転生?
異世界転生だとか、小説の中に入り込むとか、最近見かけることの多くなったジャンルの小説を私は好んで読んでいた。特に悪役令嬢転生もの。絶望的な状況に放り込まれた彼女たちは、小説の知識で運命を覆していくその行動力に惹かれていた。自分が転生してもまぁ無理だよな、と思いながら、読んでいた。
ある朝、目が覚めて普段うっすい布団を敷いて寝ているはずの自分がやたらとふかふかのベッドにいることにまず違和感を覚え、周りを見回すと明らかに洋風の部屋にいる。あれ、私昨日誰かとホテル行ったけ、と思い返しながら、頭をかいたら、髪が長いことに気付いた。私は手入れもめんどくさいのでショートカットにしていたはずなのに、さらさらで見ると腰まである金髪だった。え、いや、そんなまさかな、と思いながらもドレッサーまでよたよたと歩くと、そこには日に透けてきらきらと光る立派な金髪を持った美少女がいた。これがよくある転生ものなら、自分が知っている小説のキャラクターのはず、と鏡に映る姿と記憶の照らし合わせを始めた。答えはわりとすぐに導くことができた。
「フルフルか」
フルフル、正式名称フルールフルールは最近巷で人気の乙女ゲームだ。私はゲーム自体はプレイしたことはないけれど、ノベライズ本を読んだことがある。
「フルフルなのはいいとしても、よりによって、アリスティア・ルニークかぁ」
この乙女ゲームにはメインヒロインが二人いる。一人は今の私、アリスティア・ルニーク。アリスは伯爵令嬢でとにかく可愛い。というか可愛さしか取り柄がない。勉強や運動はからっきしだめ、空気も読めないどじっ子で、本当に見た目の愛らしさ故に愛されるキャラだ。もう一人のヒロインは、クリスティナ・イヴォーク。クリスは侯爵令嬢で、見た目こそアリスには劣るが、勉強ができ、周りへの気遣いが令嬢たちの中でもずば抜けていて、その思慮深さに男性たちは心惹かれるのである。個人的にクリスが好きでノベライズもクリスが主人公のものしか読んでいない。アリスは正直苦手なタイプだったから。だからアリスルートがよくわからない。でもよくある転生もののように運命をひっくり返さなくても普通に過ごせば幸せになれるならいいか、と開き直って自分がアリスであることを受け入れることにした。だが、転生しようがゲームの中の世界であろうが、人生は人生、そんなにうまくいくはずがない、ということをこのときの私はまだ知らない。




