まずは現状把握
転生して自分が何者かはわかったものの現状が物語のどのあたりなのかはわからない。こればっかりは聞くしかない、か。見た目から15歳くらいかな、と予測はしているのだけれど。
「アリスお嬢様、もう起きてらっしゃるのですか」
ドレッサーの前で云々唸っていると、メイドらしき人間に声をかけられた。多分おつきのメイドなんだろうけど、今の私には名前がわからない。こういうときって転生した先の人間の記憶を引き継ぐパターンとそうじゃないパターンあるよね。今回は後者なわけだけども。さて、普段の口調も周りの人間の名前もわからない私が取る手段はこれしかないよね、と考えて
「アリス…、私がアリスなの…?」
「お嬢様?どうされましたか?」
そう、こういった時にわかったふりをするほど怖いものはない。そうなると知らなくて当たり前の状況を作り出さなきゃいけない。それがこれ、記憶喪失ってやつね。実際アリスとしての記憶を引き継がない私は記憶喪失みたいなものだから嘘はついてないよね。
「目が覚めたら何もわからなくて」
「お嬢様、それは本当ですか?学園に行きたくないがための仮病ではありませんか?」
「え?どうしてそんなことを疑うの?」
「お嬢様が記憶喪失になられたふりをするのは本日で十回目ですから」
ちょっと待ってよアリスちゃん。こんな可愛い見た目して学園さぼるために記憶喪失のフリとかしてたの?学園めんどくさいのはわかるけど、それはお嬢様としては考えが浅くない?いや、アリスは勉強からっきしっていう設定だったから仕方ないのか。
「お嬢様?」
「それは過去の私が悪いわね。でも本当なの。親身に話しかけてくれる貴女の名前さえわからないのよ」
「お嬢様、やっぱり仮病ですね」
「どうしてなの、どうして信じてくれないの」
「お嬢様はメイドの区別がつかずメイドとしか呼ばないじゃないですか」
ちょっと待ってアリスはどこまでめんどくさがるの、せめてお付きの人の名前くらい覚えててよ。どれだけ脳を使いたくないのよ。謎ばっかり深まるのだけど。
「それも過去の私が悪かったわ。貴女の名前を教えて。そして起こしにきてくれたということは今日は学園なのよね、準備を進めてください」
「今日のお嬢様は今までにない反応ですね。わかりました。私の名前はリリアです。準備を進めます。記憶喪失という前提で学校に向かわれるまでに気になることは私に質問してください」
何とか記憶喪失(仮)くらいまでには認められたみたいね、よかった。リリアの提案にはありがたく頼らせてもらおう。
「私は今何歳?」
「お嬢様は明後日15歳になられます、明後日は学校も休日でお誕生日パーティーの予定になっております」
「学校でのお友達は?」
「学校内でのことはそこまで詳しく存じておりませんが、仮病のお話から察せられるように勉強はお好きではありません。ご学友はある程度いらっしゃいますが、そうですね、あれはご学友というのでしょうか」
「どういう意味?」
「お嬢様はその見目やふわっとした言動から皆様に愛玩される存在のような…いえ、それは失礼ですね、申し訳ありません」
「いえ、教えてくれてありがとう」
愛玩動物、見た目故に愛される、あとは頭脳が足りないから敵にもならない、ってところかな。それならとりあえずはされるがままに様子を伺う、で大丈夫かな?
「お嬢様は別人のようです」
「そうかしら記憶がないから比べようがないわ」
「私は今日のお嬢様に好感が持てます」
「ありがとう、準備はそろそろおしまいかしら」
「そうです、それではお送りいたします」
リリアに案内されるがまま、部屋の外にでて廊下を見て愕然とする。これで伯爵家だもんな、クリスは侯爵令嬢だからもっと大きな家に住んでるのか、と考えながら私は学園に向かった。




