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戦輪の戦士  作者: KY
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冒険者 裏切り 放逐

久しぶりに新作を書きました。

更新は遅いですが、頑張ります。

俺は今、冒険者『シン』の時だ。

共に活動する剣士のアラン、魔法士のマリア、回復士のセラと盗賊のグラ爺の5人でダンジョンに挑んでいる。


「シン!お前の戦輪で血路を開け!マリアはそれをこじ開けろ!そしたら俺と突撃だ!シン!」


「あいよぉ!食らえ!『阿修羅!』」


モンスターの群れの中に幾つもの戦輪が、突っ込んでいく。 

魔法でコントロールされているそれは周りのモンスターを切り刻み、魔物の群れに隙間を作った。 そこに黒いローブの女性魔法士のマリアの眼光が光る。


「よし!空いた!逝くわよぉぉぉ!我に立ちはだかりし敵を討て!『火炎嵐ファイヤーストーム!』男ども!逝きなさい!」


「シン!行くぞ!」


「おう!一番槍は貰うぜ!『乱れ桜』」


「あっ!ずりぃ!待てこら!」


アランに先んじて魔物の群れに飛び込んだ。

アランも俺に続いて飛び込んできた。 女性二人とグラン爺は後ろから支援をしていた。 マリアの魔法とグラン爺の投擲ナイフや煙幕などで。 セラも支援魔法で二人を支援していた。


「いやぁ、今回はヤバかった。 何度か死ぬかと思ったよ。」


「お前なぁ・・・。 お前の戦輪もかなりヤバめだが、お前はもっとだな。」


「どちらにしても助かったんだ。 よかったじゃないか?」


「そういうわけではないわ。 本当にヤバイ状況よ?あの時は。」


「そうですね。 私も危険な事です。」


「まあ、若いというものは危険に飛び込みたくなるものじゃ!仕方あるまいて。」


「グランさん。 そういう事で片づけないで下さい!」


「本当にもう・・・。」


帰ったギルド酒場では、反省会をしていた。

依頼の内容は『ダンジョン内の間引き』。

俺の所属する冒険者パーティー「星雲の絆」は、Bランクパーティーだ。

そのメンバーとして、魔法剣士として活躍していた。 この依頼が終わったら王都に行き、本部ギルドで昇格式に参加するためだ。

王都の道のりは、知り合いの商人であるスミスさんの商隊に護衛として参加しながらいく事になった。

うちらは懐は何気に温かい。 理由は俺が思いついた商品の売り上げの一部が、俺のギルドカードに入るからだ。 

女性陣が使っているシャンプーやリンス、香り付きの石鹸は俺がスミスさんにお願いし、無償で貰っているのだ。 それも好意で。 ありがたい限りだ。


「王都で昇格か・・・。 いよいよAランクか!」


「そうだな。 感慨深いよ。 アラン、お前と組んでいろんな街を行って、皆とここまでこれた。 これからも楽しみだよ。」


「そうだな。 こちらこそだ!」


「そうですね!でもシンの斬り込みは怖いので、あまりしないで下さいね?」


「そうね。 あれはこっちが持たないわ。」


「そうじゃの。 勇敢と蛮勇は違うぞい?」


「・・・。 皆、ひどくね?」


皆が笑う。 この時はスミスさんも。

王都までも道のりは、数回の魔物の襲撃があるのみだった。 それもマリアの魔法とアランの剣で討ち払われた。 そんな道のりを2週間程すると、王都の大門の前に来た。


「この門をくぐって、ギルドに行けば・・・Aランク・・・。」


「そうだな。」


「これで実家に胸を張れるわ・・・。」


「私もです・・・。」


「そういえば、マリアは男爵家の次女だったよな?セラは地方の修道院だっけ?」


「ええ、そうよ。 Aランクになれば、実家でも差別はされないしね。」


「私は処遇改善が出来るようになります。」


「お互い大変だよな・・・。 俺は家族はいないからそれは羨ましいよ・・・。」


「そう暗い話をすんなよ!これから始まるんだよ!」


「ああ。」「「はい」」


この時はこれからもこのメンバーでまた旅が出来ると信じて疑わなかった・・・。 しかし、現実はそこまで良い物ではなく、残酷だった・・・。


ギルドに入ると、受付嬢の指示でギルドマスターの部屋に通される。

しかし、入ると少し違う光景が広がっていた。

ギルマスの部屋には、二人の男女がいた。 男性は白銀の鎧を着た青年と軽装の皮鎧を着た活発そうな女の子が、こちらを見ていた。


「これはどういうことですか?」


「まずは座り給え。 まずはそこからだ。」


アランを含めて座る。 ギルマスを挟んで二人の男女が座って、こちらと向かいある形になった。

互いに座った所でギルマスが話し始めた。


「・・・さて、今回の星雲の絆の昇格についてだが・・・。 この度の昇格は一部制限があり、それをクリアしなければ、受けられなくなった。」


「「「「えっ!?なんで?」」」」


「まずはグランだが、齢を取りすぎている。 長く活動するには無理だ。」


「しかし、齢を取られた方々も活動しておられます!グラン爺も平気なはずです!」


「それは無理だ。 グランもここで脱退を望んでいる・・・。」


「グラン爺!」「「グランさん!」」「爺さん・・・。」


「・・・すまんのう。 ワシもそろそろ休み休みしたいんじゃ・・・。 許してくれ。」


「そういう事だ。 グランの代わりはここにいるルルがする。 年は16歳だが、優秀な偵察員だ。」


「それじゃあ、そこの騎士さんはなんだよ。 お守り役か?」


「それが一番の問題だ。 代わるのは・・・シン、お前だ。」


「はっ?俺?」


ギルマスの言っている事がわからなかった。

俺は年もまだ十代だし、特に制約がないはずだ。 孤児院出身ではあるが。

ギルマスは話を続けた。 今回の昇格に教会と貴族院が待ったをかけた。 

理由は平民出身と孤児が、メンバーにいた事。 Aランクとなれば、貴族や王族に関わる事もある。 その際に平民と孤児では、礼を欠くとクレームが入った。 その打開策がそれぞれが用意した人物と彼らを入れ替える事だった。


「ふざけんな!俺らはここまで頑張ってきたんだ!ここにきて・・・ここに来て、それはないだろう!」


「しかし、それだとお前らは昇格はない。 良いのか?」


「ありえないだろ!なあ?」


俺は振り返るが、アランやマリア、セラは互いに視線を逸らしていた。

その様子に声を掛けた俺に皆はありえない事を言った。


「すまないシン。 甘受してくれ・・・。」


「ごめん、わたし・・・どうしてもこのチャンスを逃せないの・・・。」


「シンさん・・・御免なさい・・・私、この昇格で出る報奨金を持っていかないといけないです・・・。 受け入れてください。 スイマセン・・・。」


「そんな・・・お前ら・・・。」


まさかの仲間の裏切りに心が折れ、床に膝をついた。

俺ら以外は少し笑っていた・・・。 うちらのグループで笑顔なのは、グラン爺くらいだ。


「答えは出たようだな?アランたちは良いんだな?」


「「「お願いします・・・。」」」「お前ら・・・。」


いままで座って黙っていた男女が、シンに近づき、一言言っていく。


「いままでお疲れ様。 君の代わりはこの伯爵家3男である僕が引き継ぐから・・・。」


「いままでお疲れちゃん!おじいちゃんの代わりは任してよ!」


「老いぼれの代わり、任せたぞい!」


「・・・・。」


グラン爺は笑顔で孫に声掛けるように交代要員の少女に声を掛けていた。

シンはあまりにも悔しすぎて何も言えなかった。

ギルマスは、彼らを急かした。 

昇格のお披露目があったからだ。


「お前らは外にあるお立ち台で、昇格の報告をしろ。 新生星雲の絆の誕生をな!」


「「はい!」」


「「「・・・・。」」」


それぞれの思いがあるが、アラン達はシンに最後まで顔を合わさず、退室していく。

シンも顔が上げられなかった。 彼らを恨みそうでいたから。 

まだ顔が上げられないシンにギルマスが声を掛けてきた。


「シン。 お前の実力は確かにある。 だから特別にAランクにしてやる。 その条件は何かはわかるよな?」


「・・・アラン達に近づかない・・・。」


「そういう事だ。 あと、ギルドからお前に報奨金もだす。 出来るだけ近づかない場所に移動してくれよな?近くにいると、揉めるのは困るからな。」


「・・・ああ、分かったよ・・・。 もうここにも来ねえよ・・・。」


「そうしてくれ。 受付で受け取ったら早々に去ってくれ。」


俺は昇格の幸せを噛み締める仲間と互いの気遣っていたはずの信用を砕かれた・・・。

グラン爺だけは、笑顔のままだった。

ギルマスに言われるまま、受付でAランクと書かれたギルドカードを受け取り、金貨が多く入った袋も受け取った。 ギルドの中庭では新生星雲の絆が、皆に愛想を振舞っていた。

シンはその姿を背中に受けながら、ギルドを去った。

スミスさんが用意してくれた宿を引き払う為だ。 しかし、不運は重なる。 宿にスミスさんがいたのだから。 

満面の笑みで褒め称えてくれたスミスさんに事の顛末を話した。

彼も信じられないという顔で見ていた。


「そういう事だから・・・。 俺はもうここを去るよ・・・。」


「何と言いましょうか・・・。 ですが、商売の方はシン様のモノです。 お金は振り込み続けます!」


「・・・。 ありがとう。 それじゃあ・・・。」


「シン様・・・。」


スミスさんは、今後も俺の開発した商品のお金をギルドカードに振り込んでくれると、確約してくれた。

いつでも信用第一で行動するこの人は好きだ。

そんなスミスさんを背中で感じながらシンは王都を去った。


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