くなりそうです。」
「そうか・・・。 なら良かった。 誤解されると困るからな。」
3部族すべてが、シンの拠点予定地へ向かう事に。
彼らも混ざって食事をしたのちに彼らも獣人達から食料を分けて貰い、彼らの村へと帰っていった。
「全員、はいるかな?」
「まあ、何とかなりますよ。 きっと。」
「だと良いのですが・・・。」
3部族と獣人族の移動は2日後になった。
それまで準備に費やすことに。 その間もシンも協力して移動の準備をした。
そんな日もすぐに過ぎ去り、出発の時を迎えた。 獣人の村には3部族の人々が群れを成していた。
目的地は変わらないが、300人近い人が移動する。 大変な事は変わらない。
だが、彼らの顔は一応に明るかった。
新天地に対しての不安もあるが、それ以上にひとまず重税と重労役から解放される事を喜んだ。 中には死んでしまった身内を連れ出せないで、悲しむ者も・・・。 すでに土に還った者を掘り返す訳にも行かない為、遺品と次来るまでの手向けとしての花やお供え物をしてから旅立った。
「貴方を育てて上げられなくて、御免なさい・・・。 もしまだ私の子になる気があったらまた私のお腹においで・・・。」
一人の乳飲み子を栄養失調から亡くしてしまった若い母親が、幼なすぎた我が子の墓前に小さく刻んだ肉をお供えして墓を後にした。
彼らの新しい生活はこの村を離れて、新しい場所ではじまるのだから・・・。
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