拠点についたら・・・
少し長く書きました。
自分では比較的長く書いていたと思います。 これからも今作の作成も頑張ります。
パーティーを抜けてから初めて人肌を感じられた夜だった。
ゆっくりと起きた頃には、日が頭の上にあったが、仕方がない。
それくらいに良い夜だった。
「んんんっ・・・おはようございます・・・主様・・・!!!」
「ああ、おはよう。 慌てるのは分かるが、まあ・・・うん。 昨日は大変、世話になった。 ありがとうな。」
「いっ、いえ!はしたない事を・・・。 恥ずかしい・・・。」
「気にするな。 長い付き合いになる。 そこはいい。」
「あっ、ありがとうございます。 ひとまず体を拭いて着替えます。」
「ああ、俺もそうしよう。」
彼女は掛けていた毛布を巻いて着替えるためにシャワールームに飛び込んでいった。
平常心になり、昨夜の事で恥ずかしくなったのは言うまでもない。
俺も出来れば、そこはいじられたくはないのでそのまま彼女の後にシャワーを浴び、着替えた。
着替え終わると、彼女も元に戻って聞いてきた。
「今日はどうされますか?依頼を受けるには遅いでしょうし・・・。」
「うん。 今回は拠点に連れていく。 回復したら君を連れていこうとしてた場所だ。 少し森に入るけれど、魔よけの結界と悪意疎外の結界があるから」
「分かりました。 では、どちらに?」
「森だよ。 あと、少し買うものがあるからそれから行くね。」
「はい。 お供します。」
彼女と共に市場内で必要な物を購入し、街を出て森に向かう。
森では採集に来ている街の人や討伐に精を出す冒険者といるが、彼らを横目に見ながら目的地へと目指していく。 森の中を右に左に進んでいく事で感づかれる事を防いでいるつもりだが、彼女には意味がないらしくて不思議そうな顔をしていた。
「主様?なぜ、その様に進むんですか?」
「他の冒険者が追跡されないようにしているつもりなんだけど・・・。」
「そうですか・・・。 あまり意味がないかと?」
「・・・。 もう少しで着きます・・・。」
「畏まりました。」
寄り道する事が馬鹿らしくなり、そのまま真っ直ぐに向かうことにした。
目印の様な岩場を見つけ、その中を進む。
そして、入り口でもある狭い岩場の隙間を抜けていく。 そうしていると、開けた場所に出る。
2日ぶりの拠点予定地。
そして、拠点予定地の唯一の建物である小屋を開けた。
「あの、大丈夫ですか?どちら様ですか?」
目の前には、小屋の床に寝ている獣人の一家。
格好からしてどこかの村から来たようだ。
ひとまず起こすことにした。
<ある一家>
疲れて眠ってしまっている自分をゆすり起こされている気がして、目を開けた。
するとそこには、普人の男がいた。
「うおおおっ!どうやってここに?!」
「驚くのは良いが、最初に目を付けたのは俺なんだけど?」
「あんたがこの小屋を?!」
「そうだよ・・・。」
「「ん、んっ・・・はぁ~。」」
「そちらも起きたようですね。 ひとまず話し合いを良いですか?」
「はっ、はい。」
どうやらここの所有者の人らしく、話し合いをすることになった。
交渉でここに住めないかを聞いてみようと思った。 皆の為に。
<シン>
「成程ね。 話は分かりました。」
「ありがとうございます。」
「許したわけでは無いですし、こちらも許可を得ているわけでは無いので、まだですよ。」
「あっ、はい・・・。」
話を統合すると、ここから距離の離れた村から移住先を探しているらしく、彼らは何日も彷徨いながらここに来たらしい。 確かに置いておいた食料も減っていたので、ここに辿り着いた時には最低でも食料はない状態だったようだ。 食料を食われた事はどっちでもいいが、流石に女子供を抱えた人を出すのは忍びなかった。 そこに彼女が提案をしてきた。
「主様、意見をしても良いでしょうか?」
「ん?何?提案してくれるのかい?」
「はい。 主様の拠点に彼らに住んでもらうのはどうでしょうか?」
「住む?ここに?」
「はい。 彼らは多分ではありますが、税が払えなくなった、又は払う事に限界が見えてしまっている村から来た方と思います。 飢饉や不作で払えず、廃村になる所もあると聞きますので・・・。」
「そうか・・・。 どうなの?」
俺らの会話を視線を逸らしながらも聞いている一家。
そんなに遠くない理由から新天地探しに来たことは、見て取れた。 そこを分かっていないのは子供だけの様だった。
俺の質問に一家の長である男性が重い口を開いた。
「・・・そちらのお嬢さんの言う通りです・・・。 ただ、うちの場合は領主様の気分で出来た『税』で支払えなくなったんでさ・・・。」
「成程ねぇ・・・。」
その税の名前も『贅沢税』という名前らしい。
その領主一家に日頃の感謝を兼ねて、贅沢をして貰う為の税だとの事。 しかし、それ以前にこの領主は多くの税を取っているので、ただの搾取目的であるとの事。 税の影響で村では、子供の栄養不足から死亡や妊婦の流産や乳が出ない為の赤子の死亡が普通にあるそうだ。 もはや意味が分からない。
そんな状態では確かに新天地を求めるのは仕方がない。
この拠点もまだ全然、探索が出来ていない。 どれくらいの物かすら分かっていない。
彼女の提案は、俺自身にも魅力がある。 そこで乗ってみることにした。
「おたくの村は全員で何人いるんだ?」
「えっ?120人ですが?それはどうゆうことで?」
「貴方がその彼らを説得してくれるのであれば、ここに住みますか?ご覧の通りまだ全容も分かっていない場所ですしね。」
「・・・。 確かに・・・。 ですが、どうするんで?俺は行けますが、流石に妻達は・・・。」
彼は自身の妻と子を見て、言葉が詰まった。
いくらここまでたどり着いたとしてもまた、同じことをするには苦労が大きい。 出来ればしたくないという事を言いたそうだった。
「それはしないで良いですよ。 貴方は来てもらいます。 彼女にはこの拠点に奥さんとお子さんと共に残ってもらう。 彼女も冒険者なので、二人を守る事は出来ます。 私と貴方で住んでいた村に戻り、彼らを説得してからここへ。 それでどうでしょう?」
「本当に良いんですか?俺らを保護しても何の得もないですよ?」
「まあ、これから考えるけどさ。 ひとまずここの探索と作って貰いたい物があるからその人手と他に手伝って貰いたい事があれば、それを手伝って貰う。 ひとまずはこれが条件かな?どう?」
「勿論でさ!お願いします!ここに住まわせてください!」
男性が頭を下げると、奥さんである人も慌てて頭を下げた。 子供は訳が分かっていないようだが、親に倣って頭を下げた。
話がまとまったと判断した俺はさっそく準備の話をした。
「ここに食料は女性と子供だけですから二月分を置いて行けば、平気でしょうからうちらは私の持つもので賄えます。 ですが、貴方の防具と槍くらいは必要ですよね?」
「あっ、はい。 今あるのは、鉈とナイフ位で・・・。 村に行けば、皮鎧がありますが今は・・・。」
「ひとまず胸当てくらいしかないので、それで。 槍は既製品の槍があるのでそちらを使ってください。 後は村に持っていく食料は少し少ないですが、持っていきます。 それで良いですか?」
「はい。 ありがとうございます。 それでいつ向かいますか?」
「明日の早朝に。 今日は我らもここに泊まります。」
「ではここをお返しします。 我らは外で寝ますから・・・。」
「子供を外は可哀そうです。 そのままで。 我らは自分のテントを使用しますから。」
「ですが・・・「良いですね?!」・・・はい。」
無理やり押し付ける様に小屋を渡し、自身はテントを出して二人で寝ることに。
テントを張り終えた頃、食事に誘われたのでご相伴にあずかることにした。 とはいっても俺の保管していた食料だったが。
食事後にテントに入ると、アニスが声を掛けてきた。
「主様、やはり優しいんですね?獣人を保護するなんて。」
「まあ、自己満足な所はあるよ?でも、僕には彼らを幸せには出来ないかもしれないけれど、飢える事から救えるだけの技術はある。 そこを提供するだけだよ?彼らだって、労働力は提供してもらうし。」
「それでも凄い事です。 尊敬します。」
「今は尊敬より人肌が欲しいけどね?」
「うふふ、はい。 甘えん坊な主様ですね?」
「暫くは会えないからね。 ぬくもり位は許してほしいな。」
「ええ、いくらでもどうぞ。 お休みになりますか?」
「そうしよう。」
アニスは大型の寝袋に共に入ってくれ、抱き着くような形で彼女と寝た。
これから始まるここまでの往復旅を考えながら。
翌朝、準備が整った二人は、家族と奴隷に見送られながら拠点を出て、一路彼らの住んでいた村に向かう。 そこで彼らの名前を知った。 父親はロビ。 奥さんはリリ、娘さんはロロという名前だ。
こうして、ロビさんと村への道を急いた。
しかし、村の人に渡す食料は拠点に置いてきたので、少ないのも事実だった。 そこで二人は通りで食べれる魔物が出たり、食べれる野草や植物を見つけたら、回収・討伐することにした。
狩りを始めると、ヤバい方向に行ってしまう。 気が付くと、殲滅戦をするかのように二人で討伐し捲っていた。
「シン殿!そっちに行きましたぞ!」
「おっしゃあ!食らえ!」
グォォォォォ!!!
「「魔物、ゲットォォォォ!!」」
こうして食べれる魔物や植物を回収し捲った。
二人で互いにトリップし、危険性の高い魔物でも食べれる魔物を中心に討伐した。
数時間の討伐・回収作業後に自身の築いた山を見て、二人でたたずむ。
その中でロビが口を開いた。
「シン殿・・・。 申し訳ございません・・・。」
「いや・・・ロビさん・・・。 気にしないで下さい・・・。 私も張り切ってしまったので・・・。」
「しかし、どうしましょうか・・・?」
「これは・・・そう!村への救援物資だ!これを持って行って配ろう!」
「ですが、持てませんよ?私・・・。」
「大丈夫!俺が持って行けるから!収納できるから!そうしよう!」
「はい!ありがとうございます!」
「よし!行こう!」
俺もトリップしていたとはいえ、大量の食用魔物を手に入れ、それを収納してロビさんの村へ向かう。
さらに数日間を道なき道を進むと、村らしき建物らしきものが見えてきた。
「シン殿!見えてきました!」
「おお!着いたかぁ!良かった良かった。」
「はい!・・・ん?あれは・・・おーい!おーい!」
ロビは村の入り口いる槍を持っている人に声を掛けていた。
聞こえたらしい男性は、隣にいたもう一人の人に声を掛け、村の中へ走らせ、自身はこちらに走ってきたのだった。 そして、ロビさんの横に立つ俺に視線を向けると、話しかけてきた。
「ロビ!その男は誰だ?!お前も家族はどうした?!まさか・・・そいつに?!」
「はっ?!おい!それは違う!この方は移住先を用意してくれた人だ!食料も持ってきた!」
「本当か?!嘘じゃないだろうな?!」
「明らかに疑われてますね・・・。 当然ですね・・・。」
「スイマセン。 シン殿。 気を悪くしないで下さい・・・。」
「ひとまず私は離れておりますので、話をして下さい。」
「はい。 分かりました。」
「おい!逃げんな!ロビ!退け!あいつを殺せねぇ!」
「恩人を殺すな!話をするから待ってろ!」
二人の中で少し怒号があるが、小一時間ほどで話し合いが出来たようだった。
その後でやってきた長老と思われる老人を中心にロビさんとの話し合いが起き、車座で話し合いが終わったらしく、ロビさんが呼びに来た。
「お待たせしました。 長老からお話があるので、こちらに来てもらえますか?」
「分かりました。」
その後で長老を始めとした村のまとめ役の人との話し合いがあり、ひとまずまとめ役と長老の方で話し合いが行われることになった。 その間の村の滞在も許可された。
「ロビさん、食料はいつ出して良いんですか?肉も解体しないと食べれませんし・・・。」
「ああっ、そうでした!ちょっと待っていてください!長老様の奥様に話をしてきます!」
ロビさんはすぐに走っていった。
その間はおれも村の中心で座って待つことに。
すると、俺に興味を持った子供が近づいてきた。
「お兄さん、だれ?」
「ん?ああ、ロビさん達に新しい住む場所を用意してきたんだよ。 あと、皆の御飯になる物も持ってきたんだけど・・・これならすぐに食べられるか?食べるかい?」
「パン?」
「そうだよ。 どう?」
「食べる!」
近づいてきた子供、一人一人にパンを渡した。
そして、思い思いに貰ったパンを齧りつく。 俺は詰まらせないように果実水を用意して、タンブラーを置いてやる。 そうしていると、後ろから声がかかった。
「あらあら、もう食料を分けて頂いたようで・・・ありがとうございます。」
「はい?えーと、どちら様で?」
「この村の長老の連れ合いの婆でございます。 この度は食料も分けて下さるという事で、参りました。 よろしくお願いします。」
「分かりました。 では、少し離れてください。 未解体の物を出しますので。」
「はい。 分かりました。」
老女と共に来た男女数名とそれぞれの親に引っ張られるように子供も離れていく。
十分な距離が離れたと判断した俺は、収納から魔物を出していく。
「「「「「おおおっっっっ!!!」」」」」
「凄い!ジャンアントボアがいるぞ!」
「いや、フォレストウルフもいる!それも沢山!解体していないのはなんでだ?」
「そんな事はどうでも良い!これ!全部俺らにくれるのか?!」
山積みにされた魔物の山に近隣の家から人が出てきて、指をさした。 当然だが、彼らの頭にはウサギや狼、犬の耳があり、ロビさん達と同じ獣人であることは証明された。 老婆もその山を見て、驚いたが齢の功からか、立ち直り話しかけてきた。
「シン殿と申されたか・・・?たくさんの食料をありがとうございます。 実は食料も尽きる手前でございまして・・・どうしようかと思っていた所なのです・・・。」
「それは何よりです。 解体をする手間はありますが、差し上げます。 どうぞ。」
「ありがとうございます。 お前たち、シン殿のご厚意です。 解体の出来る者はすぐに取り掛かりなさい。 女たちは食事の用意を。」
「「「「分かりました。」」」」
老女に言われた控えている人達の指示で、解体の出来る男性たちは自分の家から解体道具を持ちだし、手ごろな魔物を解体を始めた。 女性達も祭りで使うであろう大鍋を持ちだし、水を張り、薪を燃やして食事の準備を始めた。
「シン殿、この度の受け入れと食料の提供、本当にありがとうございます。 最近は一食を用意するのもままならない日が続いており、皆も苦しんでおりました。」
「とにかく間に合ってよかった。 そちらの決定はまだでしょうが、こちらは平気ですのでまずはこちらの食料を食べて、まずは腹を満たしてください。」
「そうさせて頂きます。 お世話になります。」
こうして解体されていく魔物たちは、次々と料理素材にされて、焼かれたり煮込まれたりしていく。
他に渡し忘れた野菜も出して、それは鍋へと投げ込まれていく。 調味料も提供したので、村の料理上手な女性と思われる人が、代表で味を決めていく。
横では串焼きを焼いていた犬耳青年が、我慢できなかったらしくて最初に焼きあがった串を食べようとしていた所を狼耳の女性に耳を引っ張られたらしく、全体に聞こえるくらいの声を上げた。
「痛いじゃないか!何するんだ!」
「痛いじゃないでしょ!最初に焼きあがったものは、お供え物にする!常識でしょうが!」
「我慢ができなかったんだよぉ・・・。 許してよぉ・・・。」
青年は彼女には弱いらしく、地べたに正座させられ、狼耳の女性は尻尾を逆立てて、怒っていた。
当然、最初の焼きあがったものはお供えになったが、その他の串焼きは焼き加減を見計らっていた子供達がすべて奪っていった。
その光景をみて、老婆に聞いてみた。
「彼らは夫婦ですか?」
「いえ、違います。 ですが、家も近くなので仲が良いのです。 娘の方が、よく面倒を見ておるんですが、何分男勝りなのであの子以外に男が寄り付きません。 お互いに幼馴染なので、親同士はくっつけたいのですが・・・。 まあ、今は今後に期待ですね。」
「それは・・・まあ、頑張ってくださいとしか、言えませんね・・・。」
「彼らも行くので、貴方様の所もにぎやかになりますよ?」
「あっ、はっはっはっ!それは楽しみですね。」
「本当に・・・。」
「なんだ?これは・・・?」
長老の会議が終わってきたであろう街のまとめ役たちが、集会場から出てきた。
そこにあったのは、多くの村人が様々な料理を作っている光景だった。 明らかに来客が提供したとしか思えない程の食料に面食らっていると、老婆が声を掛けた。
「会議はどうなりました?」
「ああ、それはだな・・・。」
周りで食事の用意をしていた一同が彼らの言葉に耳を向ける。 当然、俺も。
これから村の方向性を決める事が発表される・・・。
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